大阪社保協通信  1229号 2020.2.14

 

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27日「大阪府統一国保問題学習討論会」開催。

2月7日、大阪社保協主催「大阪府統一国保問題学習討論会」が緊急に開催され、40人が参加しました。以下は、寺内事務局長の「基調講演・問題提起」です。

 

基調報告・問題提起

1.  大阪府統一国保でいま何がおきているのか

(1)3年間で保険料の大幅な値上げが起きている

【令和2(2020)1月本算定 大阪府統一保険料率】

 

所得割

均等割

平等割

賦課限度額

医療分

9.05%

32,015

33,785

61万円

後期分

2.69%

9,358

9,875

19万円

介護分

2.66%

19,729

0

16万円

【平成31(2019)1月本算定】

 

所得割

均等割

平等割

賦課限度額

医療分

8.57%

29,713

31,799

58万円

後期分

2.69%

9,249

9,898

19万円

介護分

2.58%

19,134

0

16万円

【平成30年度(2018年度)

 

所得割

均等割

平等割

賦課限度額

医療分

7.98%

27,311

29,668

54万円

後期分

2.69%

9,178

9,970

19万円

介護分

2.32%

17,062

16万円

 

【参考 令和2年度(2020年度)都道府県標準保険料率】

 

所得割

均等割

賦課限度額

医療分

8.62%

50,385

61万円

後期分

2.71%

15,574

19万円

介護分

2.65%

19,508

16万円

 ※これはオールジャパンで事業費納付金を算出し、所得割と均等割で算出した標準保険料率。大阪府標準保険料率はこれに比べ料率・金額とも非常に高いものであることがわかる。

(2)具体的に2020統一保険料はどんな金額になるのか

 

□大阪社保協モデル世帯所得で統一保険料を計算してみると・・・2020年度統一保険料は2019年度に比べすべてのモデル世帯で4.5%5.5%の値上げに

  

@   40歳代夫婦+未成年のこども2人の4人家族

A   65-74歳の年金生活夫婦

B   40歳母と未成年の子ども2人のシンママ3人家族

 

2020年度

所得0

所得50万円

所得100万円

@

A

B

@

A

B

@

A

B

74,583

37,922

56,252

148,785

83,161

118,234

220,785

179,783

190,234

2019年度

所得0

所得50万円

所得100万円

@

A

B

@

A

B

@

A

B

70,744

35,886

53,315

141,435

78,953

112,387

210,635

171,139

181,587

2020-2019

3,839

2,036

2,937

7,351

4,209

5,848

10,151

8,644

8,648

値上げ率

5.4%

5.7%

5.5%

5.2%

5.3%

5.2%

4.8%

5.1%

4.8%

      

所得150万円

所得200万円

所得300万円

A

B

@

A

B

@

367,368

263,764

318,486

439,368

322,464

427,988

633,090

439,864

571,988

所得150万円

所得200万円

所得300万円

A

B

@

A

B

@

350,578

251,363

304,102

419,778

307,663

408,845

605,341

420,263

547,245

16,790

12,401

14,385

19,590

14,801

19,143

27,749

19,601

24,743

4.8%

4.9%

4.7%

4.7%

4.8%

4.7%

4.6%

4.7%

4.5%

 

 □2019年度の実際の市町村国保料〜大阪社保協キャラバン資料37-38頁と比較してみるとすべての保険料より高いことがわかる。

 

2019年度統一保険料率を採用している自治体

・島本町、守口市、松原市、藤井寺市、柏原市、高石市、岸和田市、貝塚市、泉佐野市、阪南市の10自治体

・大阪の中でもこの料率を採用している自治体が最高額保険(=全国トップクラス)

・それ以外の33自治体は独自に統一保険料率よりも低い料率で保険料を賦課

 

 

 

□激変緩和がなければ保険料はどうなっているのか

 

2018-2020激変緩和前必要保険料比較

大阪社保協作成

市町村名

2018年度保険料収納必要額@

2019年度保険料収納必要額A  【本算定激変緩和前】

2020年度保険料収納必要額B  【本算定激変緩和前】

2018年@→2019年A値上率

2018年@→2020年A値上率

府全体平均

127,894

139,669

148,247

9%

16%

1

大阪市

123,968

135,118

143,745

9%

16%

2

堺市

120,736

133,668

145,933

11%

21%

3

岸和田市

126,406

137,164

145,751

9%

15%

4

豊中市

139,948

152,770

160,261

9%

15%

5

池田市

134,835

146,956

160,282

9%

19%

6

吹田市

137,003

151,643

161,272

11%

18%

7

泉大津市

124,670

136,424

144,558

9%

16%

8

高槻市

136,754

149,732

156,480

9%

14%

9

貝塚市

125,821

137,778

144,780

10%

15%

10

守口市

124,592

136,417

144,787

9%

16%

11

枚方市

131,003

142,494

150,215

9%

15%

12

茨木市

140,091

153,363

160,938

9%

15%

13

八尾市

132,906

143,373

150,621

8%

13%

14

泉佐野市

125,932

138,052

146,403

10%

16%

15

富田林市

129,001

140,666

149,216

9%

16%

16

寝屋川市

120,319

131,588

141,052

9%

17%

17

河内長野市

133,509

146,676

152,711

10%

14%

18

松原市

123,540

133,911

141,701

8%

15%

19

大東市

120,848

132,642

141,039

10%

17%

20

和泉市

131,318

143,373

151,306

9%

15%

21

箕面市

146,556

159,409

166,967

9%

14%

22

柏原市

129,522

140,795

149,390

9%

15%

23

羽曳野市

127,871

138,864

146,838

9%

15%

24

門真市

125,597

136,721

144,875

9%

15%

25

摂津市

136,741

149,143

156,444

9%

14%

26

高石市

124,536

136,972

147,952

10%

19%

27

藤井寺市

124,257

133,563

143,095

7%

15%

28

東大阪市

127,451

139,690

146,957

10%

15%

29

泉南市

112,417

120,750

126,582

7%

13%

30

四條畷市

128,693

140,153

148,828

9%

16%

31

交野市

138,502

151,865

160,322

10%

16%

32

島本町

144,218

155,935

161,982

8%

12%

33

豊能町

151,423

164,273

170,177

8%

12%

34

能勢町

130,622

141,513

147,430

8%

13%

35

忠岡町

124,374

134,869

142,988

8%

15%

36

熊取町

135,888

148,633

152,826

9%

12%

37

田尻町

125,529

134,414

141,190

7%

12%

38

阪南市

123,253

133,971

141,704

9%

15%

39

岬町

133,056

142,329

151,170

7%

14%

40

太子町

138,901

150,793

159,380

9%

15%

41

河南町

139,046

150,115

156,574

8%

13%

42

千早赤阪村

141,467

153,204

160,752

8%

14%

43

大阪狭山市

137,901

149,495

158,617

8%

15%

 

 (3)日本一だった大阪府内市町村の減免制度の廃止・縮小

 

災害減免「使えない減免制度」

 ・2018年度、大阪は春に北部地震、夏に台風に見舞われ、大きな被害を受けた。

・「災害減免」については2018年度適用件数は6960件との大阪府からの報告。そのう

ち高槻市が大部分を占めている。さらには高槻市はこの災害減免も縮小の方向。 

 

  子ども減免・多子減免は

・市町村から強い要望があった「多子減免」「子どもの均等割減免」は、キャラバン行動の中でも各市町村から「大阪府で協議されている」「協議されていると聞いている」との期待がある一方、大阪府は「国の協議を見守る」というスタンス。国と地方の協議の中でも未だ具体的な方針は出されていない。

 

  すぐれた独自減免が次々と後退

・日本一の東大阪市の一部負担金減免も2024年全廃に向け縮小。

・松原市は障害者減免を全廃

 

 

 

 

2.  2018年度国保特別会計決算は

(1)    大阪府国保会計決算

・単年度では73.8億円の黒字

 ※ただし、大阪府は調整交付金等の返還で110円が必要なので実質赤字というが、それは2019年度会計の中で行うべきもの。

2019年度予算では

  国庫支出金が2018年度2597億円→2019年度2485.3億円 ▲112.2億円 

  前期高齢者交付金2578.1億円→2481.8億円 ▲96.2億円

  事業費納付金は2667.4億円→2687.5億円 20.1億円増

  ※2020年度は2793億円 105.4億円増

 

  収入全体で8443億円→8218億円 ▲224.7億円

 

 (2)各市町村国保会計決算分析のポイント

・収支はどうであったか

・黒字分は次年度繰越にしているか(保険料引き下げの原資となる)

・一般会計法定外繰入はどうであったのか

・基金積み上げをしているかどうか(次年度予算時に基金繰入であれば-ポイントにはならない)

 

3.  2020年度保険者努力支援制度(市町村分)の指標

□2020年度保険者努力支援制度(市町村分)について

https://www.pref.chiba.lg.jp/hoken/documents/renkei201901_4-1.pdf

 

□点数配分および減点が大きいのは・・・・

・特定健診60%以上・・・・50点 20-30%・・▲10点  20%未満・・・▲25

・特定保健指導60%以上・・・・50点  10-15%・・▲10点  10%未満・・・▲25

・糖尿病重症化予防・・・・・満点で120

・後発医薬品の使用が80%以上・・・・80

・後発医薬品使用満点・・・・・130

・収納率・・・・・上位3割50点、上位5割45点

□法定外繰入・・・・

2018年度決算で法定外繰入を行っていない・・・35点

2018年度赤字解消予定額の達成・・・・・30

2018年度赤字解消目標が達成できていない・・・▲15

・赤字解消計画を策定せず、また策定しているが目標を立てていない等・・▲30

・2018年度決算で前年度以上の決算等目的の法定外繰入を行った・・・▲30

※この点数でみると、法定外繰入をしたことによる減点よりも、特定健診、特定保健指導等での加点が大きいことがわかる。

 

4. そもそも大阪府の一人当医療費は全国でも中位以下なのに、なぜ保険料が高くなるのか?

 20191216日付「国保実務」掲載の「平成29年度・30年度市町村国保 一人当たり医療費」の都道府県順位では、大阪府はいずれの年も27(29年度369,101円、30年度373,735)で全国でも中位以下です。

 いずれの年も1位は島根県(446,285円・456,282)2位は山口県(445,968円・450,505)です。では、両県の標準保険料率は全国トップなのでしょうか。以下は、それぞれの県のホームページの標準保険料率で、島根県は今年度分はアップされていませんでした。両県とも大阪府標準保険料率よりも低いものとなっています。なぜでしょうか。これは、大阪府の被保険者の所得が低いためだと考えられます。国保の所得割率は、所得割の分の賦課総額を被保険者の総所得で割り出すため、所得割は総所得が多いほど低くなり、総所得が少ないほど高くなるためです。

 

【参考 島根県 2018年度)都道府県標準保険料率】

 

所得割

均等割

医療分

7.18%

40,817

後期分

2.69%

15,224

介護分

2.22%

16,511

 

【参考 山口県 2019年度)都道府県標準保険料率】

 

所得割

均等割

医療分

8.21%

47,464

後期分

2.61%

14,927

介護分

2.50%

18,558

 

5. 都道府県単位化及び統一国保のデメリット〜@は都道府県単位化、ABCは統一国保独自のデメリット

 ★デメリット@大阪市・堺市・東大阪市でほぼ決まる。特に大阪市次第。

・均等割シェア・・・大阪市32.38% 堺市9.22% 東大阪市5.65%   3市合計47.25 

            枚方市4.25% 豊中市4.16% 吹田市3.51%   6市合計59.17

★デメリットA市町村による健診などの努力は大阪府事業費納付金には全く反映しない。特に小さい自治体の努力は全く保険料には反映されない。

 →大阪市・堺市・東大阪市3市の努力がなければ事業費納付金は際限なく大きくなり、保険料は天井知らずに上がる。予想では毎年1人当1万円、1割アップ。

★デメリットB保険者努力支援制度の意味がない

→インセンティブ(ご褒美=交付金)を沢山稼いで黒字になっても保険料を下げるためには使えない

★デメリットC独自減免制度は無いに等しくなる。

→そもそも独自減免制度を廃止するなどの想定は都道府県単位化にはない。この原資に一般会計法定外繰入をすることは国も認めている。

 

6. 当面、23月議会にむけては「保険料あげるな」「減免制度拡充を」「統一国保にはデメリットしかない」との運動と当局との粘り強い話し合いを

7. 2020年度は「大阪府国保運営方針」見直しの年。大阪府および調整会議等にむけた取り組みを

8. 国保料統一・一般会計法定外繰入禁止は財務省からの強い圧力によるもの。それよりも政令軽減拡大と子どもへの均等割廃止の要請を。

 

大阪府が令和6年(2024) 一人当統一保険料を17.9万円〜20.8万円と推計!?

大商連が情報公開請求されたなかに「大阪府一人当たり保険料額の傾向分析(推計)」というペーパーがあります。この資料は大阪社保協ホームページ「国保都道府県単位化問題」ページにすでにアップしていますのでご覧ください。https://www.osaka-syahokyo.com/16kokuken/oskt20200117.pdf

大阪府1人当たり保険料額の傾向として「令和6年度における大阪府一人当たり保険料額は令和元年度の一人当たり保険料額と比較して、最大約49.6%、最小でも役28.7%増加する見込み」とし、3パターンとして17.9万円、19.9万円、20.8万円と試算。今年度は13.9万円、来年度は14.8万円です。とても要ら人できる金額ではありません。統一保険料を採用すればそうなるというのを大阪府自らが推計しているわけです。

各市町村の国保特別会計は黒字傾向にあります。ぜひ2018年度の決算を確認してください。そして、この黒字分を次年度に繰越せば保険料は値上げせずに済みます。黒字なのに「統一保険料に合わせるために値上げする」など道理が通りません。こうした推計値を市民に広く知らせていく必要があり、大阪社保協として、この問題でのチラシ作成も検討したいと思います。