大阪社保協FAX通信   1145号 2016.9.9

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大阪市は事業所をつぶす気か! 総合事業 新規はほとんどが無資格ヘルパーしか利用できず〜97日 大阪市交渉

 97日、大阪社保協は、大阪市と新総合事業問題で交渉(協議)を行いました。大阪市は審議会(大阪市社会福祉審議会高齢者福祉専門分科会)で、訪問型サービスについて、「現行相当」と「緩和型」(無資格サービス)との振り分け基準案を示していました。今回の交渉はこれに絞ったものでした。大阪市側から佐藤高齢福祉課長代理ら2名、大阪社保協側から井上会長をはじめ市内ブロックや介護事業者ら約20名が参加しました。

 交渉は、大阪市が727日の審議会に示した訪問型サービスの「判定案」をめぐって行われました。

 

【参考】2016年7月27日大阪市社会福祉審議会高齢者福祉専門分科会で示された「現行相当型サービス利用判定基準」

@新総合事業移行前に既に介護予防訪問介護を利用している人は「現行相当サービス」が利用できる。

A新規利用者は

1)「認知症高齢者の日常生活自立度」ランクU(日常生活に支障のある認知症)以上

2)「障害高齢者の日常生活自立度」ランクB(ベッド生活中心で車椅子利用)以上

の人でないと「現行相当サービス」は利用対象とならない

 それ以外の人が「現行相当サービス」(訪問型)を利用するには、「大阪市サービス判定会議」(月1回、事務局 大阪市高齢福祉課)の判定を受けなければならない

 

☆現行相当サービスを利用できる人の見込み数

大阪市が、727日の大阪市社会福祉審議会高齢者福祉専門分科会で説明していた「現行相当サービスの対象となる方は4割程度」の根拠として、大阪市は「調査資料」を示しましたが、なんとたった100件の要支援認定者のデータで、しかもまったく「任意」に調査したというものでした。約6万人もの要支援認定者の中から「適当」に百人選んだというもので、きわめていい加減と言わざるを得ないものです。

 

【大阪市提出資料の概要】

調査件数 100

○認知症・コミュニケーション課題

・主治医意見書  認知症自立度 U以上またはM  20件

・認定調査票(視力、聴力、意思伝達、短期記憶、介護への抵抗、日常の意思決定)5件

・主治医意見書(認知症周辺症状、その他の精神神経症状)11件

○身体介護の必要性

・主治医意見書 障がい自立度B以上  8件

・認定調査票(歩行、移動、えん下、食事摂取、排尿、排便)4件

※一部重複該当あり

大阪市「調査資料」の各該当の件数を合計すると調査件数100に対する比率では「48%」になりますが、多くが重複しており、実数はまったく不明です。交渉の中で大阪市に「重複しない実際の割合」を質問しても「分からない」という返答でした。

★大阪社保協調査では、10%台

大阪社保協では8月に大阪市内の居宅介護支援事業所約1300カ所に対し、要支援の利用者の主治医意見書の自立度記載内容調査を依頼し、338事業所から8,052人のデータが集計されましたが(回収率26%)、その結果は

・認知症自立度U以上 16.0%

・障害自立度B以上   4.8% 

であり、大阪市調査を大きく下回るものでした。二つの自立度は重複する人もいることも考慮すれば大阪市の「振り分け基準」で現行相当サービス(ヘルパー)を利用できる人はせいぜい10数%に過ぎません。(アンケート用紙と結果は大阪社保協ホームページ「介護保険新総合事業に地域でどうたちむかうか」ページにアップします)

大阪市が、7月27日の社会福祉審議会高齢者福祉専門分科会で説明した「4割程度」という数字が全く根拠のないものであることが明らかになりました。

★根拠ない「4割程度」、開き直る大阪市の不誠実さ

ところが、交渉ではこの点について「振り分け基準は、調査をもとにしたものでない。」「振り分け基準は地域包括支援センターの意見を聞いて作った。」「調査はどのくらいになるか確認のためにしただけのもの」と開き直りました。

大阪社保協側は、「審議会に委員に4割と説明して了承を得ながらその根拠がないというのは問題だ」「振り分け基準をつくるのに実質的に予防プランの多くを担当しているケアマネジャーの意見をまったく聞いていない」と指摘しました。

「自立度Uまたは自立度B以上などという基準は到底認められない。総合事業のサービス利用の在り方についてはケアマネジャーと介護事業所の意見を聞いて検討しなおすべき」と迫りましたが、大阪市は「意見として承ります」としか返答しませんでした。

★パブコメ対象にも入れず聞く耳持たない大阪市の悪質さ

また、現在行っている大阪市総合事業実施要綱案等の意見募集(8月25日〜9月23日)で、この「振り分け案」についてまったく記載がなくパブリックコメントの対象になっていないことについて、大阪市は「サービスの類型等は要綱で定めるが、振り分け案は大阪市が委託している予防ケアマネジメントの内容の問題なのでパブリックコメントの対象としていない」とまったく意見を聞く姿勢を示しませんでした。

「介護予防ケア会議(仮称)」

大阪市の説明では、基本的な枠組みは7月21日の社会福祉審議会高齢者福祉専門分科会に示した通りですが「判定会議」ではなく、「介護予防ケア会議(仮称)」と変更し、専門的な知見を有する方々からの「意見を聞く場」として開催し、これを踏まえて地域包括支援センターが判断するとしました。

具体的には、その利用者の「アセスメント表」「地域包括支援センターの意見書「ケアマネジャーの理由書」「主治医意見書」「介護予防プラン」などを提出して意見を聞くというものです。

★新規利用者の大半はヘルパーが利用できない!

交渉の中で、大阪市は現在要支援でヘルパーを利用している人については「平成29年3月31日利用者に対する経過措置」として、その後もヘルパーは利用できることは明言しましたが、新規利用者については、「振り分け基準」に固執しました。

このままでは、新規利用者の大半は、ホームヘルパーによるサービスが利用できず、無資格ヘルパー(生活援助型・報酬25%ダウン)しか利用できなくなることになります。

★訪問介護事業者は報酬大幅ダウンに!!

また、訪問介護事業者からすれば、総合事業実施以後、新規の利用者を受け入れようとすれば、報酬25%ダウンの「生活援助型訪問サービス」に参入せざるを得ません。しかし、わずか12時間程度の「研修受講者」が新規利用者に対するサービスが担えない場合は、有資格者のヘルパーが訪問せざるを得ず、事業者は大幅な減収になり、ヘルパーの賃金も下がりかねません。

こうした点について、大阪社保協は「たった12時間の研修受講者が新規利用者の訪問を担当できると思うのか」「大阪市は事業所をつぶす気なのか」と追及しましたが、大阪市からはまともな返答はなく「参入いただいた事業所さんにやっていただきます」と答えるだけでした。

★交渉で明らかになったこと

○事業者について

・総合事業に関して「事業者説明会」9月25日、29日、30日に開催。

・訪問型、通所型サービスとも、現行相当を含めて「指定手続き」(簡易なもの)が必要

・報酬変更に関する説明会も来年2月〜3月に行いたいがホームページによる掲載になるかもわからない

○無資格者の「研修」について

・生活援助型訪問サービスの提供者の「研修」 本年12月〜来年3月 実施

・研修時間は12時間+アルファ 内容は大阪府のワーキンググループで決定するが生活援助サービスを提供するための基礎知識。研修実施事業者は現在入札中。大阪市内在住・勤務予定者が対象で受講費用は「無料」

・それに加えて必要になってくる研修は各事業所で実施

923日までのパブコメに意見を出そう!!

現在、「大阪市介護予防・日常生活支援総合事業実施要綱等の制定について」パブコメ募集がされています。サイトは以下です。大阪社保協参加団体、個人加盟のみなさん、923日までに数多くの意見を集中しましょう。 
http://www.city.osaka.lg.jp/templates/kisoku_boshu/fukushi/0000372979.html


泉州地域の自治体も事業所をつぶす気か!!「現行相当サービス」なのに報酬切り下げは不当すぎる!!

泉州地域では各自治体(高石市、和泉市、泉大津市、忠岡町、岸和田市、貝塚市、泉佐野市、田尻町、熊取町、泉南市、阪南市、岬町)が相談し、横並びで「現行サービス」(現在の事業所が現在と同じサービスを実施する)の報酬の実質切り下げを検討しています。

★報酬単価から出来高報酬(回数単価)に!!

例えば、岸和田市資料によると訪問介護サービスの場合、週一回程度(月4回まで)1266単位、週2回程度(月8回まで)1270単位、週2回超える程度(月12回まで)1285単位となっています。

これでは月4回訪問すると266単位×1064単位となり、現行1168単位ですから8.9%ダウンとなります。また通所介護でも同様に週1回あたり378単位となります。

 有資格者が要支援者へのサービスをこれまで通りサービスを提供しても報酬が下がるということになり、採算が合わなくなり、結果、経営が今まで以上に困難になることが予想されます。

 

 

92日泉州ブロック会議開催〜泉州全地域の訪問介護・通所介護事業所緊急調査を実施、地域ごと学習決起集会も開催

 社保協泉州ブロックは92日にブロック会議を開催し、全地域の訪問介護・通所介護事業所の緊急調査を実施することとしました。9月末までに集約し、10月中旬までには取りまとめ、地域での「地域学習決起集会」で報告するとともに、各市町村に対して「要望書」として提出。さらに大阪社保協ホームページに掲載、マスコミ等にも知らせることとします。

 既に泉佐野市での緊急学習決起集会も決定しました。(101918時半〜泉佐野市生涯学習センター多目的室)

★能勢町も「出来高報酬制」を検討

現在展開中の自治体キャラバン行動では、この「現行相当サービスは報酬も現行通りか」という確認をしていっています。現時点では、能勢町で「出来高報酬も検討している」との回答です。

自治体は必ず「出来高払いにすると利用者にとっては利用料が安くなってメリットがある」と理由づけしますが、それは欺瞞です。そもそも、昨年の報酬引き下げで事業所は苦境に立たされています。ある意味、包括報酬でなんとか帳尻をあわせて現在の事業をたもっているというのが実態です。そうした中で現行どおりのサービスを提供しているのに報酬が下がるとなると、要支援が多ければ多いほど運営が厳しくなり、要支援者の受け入れ制限をすることが危惧されます。

来週、大阪社保協ホームページ「介護保険新総合事業に地域でどう立ち向か」ページに泉州地域事業所緊急調査票をアップします。

各地域社保協は、出来るだけ早く市内の訪問介護・通所介護事業所に調査票を送付し、集約していただくよう、お願いします。

 

池田市は「基準緩和は住民にとっては非常に危険。当面、現行相当のみでいく」と明言。

一方、池田市は今年10月から、「現行相当サービス」のみでスタートします。もちろん報酬は現行通りです。96日の池田市キャラバンで、担当課長は「国の言っている基準緩和Aは市民にとって危険ではないかと思っており、現行相当サービスだけでスタートするが、基準緩和Aや住民主体Bをいつからやるかということも考えていない」と明言しました。

 

大東市「現行相当サービス」訪問介護12%、通所介護は11%のみ!!殆どの要支援は緩和型、住民ボランティアへ

大東市は今年4月から総合事業をスタートしましたが、既に340人が総合事業に移行しています。共産党議員団調査によると、訪問型234人中@現行相当28人(12%)A時間短縮・緩和型160人(68%)、B生活サポーター事業(有償ボランティア)46人(20%)、通所型188人中@現行相当21人(11%)A時間短縮緩和型147人(78%)B短期集中20人(10.1%)となっており、いずれも現行相当は1割程度という驚くべき実態となっています。

大東社保協と大東四條畷保健生協は現在実態を把握中であり、今後学習会と自治体交渉を行っていきたいとのことです。