大阪社保協通信  1216号 2019.9.25

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児童扶養手当へ申請時の民生委員確認の廃止を求めて摂津市議会で質問〜「廃止を含めた見直し」答弁

★児童扶養手当に民生委員の確認はおかしい

ひとり親家庭への経済的支援として児童扶養手当という制度があります。この制度の申請時や更新時に、不正受給を疑って民生委員に確認をさせる市が大阪府内にあることについて、「まるで戦時下の隣組の監視。時代錯誤でおかしい」という批判が上がり、大阪社保協自治体キャラバンでも取り上げられてきたところです。

★市議会で「廃止を含めた見直し」の答弁

摂津市では、申請時に、元配偶者が摂津市内に居住している場合、「元夫(妻)とは、生計を一にしていません。」とか「元夫(妻)とは交流はありません。」などと「申立書」に書いて、地域の民生委員に確認印をもらってくるよう求められます。

私は、9月の摂津市議会にてこの問題を取り上げ、改善を求めました。当初、児童扶養手当の担当(教育委員会次世代育成部)は「児童扶養手当事務処理マニュアル」に基づいた必要な手続きだと言い、変更しようとはしませんでしたが、民生委員の委嘱に携わる保健福祉部に関りを求め、民生委員の側からも質問し、廃止を含めた見直しの答弁を引き出すことができました。

★シングルマザーの声〜「本当に嫌だった」

実際に民生委員の所へ行かされたシングルマザーの声を紹介します。

私が話を聞いたシングルマザーは「本当に嫌だった。見ず知らずの民生委員さんに『離婚をして…』と説明しなくてはならなくて。民生委員さんも『なんで来たのか』という感じでした。これから、この民生委員さんがしょっちゅう様子を見に来るのかと、ものすごく嫌な気持ちになりました。結局、訪ねてきたことはなかったけど」と話してくれました。彼女は周りのシングルマザーは民生委員の確認がなかったと聞いて、「どうして私だけ。元夫が近くに住んでいるだけで疑うなんて失礼だ。こどものためにしたことなのに。こどものことなんてどうでもいいのですか。『疑われたくなかったら、交流するな。子どもを連れて市外へ出て行け』というのですか」と怒りが抑えきれないようでした。

★民生委員にも大きな精神的負担

この問題は、民生委員にとっても負担の大きい問題です。民生委員が行う確認を「証明事務」と言います。大阪府の発行する「民生委員・児童委員活動ハンドブック」は、「証明事務」で「対応しないもの」の一番に「状況確認ができないもの」を上げ、「本人や対象者と面識がなく(あるいはそれに等しく)、生活状況の確認が困難な場合やあいまいな場合」と記載しています。しかし実際には、確認できなくても確認印を押さざるを得ないのが「証明事務」の実態です。

全国的に民生委員のなり手が減少する中で、2016年、大阪府地域福祉推進審議会「民生委員・児童委員制度のあり方検討部会」が報告をまとめました。民生委員の精神的負担が大きいこと、中でも「プライバシーにどこまで踏み込んでいいのかわからない」、「個人情報など、必要な情報を把握できない」ことが上位2位でした。「あり方検討部会」の報告は、民生委員活動の見直しや活動しやすい環境整備を求め、「特に、形骸化している『証明事務』については、廃止等も含めて対策を取るなど、早急の対応が望まれる。」「法律に基づく証明事務などは、法改正等により、廃止も含めて検討すべき」と強調しています。

★市も「証明事務」(民生委員の確認)の廃止を求めていた

摂津市に対して、議会で、民生委員の「証明事務」についての見解を質したところ、保健福祉部理事は、「全国民生委員児童委員連合会でも大きな問題と捉えている。そもそも民生委員が機関等と同様の証明能力を有するのかが大きな争点であり、昨今の社会情勢を考慮すれば、証明事務そのものを再考する必要があるものと考えている。本市においても市長会等を通じて、国や大阪府に再考するよう要望している」と答弁しました。

これを受けて、「国や大阪府に再考を要望しながら、独自の「証明事務」を民生委員にさせることは、ダブルスタンダードであり、即刻改善すべき。最初に、ハラスメントだと感じる対応をされたひとり親が、摂津市に悩みを相談するだろうか。ひとり親を孤立させ、民生委員活動の負担にもなる、民生委員の確認及び「申立書」の提出は廃止すべきではないか」と問うと、教育委員会次世代育成部長は、「廃止も含めた見直しが必要であると認識している」と答弁しました。

★終わりに

摂津市の児童扶養手当の担当は、民生委員の「証明事務」が全国的にも問題となり、市自身も「大阪市長会要望書」で廃止を含めた見直しを求めていることを知らなかったのです。他市でも、担当課が知らないところもあるのではないでしょうか。ひとり親家庭はじめ、市民の生活の向上のために情報交流が必要だと感じています。また、他市からの情報もお知らせください。よろしくお願いします。

(2019.9 摂津市議会議員 増永和起)

 

2020年国会介護保険法改正への検討始まる〜社保審介護保険部会が本格化

参議院選挙を経て、止まっていた次期介護保険改定への検討が本格化しました。

★次期介護保険改定への検討本格化 年内「意見集約」

これまでの経過は以下です。

○「骨太の方針2018」(2018615日閣議決定)—「改革工程表2018」(20181220日経済財政諮問会議決定)及び「骨太方針2019

○「ポスト一体改革」後の「全世代型社会保障検討会議」と同時進行

 

2019225日から社会保障審議会介護保険部会が次期介護保険制度改正に向けた検討開始。月1回検 

 討

 

【主な検討事項】

@    介護予防 ・ 健康づくりの推進 健康寿命の延伸

A    保険者機能の強化 地域保険としての地域の繋がり機能・マネジメント機能の強化

B    地域包括ケアシステムの推進 多様なニーズに対応した介護の提供・整備

C    認知症「 共生 」・「 予防 」 の推進

D持続可能な制度の再構築 ・ 介護現場の革新

○8月29日 第80回介護保険部会で今後の検討スケジュール。

 

今後、月1・2回ペースで検討し12月「意見とりまとめ」、2020年1月〜3月国会へ法案提出、2021年度制度改正施行、第8期介護保険事業計画

 

★給付と負担の全面的な見直し狙う

8月29日の「検討事項」では、「Xる持続可能な制度の再構築・介護現場の革新」では論点に「介護職員の定着促進、介護現場革新の取組を効果的に横展開していくための方策等」を掲げながら、「処遇改善」策は全くありません。

 

〇「給付と負担の見直し」では、次の8項目

1. 被保険者・受給者範囲

2. 補足給付に関する給付の在り方

3. 多床室の室料負担

4. ケアマネジメントに関する給付の在り方

5. 軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方

6. 高額介護サービス費

7.「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準

8.現金給付

★焦点となる課題

@ケアプラン有料化 4

A2割負担・3割負担の拡大、補足給付改悪 7.2.3.6

B軽度者サービスの総合事業移行 5

C自立支援インセンティブ強化、調整交付金 

 +保険料徴収年齢の引き下げ 1

★介護保険制度を大きく変質させる改悪内容の狙いと運動課題

(1)ケアマネジメント有料化〜10年来の攻防の決着狙う

  ケアマネジメントの有料化については、この10年間、ずっと検討されつづけてきました。2010年は介護保険部会で両論併記、2011年社会保障・税一体改革検討のなかでも両論併記、2013年介護保険部会では「検討」、2016年介護保険部会では「引き続き検討」。

○保険者によるケアマネジメント統制、ケアマネジメントの標準化、AI活用とも相まってケアマネジメント変質

  2013年には「資質向上」が必要とされ、ケアマネジャー養成研修の見直しと運営基準減算が強化されました。  2018年からは「自立支援型地域ケア会議」が設置され、市町村に指定・監督権が移譲されました。

○給付抑制の新段階〜有料化の問題点はなにか

  ケアマネジメントがもし有料化されれは何がおきるでしょうか。

@    ケアマネジメントの「公益性」「公共性」を否定する結果になる

A    利用者の経済的負担−二重の利用抑制

B    利用者とケアマネジャーとの「関係性」を歪める料金負担−ケアマネへの過剰要求・期待

C    ケアマネジャーの業務に多大な負担

〇絶対に許してはならない有料化〜いまこそケアマネジャーの一大共同行動が必要です!

 

(2)2割負担・3割負担の拡大、補足給付改悪

 ○「現役なみ」(3割負担)、「一定以上」(2割負担)の所得区分の引き下げ〜調査の「ペテン的利用」

 ○後期高齢者医療の2割負担化を先導しかねない大改悪〜 一部は政令改定のみ、法改正なしに実施可能

 ○利用できない介護保険、介護殺人、介護心中の多発へ

 ○補足給付にとどまらない「資産勘案」

 ○全高齢者、利用者・家族、介護関係者全体に知らせ、圧倒的な反対世論と運動を

 

(3)軽度者サービスの総合事業移行

 ○「サービス多様化」で要支援者切捨て、自助・互助への置き換えへ

 ○ホームヘルプ(生活援助)とデイサービスの縮小

 ○自治体に給付抑制・軽度者切捨て競争をあおる

 

(4)自立支援インセンティブ強化、調整交付金 (保険者機能強化)

 ○政府全体、財務省の強い圧力

 ○保険者インセンティブ、評価指標の見直し

 ○調整交付金活用で質的に新たな段階

 

(5)保険料徴収年齢の引き下げ

 ○厚生労働省が改めて財源確保策として打ち出す

 ○当面は保険料徴収年齢引下げ、将来的には障害福祉サービス統合、全年齢へ

   第1子出産年齢の高齢化による年齢引下げ論 40歳⇒30

 

(6)介護労働者賃金引き上げ・処遇改善

 ○深刻な介護人材不足−低報酬と非正規による低賃金構造

 ○まやかしの「勤続10年介護福祉士8万円賃上げ」

 ○全産業平均との「格差解消」を言いながら差別分断を強要

 ○国家責任による賃金改善 全額国庫負担、介護労働者全員、全産業平均まで引き上げ  総額2兆円程度の財政出動

 

★この秋から年末 共同行動を地域へ広げ、政府厚生労働省へ声を届ける行動を

 

@   学び、知らせる行動月間(11月)

〇各地域社保協またはブロックごとでの「介護保険学習決起集会」を開催しましょう。講師依頼は大阪社保協へ。

〇河南ブロックはいち早く、介護保険学習会開催を計画しています。

       【河南ブロック介護保険学習会】

日時:2019年11月19日(火)PM630900

場所:富田林市消防署4階視聴覚室

講師:日下部雅喜さん(大阪社保協介護保険対策委員長)

 

A   世論と広範な共同を

12月議会にむけての自治体意見書採択運動

ケアマネジメント有料化、2割・3割負担拡大、要介護1.2の総合事業化、調整交付金のインセンティブ化などは市町村も「反対」の基盤があります。ぜひ各市町村12月議会に向けて意見書採択運動を!

(「ひな形」は大阪社保協介護保険対策委員会で議論し提案します)

〇全ケアマネジャーを視野に置いた取り組み−職能団体支部、ケアマネ連絡会へ、事業所、事業者団体への呼び掛けを!各地で学習決起集会を企画し、申し入れ行動を行いましょう。

〇利用者家族、高齢者へ知らせ、声を上げる取り組み

   11月〜12月 社保審介護保険部会委員への 要請FAX,要請はがきの取り組み

   介護総がかり行動と共同した運動 11.9大阪集会と厚生労働省交渉を計画