大阪社保協通信

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1301号 2024.12.24

 

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大阪社会保障推進協議会

 

国保の空洞化が深刻〜吹田市の国民健康保険の実態からみる

先日、「第42回吹田まちづくり・くらし・市政を考える研究集会・第14分科会社会保障としての国民健康保険」の講師を務めたのですが、当日の資料集に非常に重要な資料が添付されていました。寺内がエクセルに作り替え、計算式を入れたものが以下です。

【吹田市国保の現状@所得階層別】

 

まず、世帯人員の構成で見ると単身世帯が約7割を占め、2人世帯が2割、両方で9割を超えます。つまり、大阪社保協がよくモデルケースとして試算している現役4人世帯やシングルマザー3人世帯はごくごく少数であることがわかります。今後は1人世帯の国保料試算が必要です。

さらに、吹田市は大阪府内でも住民の平均所得が高い自治体ですが、国保の所得階層別の分布は驚くべき状況です。

所得割算定基礎額が43万円以下というのは7割軽減対象世帯であり、所得割が0円で均等割・平等割が7割軽減されて最も低い保険料が付加される世帯ですが、その構成割合が約6割もあります。さらにいかに国保加入世帯の所得が低いかがよくわかりますが、吹田市でこの状況であれば、他の自治体はもっと厳しいということが容易に想像できます。

さらに、これだけ加入世帯の所得が低ければ、保険料もそれほど高額でない世帯も多いのではないかと容易に想像ができますが、果たして実態は次のAは保険料階層一覧明らかです。

 

【吹田市国保の現状A保険料階層別】

この一覧表をみると、保険料4万円以下が一番多く全体の38%、6万円以下が全体の46.1%です。

国保の被保険者が著しく減少していることは自治体キャラバンでも多くの市町村担当者が常に語っていますが、これは202210月からは従業員101人〜500人の企業で働くパート・アルバイトの方が社会保険加入が義務化されたことによると考えられます。さらに202410月からは51人以上の企業で働く人の社会保険加入も義務化されました。

この2つの表から見えてくることは、国の小規模事業所従業員の社会保険加入義務化という政策により国保がこれまで以上に被保険者が低所得化しているということと、それにともない保険料を払える人がほとんどいない、つまり空洞化してしまっているということです。

★吹田市では滞納処分が激化

一方、吹田市で滞納処分が激化しているとの吹田民商の方からの発言がありました。以下は当日資料から転載。

 

●相談事例@

建設業50歳代会員。昨年に受けた税務調査による修正申告で以前から保険料の滞納はあったが滞納金額は250万円に。税・住民税・事業税などの分納もあり、国保料は毎月窓口で支払える金額を相談して納付を続けてきた。しかし、今年の9月末に入金された売掛金(預金)がさし押さえられて換価。仕入れ先への支払いは終わっていたが職人などの外注費の支払いがまだだったため変換を求め国保課窓口へ。1年分の完納が条件とされ毎月17万円の分納誓約をせざるを得なかった。

 

●相談事例A

平成23年からの滞納金200万円、これまで分納を続けて現年分の保険料に滞納分を加算して納付を続けてきたが、今年になってから年内完納を求められるようになった。3か月に一回納付相談に行くが差し押さえをちらつかせる。50万円ずつ納付していて次は難しい。

 

●相談事例B

70歳以上の建設業の会員。夫婦2人と子(精神疾患で就労困難)3人家族。生命保険の満期返戻金の差押さえをうける。

 

●相談事例C

 66歳の喫茶店経営者の元会員。滞納金額は200万円。廃業後は飲食店に勤務。生活が苦しく毎月15千円ずつ分納していた。ところが勤務先の廃業で失業し分納金額を5千円に変更して支払いを続けていたが、支給された雇用保険の高年齢求職者給付金の28万円を振り込まれてから数日後に差し押さえられ18万円が換価。課の窓口に行ったが変換されず、差押えを受けないようにするため必要な月々の分納金額を相談すると滞納保険料全額の支払いが必要と提示される。

 

大阪社保協自治体キャラバン資料集によると吹田市の差押え件数は2018年度51件⇒2019年度88件⇒2020年度114件⇒2021年度201件⇒2022年度205件⇒2023年度537件と激増しています。

滞納金額が非常に大きいのは、数年かけて分納することで時効が更新され、数年間分の滞納保険料であると考えられます。しかしも事例にもある通り、滞納金額の一括完納や多額すぎる分納などいのちと生活を脅かす滞納処分ではなく、滞納処分の停止を積極的にかけさせていく取り組みが必要です。 

今年度の吹田市国保料は統一されたことで大きく値上がったうえに低所得者減免なども廃止となり、保険料を払いきれない人がさらに増えると考えられます。

★国保を空洞化しているのは国の責任

国の政策で「一定所得がある被保険者」が国保からいなくなり国保が空洞化しています。国庫負担を大幅に増やす以外に「社会保障としての国保」はあり得ません。

大阪社保協では、20251月の2025年度大阪府統一保険料本算定決定後(昨年は19)に「大阪統一国保を廃止させるための集会(仮称)」を開催予定です。ご一緒に考えましょう。