大阪社保協通信 第1238 2020.10.2
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介護と市民の老後を投げ出す大阪市廃止・分割に反対しましょう
大阪市を廃止・分割するための「住民投票」の11月実施が予定されています。もし「賛成」が多ければ5年後に大阪市は消滅します。大阪市がなくなれば介護保険と市民の老後はどうなるでしょうか。
★財源と権限を失った「特別区」は火の車
人口270万人・日本第2の政令指定都市である大阪市を廃止し、人口60万人〜75万人の「特別区」(淀川区、北区、中央区、天王寺区の4つ)に分割するのが特別区構想です。これによって、それまでの大阪市税の7割近くは大阪府税となり、政令指定都市の権限や都市計画や水道、消防などの仕事も大阪府に取り上げられます。また、2万5千人の大阪市職員のうち9千人は大阪府へ行ってしまいます。新しくできる4つの「特別区」は財源も人材も権限も足りない「半人前」の自治体です。
★介護保険はどこも責任もたない「一部事務組合」へ投げ出す
現在、大阪市の介護保険料は、全国の市の中で最も高い額(基準額年95,124円)となっています。一人暮らしで低所得の人が多くホームヘルパーの利用が全国平均の3倍近いことなどが原因です。今後高齢者が増えればますます介護サービス利用は増えますが、大阪市の介護保険は保険料が「限界」に来ています。大阪市廃止後は、本来は4つの「特別区」が介護保険を運営するべきですが、それを放棄し「一部事務組合」で運営するとしています。
★大阪市民の「老後」はお先真っ暗 大きく後退する介護保険
仮に「大阪市廃止・特別区設置・一部事務組合運営」が強行されると大阪市民の老後と介護保険はどうなるのでしょうか。
第1に、今でも全国の市で最高額の介護保険料は今後上がり放題になります。一部事務組合は「議会」はありますが、各特別区の議会議員から若干名ずつ選ばれた議員が年に2回、数時間程度の「議会」(予算議会・決算議会)を形式的に行うだけで、特別区民の声はまったく届きません。住民の反発を気にせず保険料の引き上げが行われることになります。さらに、大阪市が行っている独自減免制度は、廃止される可能性があります。
第2に、要介護認定などの遅れと混乱です。現在の大阪市は要介護認定事務を民間委託し「認定事務センター」で集中管理しています。介護保険法では「申請から30日以内」と決められている要介護認定が遅れ、「3か月以上経っても認定結果が出ない」という異常事態になりました。無責任で体制不備な一部事務組合運営となれば、さらに混乱をすることが予測されます。
第3に、特別区の事務とされている介護保険以外の高齢者施策との一体的運営が失われ、連携を欠いたちぐはぐな運営は多くの高齢者を混乱させるとともに、財源・人員がひっ迫する特別区は、敬老パスをはじめとする独自施策を縮小・廃止されます。
★大阪市民の「老後」をまったく顧みない大阪市解体・特別区設置に対して、きっぱりNO!を突き付けましょう。
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【参考】 大阪市廃止後につくられる4つの「特別区」とは
(1)問題点
@人口は60〜75万人の自治体。決して住民から「身近」ではない。
A「特別区」へ移行するには、莫大な税金を投入する必要がある。
B大阪市廃止後、大阪市の財源の3分の2は大阪府に移行。「特別区」大阪府から配分を受ける立場に転落する。
➃「特別区」は発足当初から苦しい財政運営を強いられる。
(2)4つの「特別区」の人口と現在の行政区
「特別区」名・人口 |
現在の行政区 |
淀川区(59.6万人) |
港区、此花区、西淀川区、淀川区、東淀川区 |
北 区(74.9万人) |
福島区、北区、都島区、旭区、城東区、鶴見区、東成区 |
中央区(71万人) |
住之江区、住吉区、大正区、浪速区、西区、中央区、西成区 |
天王寺区(63.6万) |
天王寺区、阿倍野区、東住吉区、平野区、生野区 |
(「大阪市制度(特別区設置)協議会」(以下・「法定協」)資料より作成)
★「一部事務組合」とは
(1)「一部事務組合」とは、その問題点
@4つの「特別区」が財政を出しあって、事務の一部を共同処理するための組合。
A財政規模は2500億円、300人の職員が150以上の事務をおこなう。
B事務は介護保険・情報管理システム・土地の管理・処分など相互に関連のない事務。
「一部事務組合」がおこなう事業(抜粋)
事業実施 |
介護保険、児童養護施設、生活保護施設所管事務等の設置認可および、指導・助成など |
情報管理システム |
住民基本台帳・税務・国保・介護保険・総合福祉システム、情報管理など |
施設の管理等 |
【福祉施設】自立支援施設、児童養護施設、生活保護施設、特別養護老人ホームなど 【市民利用施設】青少年センター、こども文化センター、大阪プール、中央体育館など 【その他】動物管理センター、斎場、霊園、処分検討地等にかかる管理・処分など |
(「法定協」資料より作成)
(2)住民の声が届かない「自治体」
「一部事務組合」には議会が置かれますが、住民が直接選べません。組合長は4つの「特別区」の区長から互選され、議員は「特別区」の議員から選出されます。「一部事務組合」の業務はひとつの「特別区」の住民の声だけでは決められません。そうなると住民の声が届かなくなります。
★「一部事務組合」が行う介護保険はどうなるか
(1)問題点
@保険料が大幅値上げになる。
A大阪市独自の保険料の減免がなくなる可能性もある。
(2)さらなる保険料の値上げの可能性が
大阪市の介護保険料は政令市でいちばん高い額です。介護保険料は3年ごとの見直しがあります。大阪市は2025年度には月額1万200円程度と推計しています
第7期(2018〜2020年)の介護保険料(月額)
大阪市 |
札幌市 |
横浜市 |
名古屋市 |
京都市 |
堺 市 |
神戸市 |
7927円 |
5773円 |
6200円 |
6391円 |
6600円 |
6623円 |
6260円 |
(大阪市資料より作成)
(3)保険料の減免制度がなくなる?
守口市・門真市・四条畷市の3市は、財政を出し合って介護保険の「くすのき広域連合」をつくっています。ここには保険料の低所得者減免制度がありません。大阪市は保険料の減免制度あり、多くの人が助かっています。しかし「一部事務組合」は「くすのき連合」と同じような住民の声が届きにくい運営であり、介護保険料の減免制度がなくなる可能性があります。
(大阪社保協介護保険対策委員長 日下部雅喜)
9月25日、介護保険料に怒る一揆の会 新型コロナ・大阪市廃止問題で大阪市と交渉〜まともに実態把握せず無為無策-新型コロナ介護保険の無責任運営の危険性浮き彫り
★5か月後にやっと交渉
介護保険料に怒る一揆の会は、9月25日に大阪市と交渉を行いました。新型コロナ問題で4月22日に緊急要求として出したにも関わらず、文書回答が3か月後の7月21日、交渉は5か月後で、6項目の緊急要求のうち4項目は「時期遅れ」となりました。
★高齢者の実態ほとんど把握せず
一揆の会は、新型コロナによる高齢者の「閉じこもり」「孤立化」を防止するための支援策を求めていました。大阪市地域福祉課は、重度介護者の「見守りネットワーク事業」の説明をするだけで、今回の新型コロナによる孤立化に対してどのような活動をしたのかの「実績」についてはほとんど答えられませんでした。また、大阪府の交付金を受けて各区社会福祉協議会が実施している「外出自粛高齢者・障がい者見守り支援事業」についても、大阪市地域福祉課は「よく把握していない」という無責任な返答でした。大阪市が推奨している「いきいき百歳体操」(2019年度708カ所)が、「自粛」後はどのくらい開催できているかについても何の数字も示せず、あてずっぽうに「6〜7割くらいは再開できているのではないか。「開催数は年間で集計しているので年度末にならないと分からない」とお粗末な対応でした。体操休止中にはケーブルテレビ放送やインターネット発信など以外はほとんど対策も取らなかったことになります。
★介護サービスへの影響も把握せず
介護サービスが利用自粛や事業所の休業等で利用できなくなったことについても「実情把握」「万全の対策」と大阪市に求めていましたが、これも「4月〜5月は30カ所ほどの休業があった」と答えるだけで、デイサービス等の利用者数が減少しているかどうかについても「4月は伸び率が低かったようだ」と返答するだけで具体的な数は「まだ掴んでいない」と返答しました。
★事業所への独自補助は拒否
利用者減と感染対策による経費などで経営が苦しくなっているデイサービス事業所に対し、国が「時間水増し請求」を認める通知を出して、利用者の負担が増えるなどの問題点があることについて見解を聞くと「問題があると思っています」と答えながら、他自治体(長野県飯田市)でやっているような独自の補助を検討するように求めると「事業所数が多いし、デイサービスがバタバタ倒産しているような状況でもないので優遇策はとれない」(大阪市介護保険課)と拒否する答弁を行いました。
★新型コロナ感染対策は府任せ
検査体制強化など新型コロナ対策の抜本的強化の要求に対しては、「府の対策本部に参画して進めている」とながら、「大阪市の対策本部は6月以降開いていない」と答え府任せの姿勢が浮き彫りになりました。
また、介護従事者や保育所職員などに対する「社会的検査」の実施については、「国から通知がでているが検討中で10月中には決めたい」とのんびりした姿勢でした。
★「大阪市廃止・特別区設置」 デタラメさ浮き彫りに
11月1日住民投票が決まった「大阪市廃止・特別区設置」問題については、事前に詳細な質問とデータ提示を求めていましたが、当日には提示はありませんでした。交渉を通じて改めて大阪市廃止の問題点が介護保険の面からも明らかになりました。
★現24区役所は維持される保証なし
現在の区役所(行政区)と大阪市廃止後の「区役所」(地域自治区)の法的な違いについて質問すると、副首都推進局制度企画担当は「行政区は無くすことはできないが、地域自治区は無くすことができる」と答え、将来的に24区役所が維持される保証が法的にもないことを認めました。
★介護保険事業は一部事務組合、介護事業者指定は特別区
大阪市廃止後は、介護保険事務は4つの特別区では実施せず、一部事務組合で行うことにしていますが、「介護事業所の指定や指導監督は特別区になります」と回答しました。また、他自治体の住民が利用できない「地域密着型サービス」(小規模デイサービスやグループホームなど)については、「大阪市廃止後の新規利用は、他の特別区の区民は利用できません」(大阪市介護保険課)と明言しました。
介護保険運営全体は、一部事務組合に投げ出し、住民の声の届かないところで勝手に保険料などを決めながら、介護サービスの指定や指導は各特別区でバラバラになり、一部のサービスは他の特別区民は利用できなくなるという問題が明らかになりました。このことについて「市民に説明しているか」と問うと「説明していません」と返答。一部事務組合の介護保険事業と特別区の高齢者福祉施策を「どう連携するのか」と聞くと、「これから5年で考えます」という無責任な回答に終始しました。
(介護保険料に怒る一揆の会事務局長 日下部雅喜)
大阪の国保問題Zoom学習会のご案内 8月27日の第22回大阪府・市町村国保広域化調整会議において「大阪府国保運営方針改正案」の報告がされています(後日大阪社保協ホームページ「国保都道府県単位化問題」ページにアップ済)。また、現在府内43市町村に対して添付のコロナ対応での傷病手当と保険料減免の実態調査も行っています。こうした内容について10月9日(金)14時からZOOM学習会として開催しますのでご案内します。 参加される方は当日以下のURLをクリックして参加してください。また、当日までに添付資料をダウンロードし目を通しておいてください。 https://zoom.us/j/96308534953?pwd=TEhGZU9DUUgxanZ6RmRhR0RkN1drQT09 ミーティングID:
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