大阪社保協通信  1181号 2018.5.14

メールアドレス:osakasha@ poppy.ocn.ne.jp    大阪社会保障推進協議会

  http://www.osaka-syahokyo.com/index.html   TEL 06-6354-8662 Fax06-6357-0846

 

スタートした大阪府国民健康保険〜市町村事業費納付金・激変緩和措置等について情報開示がされました

 4月から国民健康保険(以下、国保)の都道府県単位化がスタートしました。都道府県が財政運営をし、市町村が実務を担うこととなり、保険料は都道府県が都道府県全体の医療費から公費や前期高齢者交付金など差し引いて「都道府県事業費納付金」を計算、市町村毎に「市町村事業費納付金」を割り出しに標準保険料率を計算します。そして、市町村はそれを参考に割り当てられた事業費納付金を全額集めるための保険料を計算する、というのがこれからの手順となります。

 大阪府は大阪のどこにいても同じ保険料となるよう市町村ごとの医療費水準を全く無視して「統一保険料」など大阪府統一国保を目指して動き出しました。背景には2010年橋下大阪府知事のもとでの「大阪都構想=国保統一」の動きがあります。こうした統一保険料を目指しているのは現時点では47都道府県中、大阪府、滋賀県、奈良県、広島県の4府県で少数派です。

「統一保険料」とするためには各市町村が独自に実施してきた「一般会計法定外繰入」「条例減免制度」を廃止することが必須となり、当然そのしわ寄せは被保険者に保険料の大幅値上げという形で表れることは自明の理です。

★事業費納付金シェアと被保険者シェアの差から見えてくるもの

統一国保料とするには、各市町村ごとの医療費水準の差は無視して、加入人数(被保険者割)と所得水準(所得割)で大阪府全体の事業費納付金をシェアすることとなります。図表1は、大阪府から示された2018年度市町村事業費納付金額と2016年度被保険者数のシェアを比較したもので、黄色いのは被保険者シェアよりも事業費納付金シェアが大きいところ、つまり、所得水準が高いがために一人当事業費納付金が多くなっている自治体です。しかし、10.守口市はあまりにかい離が大きく、果たして数字が合っているのかと疑問を持たざるを得ません。

【図表1

 

 

@事業費納付金

納付金シェア

A被保険者数(H28年度)

被保険者数シェア

1

大阪市

85,853,548,279

31.68%

714,820

31.67%

2

堺市

23,874,714,654

8.81%

208,606

9.24%

3

岸和田市

6,046,105,016

2.23%

51,102

2.26%

4

豊中市

11,703,419,897

4.32%

92,737

4.11%

5

池田市

3,046,592,885

1.12%

24,158

1.07%

6

吹田市

9,838,497,630

3.63%

78,398

3.47%

7

泉大津市

2,152,291,488

0.79%

18,162

0.80%

8

高槻市

10,325,836,872

3.81%

85,093

3.77%

9

貝塚市

2,532,049,595

0.93%

21,323

0.94%

10

守口市

4,511,576,583

3.28%

37,953

1.68%

11

枚方市

11,784,529,304

4.35%

97,034

4.30%

12

茨木市

7,840,220,103

2.89%

62,267

2.76%

13

八尾市

8,891,898,546

3.28%

72,420

3.21%

14

泉佐野市

2,925,649,543

1.08%

24,412

1.08%

15

富田林市

3,591,841,055

1.33%

29,264

1.30%

16

寝屋川市

7,059,608,301

2.60%

63,760

2.82%

17

河内長野市

3,442,158,315

1.27%

28,587

1.27%

18

松原市

4,053,132,492

1.50%

35,035

1.55%

19

大東市

3,931,024,051

1.45%

34,166

1.51%

20

和泉市

5,424,322,348

2.00%

44,782

1.98%

21

箕面市

4,268,746,110

1.57%

32,339

1.43%

22

柏原市

2,169,615,857

0.80%

18,281

0.81%

23

羽曳野市

3,587,598,208

1.32%

30,785

1.36%

24

門真市

4,358,640,150

1.61%

37,102

1.64%

25

摂津市

2,787,379,669

1.03%

22,735

0.63%

26

高石市

1,639,290,511

0.60%

14,166

0.63%

27

藤井寺市

1,987,985,918

0.73%

17,078

0.76%

28

東大阪市

15,604,056,558

5.76%

130,324

5.77%

29

泉南市

2,139,701,609

0.79%

20,427

0.90%

30

四條畷市

1,740,622,224

0.64%

14,679

0.65%

31

交野市

2,309,609,634

0.85%

17,792

0.79%

32

島本町

915,083,241

0.34%

6,859

0.30%

33

豊能町

811,106,232

0.30%

6,140

0.27%

34

能勢町

417,825,091

0.15%

3,384

0.15%

35

忠岡町

526,002,556

0.19%

4,353

0.19%

36

熊取町

1,362,485,911

0.50%

11,169

0.49%

37

田尻町

203,650,535

0.08%

1,783

0.08%

38

阪南市

1,805,791,143

0.67%

15,379

0.68%

39

岬町

607,646,677

0.22%

4,771

0.21%

40

太子町

422,807,640

0.16%

3,507

0.16%

41

河南町

539,229,787

0.20%

4,220

0.19%

42

千早赤阪村

224,787,376

0.08%

1,861

0.08%

43

大阪狭山市

1,776,486,470

0.66%

14,004

0.62%

 

大阪府全体平均

271,035,166,064

 

2,257,217

 

@Aは大阪府資料より

 

 

★厚生労働省一人当保険料と大阪府発表保険料に大きくかい離がある

 330日、厚生労働省は「都道府県の算出による国保改革前後の保険料等の動向の取りまとめ」を公表しました。そのデータは大阪社保協ホームページにも掲載しています。

http://www.osaka-syahokyo.com/16kokuken/kr201804b.pdf

http://www.osaka-syahokyo.com/16kokuken/kr201804a.pdf

 この取りまとめでは、「平成304月施行の国保改革前後における、市町村ごとの被保険者一人当たり保険料または納付金の理論値の伸び率(平成28年度と平成30年度を比較し、単年度換算したもの)を見ると、保険料ベース、納付金ベースでそれぞれ約59%、約55%の市町村が維持または減少、41%、約45%の市町村が増加となっている」としており、マスコミでも「国保保険料、過半数の市区町村で下がる見通し」(330日付産経ニュース)などと報道されました。

 しかし、大阪府の一人当り保険料を見ると、110日に大阪府が市町村に説明したものと大きく違います。それを一覧表にしたのが図表2のBとCで、その差は大阪府平均でも21,749円もの差があります。

★なぜ、新しい制度になるのに大阪府ホームページに一切情報がないのか

そこで46日、大阪府に「なぜ大阪府発表のものと厚生労働省発表のものが違うのか?」と問い合わせたところ、Bの計算時には介護分は4064歳被保険者数で割り戻したが厚生労働省計算では前被保険者数で割り戻したことと激変緩和措置後の数字だからという回答がありました。しかし、激変緩和措置については全く公表されていないこと、また、110日の最終値についても大阪社保協ホームページに掲載しているだけで、大阪府ホームページにまだまったく掲載されていないことなどを指摘し、「ホームページに掲載しないのであれば全ての資料の開示請求をします」と迫りました。

大阪府からは「お問合せいただいておりました標記の件について、4月中(予定)に行う方向で調整中でございます」との回答を得ました。

そして、427日に大阪府ホームページにおいて「国民健康保険制度改革について」としてアップされました。http://www.pref.osaka.lg.jp/kokuho/iryouseido/kaikaku.html

激変緩和措置の金額については、大阪府から情報提供を得たので、図表2にDとして反映させました。なお、府による激変緩和措置の考え方については、「大阪府国民健康保険運営方針」に掲載されているので別掲します。

【図表2

 

 

A被保険者数(H28年度)

B1月大阪府発表一人当必要保険料

C厚生労働省発表一人当必要保険料

C−B

D激変緩和措置

一人当激変緩和額

1

大阪市

714,820

123,968

106,168

-17,800

0

0

2

堺市

208,606

120,736

102,921

-17,815

0

0

3

岸和田市

51,102

126,406

107,351

-19,055

0

0

4

豊中市

92,737

139,948

110,386

-29,562

780,324,483

8,414

5

池田市

24,158

134,835

115,221

-19,614

0

0

6

吹田市

78,398

137,003

116,208

-20,795

0

0

7

泉大津市

18,162

124,670

104,213

-20,457

32,539,361

1,792

8

高槻市

85,093

136,754

108,589

-28,165

610,955,136

7,180

9

貝塚市

21,323

125,821

100,592

-25,229

127,239,796

5,967

10

守口市

37,953

124,592

106,351

-18,241

0

0

11

枚方市

97,034

131,003

99,992

-31,011

989,395,332

10,196

12

茨木市

62,267

140,091

113,711

-26,380

315,465,994

5,066

13

八尾市

72,420

132,906

109,280

-23,626

236,360,268

3,264

14

泉佐野市

24,412

125,932

107,841

-18,091

0

0

15

富田林市

29,264

129,001

109,470

-19,531

0

0

16

寝屋川市

63,760

120,319

96,470

-23,849

326,378,123

5,119

17

河内長野市

28,587

133,509

113,767

-19,742

0

0

18

松原市

35,035

123,540

105,218

-18,322

0

0

19

大東市

34,166

120,848

102,356

-18,492

0

0

20

和泉市

44,782

131,318

108,268

-23,050

137,835,621

3,078

21

箕面市

32,339

146,889

122,704

-24,185

46,647,966

1,442

22

柏原市

18,281

129,522

109,927

-19,595

0

0

23

羽曳野市

30,785

127,871

101,215

-26,656

199,404,163

6,477

24

門真市

37,102

125,597

99,986

-25,611

225,377,622

6,075

25

摂津市

22,735

136,741

115,651

-21,090

0

0

26

高石市

14,166

124,536

103,259

-21,277

0

0

27

藤井寺市

17,078

124,257

105,530

-18,727

0

0

28

東大阪市

130,324

127,451

108,384

-19,067

0

0

29

泉南市

20,427

112,417

91,649

-20,768

0

0

30

四條畷市

14,679

128,693

103,600

-25,093

67,211,552

4,579

31

交野市

17,792

138,502

113,495

-25,007

67,924,338

3,818

32

島本町

6,859

144,218

122,313

-21,905

0

0

33

豊能町

6,140

151,423

127,556

-23,867

6,978,325

1,137

34

能勢町

3,384

130,622

107,682

-22,940

12,378,880

3,658

35

忠岡町

4,353

124,374

106,069

-18,305

0

0

36

熊取町

11,169

135,888

115,142

-20,746

0

0

37

田尻町

1,783

125,529

100,548

-24,981

9,858,326

5,529

38

阪南市

15,379

123,253

104,923

-18,330

0

0

39

岬町

4,771

133,056

113,336

-19,720

2,720,601

570

40

太子町

3,507

138,901

108,913

-29,988

28,035,315

7,994

41

河南町

4,220

139,046

118,895

-20,151

0

0

42

千早赤阪村

1,861

141,467

105,414

-36,053

24,658,811

13,250

43

大阪狭山市

14,004

137,901

113,145

-24,756

47,649,431

3,403

 

大阪府全体平均

2,257,217

127,894

106,145

-21,749

4,295,339,444

 

ABDは大阪府資料より

Cは厚生労働省資料

 

【大阪府国民健康保険運営方針より】

 

(2)府が実施する激変緩和措置の内容

新制度施行に伴い、市町村ごとに本来集めるべき一人当たりの保険料額について、国保事業費納付金等算定標準システムにより算定した新制度における一人当たり保険料額から、現行制度における本来集めるべき保険料額を差し引いて得られた差額を、府が実施する激変緩和措置の対象とする。激変緩和措置の具体的な実施方法については、別に定める。

なお、制度施行当初にあっては、激変緩和措置に活用する都道府県繰入金が多額となることにより、全体の事業費納付金総額が増加するおそれがあることから、国公費を投入した上で、激変緩和措置の状況に応じて、特例基金からの繰入を行うこととする。

また、激変緩和措置については、国の事業費納付金ガイドラインに示す3つの手法のうち、「都道府県繰入金」及び「特例基金の繰り入れ」により実施することとし、「納付金の算定方法の設定」(医療費水準反映係数α及び所得係数βの調整)による激変緩和措置は実施しない。

 

(3)激変緩和措置の対象

決算補填等目的の法定外一般会計繰入金、前年度繰上充用金(単年度分)、市町村基金取崩金(保険料充当分)及び前年度繰越金(保険料充当分)の廃止による一人当たり保険料額の増加分については、府が実施する激変緩和措置の対象とはならない。従って、これらの廃止に伴って発生した一人当たり保険料額の激変については、激変緩和措置期間中において、当該市町村の責任により必要に応じて実施するものとし、市町村は、その計画を定めた上で、府に提出するものとする。

 

(4)府・市町村の共同の激変緩和措置

前2号の方法の他、府と市町村が保険者間の協議を行い合意に至った場合は、共同の激変緩和措置を実施するものとする。

 

 

タイトル: 府全体で対応

 

 

 

H30

H31

H32

H33

H34

H35

H36

 

 

タイトル: 直線コネクタ

激変緩和対象

タイトル: 右矢印

 

 

 

 

 

 

 

タイトル: 市町村で対応

 

 

医療費伸び自然増

 

激変緩和

 

 

 

 

 

 

 

 

激変緩和の対象

(法定外一般会計繰入等)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトル: 左中かっこタイトル: 各市町村が設定した一人当たり保険料額

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保険料反映

 

 

 

 

 

各市町村が設定する

保険料決算額

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各市町村が本来集めるべき

一人当たり保険料額

 

標準保険料率算定に必要な

一人当たり保険料額

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★「国民健康保険広域化府・市町村共同計画」ってなんだ?

  2018125日に開催された「第13回大阪府市町村国保調整会議」資料によると、「大阪府国民健康保険運営方針」の下位計画として「共同計画」たたき台なるものが突然に提案されています。

http://www.pref.osaka.lg.jp/kokuho/iryouseido/h29_tyouseikaigi13.html

 大阪府によると、これは大阪府が提案したものではなく、調整会議メンバーの自治体から提案があったものということですが、その内容は、「運営方針にもとづき、大阪府の国民健康保険の根本的課題解決をめざして、府・市町村がともに国保保険者として一体となり進めるべき事項を記載するもの」としており、第5章「具体的施策」として、

(1)保険料・減免・激変緩和措置に関すること

  ・統一保険料への道筋の「見える化」

  ・各市町村において施策レベルの視点での目的・有効性・効率性等につき見直し

(2)インセンティブのしくみ

(3)広域化メリットを生かす大阪独自の取り組み

(4)基金の設置

  ・府・市町村が共同に取り組む事業にかかる財源調整のため、相互間協定の締結を前提に新たな基金を大阪府に設置することを視野に入れた取り組み

 ・・・等々と書かれており、看過できません。

★ブロックごとに国民健康保険学習交流会をします!

 2018年度に入り、国民健康保険がどうなったのか、これからどんな運動が地域で必要なのか、河南ブロックと北摂・豊能ブロックでは国保学習交流会を予定しています。どなたでもご参加できます!!

 

524()北摂・豊能ブロック国保学習交流会(1400-吹田さんくすほーる)

525()河南ブロック国保学習交流会(1400-美原狭山民商)

 

★大阪社保協2018年度「第1回幹事会」のご案内★

 ○日時  2018519日(土)14時〜16時半

 ○会場  大阪府保険医協会会議室

       http://osk-net.org/map.html

 ○議題  @2018年度自治体キャラバン行動について

      A大阪府統一国保問題について

      B介護保険に対する取り組みについて

      C大阪府民生活実態調査について

      Dその他