大阪社保協通信  1204号 2019.2.19

 

メールアドレス:osakasha@ poppy.ocn.ne.jp       大阪社会保障推進協議会

  http://www.osaka-syahokyo.com/index.html      TEL 06-6354-8662 Fax06-6357-0846

 

「統一国保」にするのは大阪だけ。なぜ他の都道府県がしないのか。今一度、「統一国保」のデメリットを確認しましよう。

多くの市町村で議会がスタートしており、その中で「国民健康保険値上げ」が提案されるようです(各市町村の状況をお知らせください)。今号では、「国保都道府県単位化」問題と「大阪府統一国保」問題について掲載します。                    (大阪社保協 事務局長 寺内順子)

1. 国民健康保険都道府県単位化とはなにか

□2015年5月成立した「持続可能な医療保険制度改革を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法」により、2018年度から国保の保険者は都道府県と市町村になりました。

□国保の様々な実務(賦課、徴収、給付や健診等)はこれまでどおり市区町村が行います。

□都道府県が国保財政運営を行うことにより都道府県が大きな権限をもつこととなります。

2. 都道府県が財政運営をするとはどういうことか

 □国保財政の収入は国庫支出金(2016年度シェア21.2%)、前期高齢者交付金(22%)、保険料(18%)ですが、2018年度以降は国庫支出金と前期高齢者交付金はすべて都道府県会計に入り、市町村国保会計には保険料と都道府県支出金しかはいらなくなりました。

 □2018年度以降の市町村国保料は、都道府県事業費納付金と標準保険料率を都道府県が計算し、その上で割り振りされた市町村事業費納付金をもとに市町村が計算をすることとなります。

3. 新たな公費3400億円とは

A)平成27年度(2015年度)からの1700億円⇒低所得者対策として7.5.2割軽減の人数に応じて交付、国2:都道府県1:市町村1の負担

B)平成30年度(2018年度)からの1700億円⇒全額国の負担。もともときょうかい健保に出していた補助金

(単位 億円)

 

2015年度

2016

2017

2018

2019年〜

A)低所得者対策の強化

1700

1700

1700

1700

1700

B)

@財政調整機能の強化

 

 

 

800

800

A保険者努力支援制度

 

 

 

840

840

B高額療養費への対応

 

 

 

60

60

 

財政安定化基金の造成<積立総額>

200

<200>

400

<600>

1100

<1700>

300

<2000>

-

<2000>

 

 

□保険者努力支援制度1000億円

●平成30年度(2018年度)からの1700億円のうちの500億円(都道府県分)+340億円(市町村分)

 *市町村分はさらに別途特別調整交付金から160億円がプラスされ総額500億円で合計1000億円

●平成31年度交付内容

2019年度

保険者努力支援制度

合計1000億円のインセンティブ

B)-A800億円

   +

特別調整交付金200億円

都道府県分(500億円)

医療費適正化の取り組み状況(都道府県平均)

200億円

医療費水準に着目した評価

150億円

各都道府県の医療費適正化に関する取り組み状況

150億円

市町村分

 

500億円

 

4. 2018年度以降の保険料算定方法

(1)まず都道府県ごとに全体の事業費納付金を計算する

都道府県事業費納付金は、その都道府県全体の1年分の医療給付費から公費(国庫支出金・都道府県阪府支出金)や前期高齢者交付金等をひいたもの。

     ←              都道府県全体の一年分の医療費                →

   

       都道府県事業費納付金

 

国庫支出金

前期高齢者交付金

都道府県支出金

その他

 

(2)都道府県事業費納付金を基に都道府県標準保険料率を計算。ただしこれは理論値であり、実際の保険料とは別。

 

(3)市町村ごと事業費納付金を被保険者数・医療費水準・所得水準を加味して都道府県が計算。

←              都道府県事業費納付金を市町村でわける                       →

●●市事業費納付金

●●市事業費納付金

●●

●●市

●●市

その他市町村事業費納付金

 

(4)市町村事業費納付金をもとに市町村標準保険料率を都道府県が計算

(5)市町村標準保険料率をもとに市町村が保険料を計算する

5. 全国で大阪府だけの独自路線〜「統一国保」に突っ走る

 (1)大阪府「統一国保」とは

・統一国保とは事業費納付金計算と保険料率計算の時に医療費水準を一切加味せず、被保険者割と所得割だけを使います。

標準保険料率を統一保険料率として使う。 

・各市町村からの一般会計法定外繰入をさせない。

・保険者努力支援制度市町村分インセンティブ・収納率インセンティブ・大阪府2号繰入金インセンティブ(別紙)は市町村に交付するが、保険料引下げには使わせない

条例減免も統一し、その原資は事業費納付金計算の時に含む=保険料で賄う

  ・6年間の激変緩和期間をもうけ、すぐには統一国保にしなくてもよいが、6年後には統一する。

・大阪府国保運営方針は3年ごとに見直す。

   

 (2)実際に府内43市町村はどう動いたのか

 

□現状について〜激変緩和措置計画(各市町村における府内統一基準の実施予定)

 

2018

2019

2020

2021

2022

2023

2024

保険料率

8

4

0

2

1

0

28

保険料減免基準

9

2

0

2

2

1

27

一部負担金減免基準

22

5

0

2

0

0

14

   出典)大阪府資料(平成30822日全国主管課長協議会「大阪府における新国保制度施行後の課題と対応」)

    つまり、大阪の半分の自治体は激変緩和最終年に統一するとしている、裏を返せば、それまで統一しないという意思表示と考えられます。

 

(3)厚生労働省は「統一」を求めていない

 

20181018日埼玉県国保トップセミナーにおいて厚生労働省野村国保課長が「保険料統一」についての考え方を述べている】

   「保険料水準の統一は、ある程度共通化するというのが方向性としていいのではないかと国のガイドラインで示しているが、各都道府県の運営方針を拝見すると保険料の扱いを統一するというのは大阪府だけであり、それ以外の自治体ではいつまでを目標に検討すると明示しているのが北海道、福島等である。」

「国保運営方針を3年、6年単位で作ってもらっている。その間に私どもが何年までに、あるいはその先の12年後までになどと目標年次を示していないのは、様々な実態によって負担増にも関わる問題なので、そういった意味では都道府県の調整交付金、国の調整交付金があるが、こういったものを活用しながら毎年度の保険料設定の際に各県の基本方針で示した各県の保険料の扱い、方針を踏まえながら、市町村、都道府県でコミュニケーションをとりながら考えていただく課題だと思う」(国保実務20181029日付)

 

つまり、国保料の統一をするのは大阪府だけだから、厚生労働省は大阪府に対して「負担増になる問題だから市町村とコミュニケーションをよくとって熟慮せよ」と警鐘を鳴らしているのです。

6. 「大阪府統一国保」のデメリット

 (1)保険料引き下げができない、保険料が際限なく上がる

厚生労働省は一般会計法定外繰入が全くできないとは一言も言っていません。特定健診の充実や条例減免の原資には今も繰入ができます。しかし、統一国保では、「統一減免制度」となり、保険料を原資とするため、実際に使えないような内容となることは日を見るよりも明らかです。それは、今年度の「災害減免」で、大阪府内で地震や台風で被災した被保険者に対する適用がわずかであることが証明しています。

さらに、市町村に入ってくる3つのインセンティブ(@保険者努力支援制度によるインセンティブA大阪府2号繰入金によるインセンティブB収納率インセンティブ)のうち@はもともと、一般会計法定外繰入をせずとも保険料を引き下げることが出来るよう新たに設けられた公費3400億円のなかの840億円が原資です。こうしたインセンティブを次年度に繰り入れたり、黒字で積み上げた基金を繰入をすることで保険料引き下げができるはずなのに、「統一国保では出来ない」というのは大きな矛盾でありデメリットでしかありません。

 

 (2)事実、来年度大阪国保統一保険料率は全国一の高さになる

  既に大阪社保協通信1201号でお知らせしていますが、1月に示された「統一保険料率」は現行の大阪府内全市町村の保険料よりも高く、そして全国一高い保険料になる可能性が高くなっています。

 

【算定結果概要 平成311月本算定】

 

所得割

均等割

平等割

賦課限度額

医療分

8.57%

29,713

31,799

58万円

後期分

2.69%

9,249

9,898

19万円

介護分

2.58%

19,134

0

16万円

 

2018年度各市町村モデルケースごと国保料との比較】

  @現役40歳代夫婦と未成年の子供2人の4人世帯の国保料

  A65歳以上74歳以下で年金生活者高齢者夫婦のみ世帯

  B40歳母と未成年の子ども2人のシンママ世帯

 

所得100

所得200

所得300万円

@

A

B

@

A

B

@

A

B

2019統一保険料

210,635

171,139

181,587

419,778

307,663

408,845

605,341

420,263

547,245

1

大阪市

186,179

155,439

166,690

380,825

287,376

379,152

556,831

399,176

517,852

2

豊中市

137,179

96,481

133,664

357,312

267,264

348,166

517,302

368,764

469,466

3

池田市

199,728

130,634

172,953

404,417

300,441

392,736

588,187

419,141

534,636

4

豊能町

187,200

121,600

162,500

371,000

275,700

364,400

533,500

373,500

483,800

5

能勢町

188,200

153,300

165,300

381,300

283,000

375,000

555,000

392,600

509,200

6

箕面市

188,362

157,615

162,962

375,292

284,015

366,712

541,112

388,515

490,312

7

高槻市

154,750

141,690

145,810

320,510

265,950

321,430

480,200

372,650

464,410

8

島本町

200,732

161,582

173,957

398,851

290,805

390,780

874,231

397,505

520,680

9

茨木市

186,238

155,962

162,133

373,269

282,033

365,814

539,924

386,633

491,714

10

吹田市

181,680

162,940

167,600

374,710

299,160

381,570

550,250

413,860

522,070

11

摂津市

184,249

118,185

158,989

367,811

269,007

358,271

530,891

367,907

480,371

12

守口市

196,892

161,582

170,117

392,707

290,805

383,100

566,551

397,505

513,000

13

門真市

187,890

154,730

163,880

382,370

289,650

372,890

557,600

405,250

509,590

14

大東市

192,400

158,900

168,400

391,600

295,000

383,200

571,000

410,700

523,100

15

四條畷市

193,330

154,350

167,360

391,150

285,850

379,870

568,630

397,450

516,670

16

寝屋川市

180,600

144,600

157,700

370,100

272,500

360,300

541,600

382,700

495,800

17

枚方市

174,900

119,400

154,000

358,200

275,200

351,500

524,000

385,300

482,400

18

交野市

191,900

156,700

166,400

386,200

286,600

376,500

559,900

395,600

508,800

19

東大阪市

196,002

127,331

171,957

399,324

293,240

391,238

582,688

410,140

534,638

20

八尾市

193,840

158,970

169,240

394,710

297,040

385,150

575,750

402,330

526,550

21

柏原市

196,890

127,796

170,115

392,701

290,805

383,100

566,551

397,505

513,000

22

松原市

205,133

136,038

178,357

413,247

311,346

403,641

599,392

430,346

545,841

23

羽曳野市

183,090

151,420

158,360

365,120

272,530

356,550

526,720

372,530

477,250

24

藤井寺市

196,890

161,579

170,115

392,701

290,805

383,100

566,551

397,505

513,000

25

大阪狭山市

181,523

119,045

156,850

362,795

271,552

353,630

523,976

372,952

474,630

26

富田林市

196,680

159,690

172,880

402,780

297,850

394,380

589,280

415,850

541,680

27

太子町

180,636

148,275

157,056

360,060

268,011

353,316

519,276

367,311

472,116

28

河南町

176,219

144,605

153,319

354,129

261,925

346,469

512,969

359,425

467,169

29

千早赤阪村

188,362

157,615

162,962

375,292

284,015

366,712

541,112

388,515

490,312

30

河内長野市

196,880

161,570

170,100

392,690

290,790

383,080

566,530

397,490

512,980

31

堺市

181,875

148,797

159,739

371,551

276,739

363,930

542,902

385,739

498,630

32

和泉市

189,753

155,393

164,613

381,285

283,069

372,093

552,273

389,769

501,993

33

高石市

197,783

129,205

171,266

396,702

295,042

386,820

574,054

406,042

521,020

34

泉大津市

196,800

127,700

169,900

392,500

290,700

383,000

566,400

397,400

512,900

35

忠岡町

196,800

161,400

169,900

392,500

290,700

383,000

566,400

397,400

512,900

36

岸和田市

197,200

128,000

170,400

393,400

291,300

383,900

567,600

398,200

514,100

37

貝塚市

196,880

161,570

170,100

392,690

290,790

383,080

566,530

397,490

512,980

38

泉佐野市

196,800

161,400

169,900

392,500

290,700

383,000

530,300

397,400

512,900

39

田尻町

182,894

121,134

159,651

370,967

277,974

362,534

540,018

386,174

493,534

40

熊取町

191,920

122,830

165,140

384,770

280,880

341,930

556,630

387,580

503,080

41

泉南市

194,400

165,900

179,800

404,300

316,300

399,100

596,200

447,100

554,900

42

阪南市

196,880

161,570

170,100

392,690

290,790

383,080

566,530

397,490

512,980

43

岬町

195,879

158,575

169,211

390,668

283,966

381,057

563,594

396,524

510,257

 

7. 2024年「大阪府統一国保」は既成事実か?

□大阪府国保課長「今後、進み具合や被保険者への影響をみながら、33年度以降の運営方針で統一的なものに進むのか、もう少し遅めにやらなければならないのかといった状況になる」

2018822日開催された「国保主管課長協議会」シンポジウムで、厚生労働省・島添課長補佐は大阪府の保険料統一の方針を取り上げた上で大阪府に対して「保険料統一の定義が実は曖昧で、これら保険料統一は一体何かということを県と市町村で議論しなければならない。大阪府も統一保険料率とはいえ、国保運営方針をみると直診勘定分は統一保険料率の外に置いており、2号繰入金で医療費適正化のインセンティブを効かせることに関しては、その2号繰入金は保険料率に反映できないということになる。大阪府が考えた保険料率の定義、統一の枠外に置いた費用はなにかを伺いたい」と質問しました。

それに対して大阪府の山本課長は『大阪府の場合、保険料率統一ありきという形で進めたのも事実。そもそも完全統一という形とは若干ずれている。保険料統一を進める、形とするためにまずは運営しやすい、皆さんが合意していただけるような部分を残して導入した。したがって、運営方針も33年度までという形にしたのが実情』とした。その上で、「今後、進み具合や被保険者への影響をみながら、33年度以降の運営方針で統一的なものに進むのか、もう少し遅めにやらなければならないのかといった状況になると思う」と述べたのです。

大阪の中では、6年後の2024年に「統一」しか選択肢が無いかのように大阪府は言い、そして市町村もそうしなければならないのだと言っていますが、国保課長自らが、厚生労働省に対しては運営方針見直しもありだと言っているのです。

8. 国保料引下げは住民の願い。さあ、3月市町村議会・4月統一地方選挙にむけて各地域でいかに動くか!〜たたかいなくして前進なし。

「統一国保」というのは、国保特別会計が黒字になっても保険料を下げられない、独自に一般会計法定外繰入をすることも独自減免をすることも許さない、つまり、自治体が住民のためにより安い保険料にすることを禁止するというものです。

 大阪府統一国保といっても、来年度の国保料を決めるのはあくまでも市町村です。それを法的には「市町村の賦課権限」といいます。住民の願いは「高すぎる国保料の値下げ」です。住民の方を向いているのか、大阪府の方を向いているのか、自治体の在り方がいま問われています。

 大阪社保協では、大阪社保協ホームページに地域宣伝等にお使い頂けるように国民健康保険チラシをアップしていますのでどうぞご活用ください。住民のみなさんに知らせながら、「国保料引下げを!」のたたかいを大阪各地ですすめていきましょう。

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆  今後の会議・取り組み予定  ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

220() 福祉医療の拡充を求める大阪実行委員会主催大阪府の医療・福祉これでええの?」(14時〜大阪府保険医協会)

介護保険対策委員会 (1900-大阪民医連)

221()大阪社保協第8回常任幹事会(1800- 国労会館)

32()大阪社保協第29回総会(大阪府保険医協会MDホール)

35()社保協近畿ブロック事務局会議(1500-大阪社保協事務所)

37()大阪社保協事務局会議(1400-大阪社保協事務所)

39()中央社保協代表者会議・60周年記念行事(けんせつプラザ東京)

311()大阪社保協滞納処分対策委員会(1800-大阪社保協事務所)

314()大東市介護保険対策委員会

329()河南ブロック会議(1500-松原民商)