大阪社保協FAX通信 第1148号 2016.11.1
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10月11日国保事業費納付金・標準保険料率算定簡易システム都道府県に配布〜大阪府は11月末、1月末に試算発表の方向。
厚労省は10月11日、2018年度施行の国保都道府県単位化で導入される事業費納付金・標準保険料率を都道府県が算定するための簡易算定版システムを47都道府県に配布しました。
厚労省は、簡易算定版システムを用いた国保事業費納付金と標準保険料率の試算結果を国に提出するよう求めています。
その際、予行演習を兼ねて仮係数を用いた29年度予算推計による試算は11月末まで、国の予算編成後の確定係数を用いた試算は来年1月末までを提出期限としています。
大阪府は当初1月中に試算と言っていましたが、確認したところ、11月末、1月末とも試算し、公表する予定だということ、さらには厚労省も全国試算を公表することも検討しているとのことでした。
なお、今回の試算には2018年度からの1700億円の国費拡充分は含めずに試算されます。
大阪府市町村国民健康保険第5回広域化調整会議「考え方」に反論する〜大阪府統一国保は社会保障の相互扶助化、そして市町村自治の否定
大阪は2018年度国保都道府県単位化の動きの下で、さらに「統一化」にひた走っており、保険料率のみならず、減免制度、国保実務に至る全てのものを統一、共通基準化しようとしています。
この「統一化」の動きは今に始まったのではなく、2010年当時の橋下徹大阪府知事と首長たちによる「統一国保料をめざす」との合意に端を発します。背景には大阪都構想があり、もう一方で累積赤字の多い市町村が大阪府に対し保険者になることを求めたという経緯がありました。
大阪府は今年2月の大阪社保協との話合いの場でも「今回の統一化は大阪府が言い出したことではなく、もともと市町村から言い出したことだ」と発言していましたが、2010年当時の知事と首長との合意の当事者でもあった倉田薫池田市長が、今年度の大阪府市長会で2度発言し、「2010年当時と現在では状況が違う」、つまり2010年当時は大阪府が保険者となり実務も含めて国保に責任をもつという趣旨であったが今回は違うと否定しています。
★統一国保のなにが問題か
昨年5月以降、大阪府は市町村代表(大阪市、豊中市、泉佐野市、門真市、東大阪市、四條畷市、島本町、岬町、太子町)とともに大阪府・市町村国民健康保険広域化調整会議を5回開催、さらに毎月、財政運営検討ワーキングチームと事業運営検討ワーキングチームで具体的な検討をすすめています。
調整会議資料は大阪府ホームページにアップされており、その検討内容を誰でも見られるようになっています。
8月26日「第5回調整会議」資料「国民健康保険制度改革に向けた検討状況(考え方)」についてはぜひご一読いただきたいのですが、ここに「大阪府統一国保」の問題点が端的に表れており、以下、整理をします。
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/5211/00226035/11%20kangaekata.pdf
@国保を相互扶助制度に変質
国保は法第一条に「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」と明記された社会保障制度です。
しかし、「考え方」では「社会保険制度における相互扶助の精神」という言葉が幾度も書かれており、国保を相互扶助制度に変質させ「負担の公平性」という言葉で被保険者(加入者)同士の助け合いを強調しています。
A医療費水準1.2だから「差がない」という机上の空論
府内43市町村の医療費水準の格差が1.2倍で殆ど差がないから統一保険料率が可能だとしていますが、そもそも1.2=1では決してありません。さらには大阪市内、北摂・豊能地域と泉州、河南地域の医療水準、医療へのアクセスの差が歴然としてあることは周知の事実です。こうした違いを無視して「同じ大阪なのだから保険料も一緒だ」というのはあまりに乱暴です。
B法定外繰入による保険料抑制を敵視
多くの市町村が実施している一般会計法定外繰入による保険料抑制については、厚労省が「政策的判断で繰り入れるもの(当然、保険料抑制は政策的判断)については削減すべきものではない」としているにも関わらず、「法定外繰り入れに頼らないのが持続可能な国保制度」とし敵視しています。
そもそも法定外繰入は、1984年の国保法改正による国庫負担率削減による保険料高騰を抑制するために市町村が努力してきた政策です。
例えば大阪市では加入世帯の43%が世帯所得33万円以下、全体の約7割が低所得対策としての政令軽減適用(2015年度データ、大阪社保協調査)という実態のもとで、2016年度予算では一人当19241円が法定外繰り入れをしており、結果として1人約2万円の保険料抑制がされています。これはまさしく、大阪市が大阪市民を政策的に守っていることに他なりません。
そうした歴史を無視して、ただ、「負担の公平性の確保」だけで議論を進めるのは、説得力がなく、被保険者の実態を無視したものあると言わざるを得ません。
さらに、2015年度下半期からの高額薬剤による医療費の高騰は、これまでの予想を大きく超えるものであり、一人1万円の財政効果があると言われてきた3400億円の財政支援の効果がなくなる可能性もあり、今後一層の一般会計法定外繰り入れをしなければ保険料の高額平準化は避けられないのではないかと考えます。
C減免を統一、原資を保険料で賄う
大阪府内市町村は全国のどこよりも豊かな保険料減免制度を持っています。所得激減、低所得、ひとり親世帯、障害者、借金などの要件は、1961年皆保険制度実施以降50有余年の各地の住民運動とそれに応えてきた市町村の歴史の反映です。また、一部負担金減免制度では、東大阪市、八尾市、摂津市などは、全国にも冠たる制度内容であり、これもまた、地域での住民運動により勝ち取ってきた制度です。
しかし、「考え方」では、「共通基準」を統一化し、あろうことか減免の原資を「相互扶助の観点から」保険料で賄うとしています。現在はもちろん減免制度の原資は市町村一般会計の法定外繰り入れで行っており、減免のために保険料を使うなど、本末転倒です。
D統一の強要は法の逸脱行為
都道府県国民健康保険運営方針はあくまでも「技術的助言」であり絶対的義務ではないことが国のガイドラインに明記されています。さらに、法改正後も保険料賦課決定や減免制度決定などの権限は市町村にあります。これについて「考え方」では、「法定外繰入の継続等により独自に保険料や減免基準を決定すれば負担の公平を確保できなくなる」「広域化調整会議での検討や国保運営方針の趣旨がそこなわれる」などという意味不明の理屈に終始しています。
ここに決定的に欠落しているのは、被保険者(加入者)の保険料負担が限界を超えているという事実であり、法定外繰入や条例減免は、そうした被保険者負担を軽減し、いのちとくらしを守るためであるということです。そのために行使する権限を制限し「統一」を強要することは法の逸脱行為です。
■大阪府統一国保は市町村自治の否定
今回の都道府県単位化では市町村権限は今後も確保されます。
それは、同じ都道府県内といえども、市町村によって被保険者の状況(年齢、所得階層等)が違うことや医療水準や医療機関へのアクセス等に違いがあるためです。そうした違いを考慮せず、被保険者の相互扶助で負担を公平化するという「統一化」は、目の前にいる住民に責任をもつ地方自治の否定でしかありません。
大阪府は市町村に「統一化」を押し付けるのではなく、さらに国保を相互扶助に貶めることなく、法に謳われた社会保障制度としての国保はどうあるべきか、被保険者にとってくらしと命をも脅かす高すぎる国保料をいかに下げられるのかとの視点での議論を進めるべきです。
★大阪市・市町村第6回広域化調整会議は11月7日予定。12月、大阪府と大阪社保協との話し合いを申し入れ。
第6回調整会議は11月7日予定とのことです。大阪社保協は11月末の第1回試算結果もうけて、大阪府との話し合いを申し入れました。日程決定次第、お知らせいたします。
★☆★☆★☆★☆★☆★★☆★☆今後の予定★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
11月9日(木)大阪社保協事務局会議(14:00-16:00大阪社保協事務所)
11月14日(月)介護なんでも電話相談(10:00-17:00)
11月18日(金)介護保険対策委員会(19:00-大阪民医連)
11月19日(土)大阪社保協「第3回幹事会」(14:00-大阪府保険医協会)
11月20日(日)シンポジウム「地域医療構想と介護保険で『地域包括ケアシステム』は可能か」(13時30分-大阪民医連)
11月25日(金)11.25介護福祉総がかり学習決起集会(18:30-エルおおさか南館)
12月1日(木)大阪社保協事務局会議(14:00-大阪社保協事務所)
12月5日(月)滞納処分対策委員会(19:00-彩法律事務所)
12月6日(火)介護保険新総合事業大阪市・堺市対策会議(19:00-大阪民医連)
12月9日(金)差押え問題相談員養成講座(18:30-大阪府保険医協会)
12月15日(木)大阪社保協常任幹事会(18:00-国労会館)
12月20日(火)差押え問題ホットライン(10:00-20:00)
12月21日(水)泉州ブロック会議(14:00-岸和田市職員会館)