大阪社保協通信  1231号 2020.2.25

 

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222日「大東市介護保険困りごと聞き取り調査報告集会」開催。介護保険が使えず困っている市民のリアルな状況が報告される。

222日、大東市役所において、大東社保協主催「大東市介護保険困りごと聞き取り調査報告集会」が開催されました。

★財務省が推奨する大東市介護保険!?

大東市介護保険では、要支援者の市民が介護保険サービスを全く使えない状況がありますが、大東市はもとより、財務省も注目し推奨しています。

 

20191125日 財政制度等審議会「令和2年度予算編成の編成等に関する建議 参考資料」】

財務省資料では、要支援1と2のデイサービス利用者が20163月には522人いたのが、20193月には30人まで減少し、緩和型を含めても149人と、以前の3分の1以下に激減。その要因が「自立と大東元気でまっせ体操」に移行したからだとし、「多くの高齢者が元気になり介護人材不足が解消!」としています。財務省は「住民主体による支援など、従来より効果的・効率的なサービスを提供している自治体の例を横展開していく必要」と、大東市の取組を全国に広げようとしています

★大東社保協が「困りごと聞き取り調査」を昨秋実施、75件集約

大阪社保協・大東社保協は、2019922日調査活動スタート集会で、今、市民による介護保険「困っていること」調査の意義と目的を以下のように意思統一ました。

 @市民の目線、感覚で介護保険の「困りごと」を明らかにする

 A関係団体と「つながり」「知り合い」「身内」へと口コミ、で広げる

 B大東市当局の机上の空論を市民の「実態」と「生の声」で打ち破っていく材料

大東社保協の構成員がつながりを使って、2019年9月29日〜11月31日まで75件の聞き取り調査を行いました。

★困っている事例から見えたもの

@要支援と認定されてもサービスが使えない

Aサービスの打ち切り

B認知症などでも必要な支援が受けられない

C自費でサービス利用

D要介護・要支援の認定が引き下げられる

E区分変更、再申請で元に戻った

F「非該当」になり支援が途切れている

Gハードルの高さ、サービスまでの時間がかかりすぎる

H「狭き門」はアキラメを生み出す

Iサービスが利用できず重度化した

であり、「元気でまっせ体操」だけでは困りごとは解決しないことがはっきりとこの調査から見えてました。以下、その調査報告書の一部を掲載します。

★大東市介護保険「困りごと」聞き取り調査報告書

1 要支援認定を受けてもサービスが使えない

 

事例1  デイサービスに行きたいのに行けない(聞き取り調査番号@)

@82歳  A女性 B一人暮らし C要支援1

【困りごと】

介護保険は福祉用具のみ利用。デイサービスに行きたいが行けないのが不満。これからもっと動きが悪くなるのが不安です。

【元気でまっせ体操】 月2回参加

【聞き取った人のコメント】

 腰が痛い、足が痛い、物忘れがひどい。単身で外に出ておしゃべりをしてストレスを解消できているが、土日は行くことろがなくしんどいようです。出かけるところがあればいいのですが。動けなくなることへの不安が大きい。

 要支援1の認定を受けている一人暮らしの女性ですが、行きたいデイサービスにはいけず不満を訴えています。物忘れと腰・足の痛みをかかえ、物忘れもあります。福祉用具のみの利用で不安を訴えています。元気でまっせ体操には参加されていますが、ニーズは解決していません。

 

事例2 サービス利用したいが要支援で出来ない(聞き取り番号㉓)

@86歳  A女性 B高齢者夫婦世帯 C要支援1

【困りごと】

現在はサービスを利用していない。利用したいができない。今は夫が家のことをしてくれているが、介護度はもっと上にしてほしい。外出時、押し車を利用しているがめまいをする。

【元気でまっせ体操】 不参加 理由:外出が困難

【聞き取った人のコメント】

家で躓きやすい(バリアフリーではないので)

 高齢夫婦で要支援1の女性です。めまい等で外出困難で、元気でまっせ体操には参加できていません。サービスが全く利用できないので、要支援1より要介護度を上げてくれるよう望まれています。

 

2 地域包括支援センターによるデイサービス打ち切り

 

事例5 「デイサービスの打ち切りを提案され、居場所がなくなる!」(聞き取り番号㊼)

@78歳 A女性 B独居 C要支援1

【困りごと】

 3ヵ月おきぐらいに元気でまっせ体操への切り替え(デイサービス中止)をケアマネから提案されるが、今はデイサービスを続けたいので必死で踏ん張っている。いつ中止へと押し切られるか不安。同じデイサービス仲間と続けられる様に頑張りたい。

デイサービスをやめたら友達にも会えなくなるし居場所がなくなる。

【元気でまっせ体操】デイサービスに通っているためには行っていない。

 デイサービス(従来型通所型サービス)の利用者はには、ケアマネジャー(地域包括支援センター)がデイサービスをやめて元気でまっせ体操に切り替えるようにしつこく働きかけています。この事例では、「必死で踏ん張っている」と言われていますが、こうした働きかけにより多くの利用者がデイサービスを追われていったことがうかがえます。

 

 

3 認知症などで生活支援が必要なのにヘルパーが利用できない

 

事例6「訪問看護のみの利用で、自己管理できず限界」(聞き取り番号62

@80代 A男性 B単身 C要支援1

【困りごと】

もともとアルコール依存床あり。受診時から徐々に認知機能の低下がみられる。体重減少も進んでおり生活状況の把握、栄養管理が必要である。金銭管理も難しくお金も趣味に使ってしまうため食費が残らない。訪問看護のみの利用で限界あり。

 一人暮らし男性で、アルコール依存症で、認知機能が低下してきていますが、基線管理ができず、食費が残らず栄養不足です。要支援1のため、ヘルパーが利用できず、訪問看護が入っていますが、限界があるという事例です。

 

4 介護保険や総合事業サービスが利用できず自費で利用

 

事例9 要支援でヘルパーもデイサービスも実費利用 月3万円(聞き取り番号74

@70代 A男性  B高齢者夫婦のみ C要支援2  

【困りごと】

9月に脳梗塞を起こし、立ち上がり、歩行困難あり。手すりを使って移動。部屋の中はいざりで動くこともある状態だったが入院中の判定は要支援2

妻は右半身破損症、脊柱管骨折あり、要介護1。現在トイレで動けなくなり入院中

脳梗塞を起こすまでは本人が買い物など奥さんの生活を支えていたが、車の運転もできなくなり、妻のヘルパーに生活を支えてもらっていた。現在 妻入院中のため実費でヘルパーを利用して何とか生活している。医師から運動を進められているが使えるサービスがないため(マシーンやマッサージをうけたい)実費でデイサービスに通っている(月3万)。これからに不安あり

 要介護1の妻と二人暮らしの男性ですが、脳梗塞を発症し要支援2の認定を受けましたが、サービスは利用できずに妻のヘルパーに生活の支援を受けていました。ところが妻が入院されたため、そのヘルパーも利用できなくなり、実費でヘルパー利用。さらにデイサービスも実費利用で、これらの費用に月3万円もかかるという事例です。

 

5 要介護・要支援認定が引き下げられる

 

事例11 介護認定が下がり、どこにも行っていない(聞き取り番号B)

@年齢未記入  A男性 B子と同居 C要支援1

【困りごと】

 背骨の圧迫骨折を二度やり、要介護1→支援2→現在支援1。状態がそんなに良くなっていないのにどうしてでしょうか?

 デイサービスに週一回行っていたが、現在はどこにも行っていない。片足が壊死しているので痛くて杖が頼りです

【元気でまっせ体操】 不参加 足が悪いので体操についていけない

【聞き取った人のコメント】

国民年金なので年金が少なく夫婦合算しても暮らしが大変。長男と同居なので経済的には援助してもらっている。

 要介護1の認定を受けてデイサービスを利用していたが、要支援2さらに要支援1に下がり、デイサービスが利用できなくなり、元気でまっせ体操にも参加していない事例です。

 

6 認定引き下げに家族や本人が異議申し立て、元にもどした事例

 

事例14「要介護から要支援になるが、娘さんが見直しをお願いして要介護になる」(聞き取り番号55

@80代 A女性 B子と同居 C要介護2

【困りごと】

2017年の介護認定のとき、歩行器を使って何とか歩ける状態で、状態変化はなかったが、要介護から要支援になる。娘さんが見直しをお願いして要介護になった。娘さんが見直しを求めなかったら要支援のままで必要なサービスを受けることができなかった。一つの症状が気になると眠れなくなったり、トイレに」頻回に通うなど娘さんは疲れ気味。

【聞き取り者のコメント】

高齢の両親を娘さん一人で看ている。夫は在宅酸素で肺炎を繰り返しているため急に受診が必要な時があるが一人にできない。介護タクシーの利用がしにくく、大東市は市外の利用できないため困っている

 状態が変わっていないのに、要介護から要支援に認定が下げられ、同居家族(娘さん)が疑問に感じ、役所に見直しを申入れ、区分変更認定の結果、要介護に戻ったという事例です。家族がこうした行動ができなかったり、一人暮らしなどの場合は、認定が下がったままになることが多い現状です。

 

7 「自立」(非該当)になり支援が途切れている

 

事例16 認定取り消されヘルパーの調理支援なくなる。よく転倒している(聞き取り番号㊱)

@83歳 A男性 B独居 C自立  

【困りごと】

以前より左手が機械に挟まれ不自由な状況に。生活動作では、タオル絞りや掃除、調理が不自由と感じる。以前は週1回ヘルパーに調理支援をしてもらっていたが、認定が取り消され不便と感じる。最近はよく転倒し通院する機会が増えた。困りごとをどこに相談して良いかわからないと不安を感じている。

【元気でまっせ体操】週一回の参加。感想は特になし。

 

事例17 股関節手術後、認定更新できず(聞き取り番号㊲)

@81歳 A女性 B子供と同居 C自立 

【困りごと】股関節、狭心症の症状がある。股関節手術後介護認定なしに。再認定にも応じてくれなかった経過が在る。手術後も健常時同様に歩けずに、リハビリ等介護制度が必要に感じている。また狭心症が心配で、一人での外出に不安を感じ困っている。発作も心配。社会とのつながりが徐々になくなり相談先にも困る。

【元気でまっせ体操】2回参加。感想は特にない。

 この二つの事例は、更新認定で「自立」(非該当)になり、サービスが使えなくなっただけでなく、「どこに相談して良いかわからない、不安」、「社会とのつながりが徐々になくなり相談先にも困る」など、必要な支援が途切れてしまっていることを示す事例です、二人とも元気でまっせ体操には参加されていますが、それだけでは、専門的な支援に換わることはできません。

 

8 要介護認定申請のハードルの高さ−認定受付窓口マニュアルの問題

 

事例 認定に何度も役所に足を運んで困った(聞き取り番号66

@80代 A男性 B高齢者夫婦のみ C要支援2

【困りごと】

天気によってしびれが強くなり、日常生活に影響する。歩くスピードが遅いが、認定をうけるため、何度も市役所に足を運び困った。

 認定申請をできるだけさせない窓口マニュアルのため、役所に行っても申請させてもらえず、何度も行ってようやく認定できたという事例です。

 

9 要介護認定申請の「狭き門」は諦めを生み出す

 

事例20「申請に行けない、行っても認定されない、あきらめ」(聞き取り番号㊽)

@80歳代 A男性 B独身 C自立

【困りごと】

以前は要介護認定を受けており、ヘルパーさんが週に1回来て家の掃除などをしてくれていたが今はない。右手の親指を切断しているため、物を持ったりするのが大変なので誰かに手伝ってもらいたいと思っている。介護認定を受けているときはケアマネが申請に来てくれていたが介護を外されてからは一度も来てくれない。今は、ふらつきなどがあるため、外出が大変になってきている。自分で申請に行かなければならないが、どうせ認定されないから行っていない。

【元気でまっせ体操】週2回通っている。

 以前に要介護認定を受けてヘルパー利用されていた一人暮らし男性ですが、「自立」となり、ケアマネジャーとも切れたため、状態が悪化しているが、申請そのものを諦めてしまっている事例です。大東市の窓口で行われていた、申請受付マニュアルに基づく、「水際作戦」が市民の間に「どうせ認定されない」という諦め感を生み出しています。

 

10 要支援でヘルパーサービスが利用できず重度化した事例

 

事例25「脱水で要支援から要介護に」(聞き取り番号57

@  80代 A女性 B老夫婦二人暮らし(夫は高度の認知症) C要介護1

【困りごと】

夏まで要支援だったが、夏に脱水症になり身体の動きが悪くなり認知症も進んで要介護1になった。認知症の夫と二人暮らし。治療により認知症は改善されたが身体の動きが悪くなり、家事が困難になっている。しかしお金がないので最小限のサービスしか利用できず、娘さんが毎日訪問。認知症の夫の介護が負担でストレスが増えており気持ちの落ち込みも見られている。大病院の受診も必要であり、娘さんの負担も増えている

【聞き取り者のコメント】

脱水になりかけた時点でヘルパーなどの定期訪問で早めに異常に気が付き、対処できていれば、病状の悪化は防げたかもしれない。年金も少ないため働きながら別居の両親を支える娘さんの負担が重くなってきている。

 認知症の夫と二人暮らしの80代女性です。要支援1の認定を受けていましたが、ヘルパーは利用できず、夏に脱水症になったが、異常に誰も気づかず病状悪化し、要介護1に悪化し、通院など別居の娘さんの負担がましています。こうしたヘルパー未利用のために状態把握が遅れ、悪化する事例は多いと考えられます。

 

★今後、リアルな市民の「困りごと事例」を盛り込んだ要望書を市に提出。市民向け、事業所むけの働きかけもさらに広げようと意思統一。

集会ではさらに困っている人の事例、事業所からは地域包括からの締め付けの実態、1地域包括とブランチになったことによる弊害(ブランチにはなんの権限もなくすべて地域包括の決定を待たないといけないことや3職種もいないこと等)などが出されました。

大阪社保協・大東社保協では、調査での市民の困りごとやこうした意見を反映した「要望書」を市に提出し、交渉をする予定です。

 

「大東市介護保険困りごと聞き取り調査報告書」全文は、大阪社保協ホームページトップ「大東市介護保険問題」にアップされる予定ですのでそちらをご覧ください。