大阪社保協FAX通信 第1078号 2014.9.11
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9月1日、中央社保協が厚生労働省と介護保険レクチャー実施。「総合事業訪問サービスA(緩和した基準サービス)を設けないということは制度的には可能」と回答。
9月1日、次期介護保険見直しについて、中央社保協が呼びかけ、厚生労働省によるレクチャーがありました。大阪社保協からは日下部雅喜氏(大阪社保協介護保険対策委員)が参加し、以下のように回答要旨をまとめていただきましたので掲載します。
厚生労働省介護保険制度改正問題に関するレクチャー 事前質問への回答概要
2014年9月1日 午前10時〜12時20分 参議院議員会館102会議室
厚生労働省老健局 振興課 山田係長、矢島氏 高齢者支援課 永安 係長
介護保険計画課 清水氏 他
1. 「一定以上所得者の利用者負担の見直し」について
(1)利用者負担を2割にする基準を「合計所得金額160万円以上」とすることについて、「平均的な年金額と比較して100万円収入が多い」「一般的には一定の預貯金等を保有すると考えられる」等を理由に負担可能と説明されている(7月28日全国介護保険担当課長会議資料140頁)。
@
無職夫婦高齢者世帯の収入と支出の状況(同資料141頁)から見ても、すべての収入階層の世帯は、「収入不足」であり、預貯金の取崩し等で補てんしないと生活できない状態であるが、このことをどう説明されるのか。
回答) 年金収入359万円の世帯が、消費支出257万円の水準の生活をする場合には、預貯金等の取り崩しをせずに、介護の費用を賄うことは可能である。介護保険の世帯ごとの上限額56万円を負担したとしても預貯金等の取り崩しをしないで負担することは可能と考えている。仮に年金収入359万円世帯がこの収入水準に対応した消費支出を行っている場合には、56万円の介護費用負担をするためには預貯金等の取り崩しを行う必要がある。しかし、収入の高い世帯は通常、教養娯楽その他の支出も多く、要介護状態になった場合は支出の内容に変化が生じ、介護等の自己負担も可能になると考えている。
今回、「世帯」等を勘案して配慮するという規定を検討している。個人の所得で160万円以上の人は2割負担となるが、年金収入以外の収入の場合、実質的な所得が200万円に満たないケースがある。また、夫婦の場合、配偶者の年金が低くて世帯としての負担能力の低いケースがある。 このため、
世帯の1被保険者の年金収入とその他の合計所得の合計が単身280万円、その他の世帯は、346万円未満の場合には1割負担に戻すことを検討している。(介護保険計画課8月27日事務連絡)
A
政令で基準を定めるにあたっての実態調査実施について、本年4月のレクチャー時には、「統計調査での高齢者の平均的消費支出との比較で基準収入は余裕があるという数字が出ている」との理由で、調査は予定していないと回答されたが、この点は今も変わりはないか。
回答)前回のレクチャーのときと変わりない。
2 補足給付(介護保険施設での部屋代・食事代の低所得者減額)の見直しについて
金融機関への預貯金の照会は「必要に応じ」としているがどの程度を想定しているか。市町村が必要なしと判断すればまったく実施しなくても差し支えないか
回答)金融機関等の預貯金照会は全件行うことは想定していない。サンプル調査、不正受給が疑われる場合など申請内容の真偽を確認したいような場合に行うことを想定している。また、サンプル調査の基準等を明らかにした場合、「抑止力」としての効果が失われることがあったり、保険者によって数が異なることもあるので、一律に基準を示すことは考えていない。各保険者において必要となる数を実施していただくことになると考えている。
3 特別養護老人ホームの重点化について
「市町村の意見書」の内容はどのような記載内容を想定しているのか
回答) 今回の法改正によって27年4月から、原則 要介護3以上で特別養護老人ホーム入所対象者は線引きさせていただくが、要介護1、2でも止むを得ない事情等がある場合は、市町村の関与の下に特例入所が認められることになった。ただ、措置でなく契約なので止むを得ない事情も含めて入所は施設の判断になる。公平性を確保するために市町村の関与が必要になる。7月の全国介護保険担当課長会議では、その関与の一例として市町村が意見書を提出する方法を示した。市町村の職員が施設の入所検討委員会に出席して意見を述べることも可である。意見書以外の連絡ツールに載せて行くことも可能と考えている。具体的な形をどうするかは、これから関係者の方と引き続き検討していくことにしているので、意見書の内容をどうするかは、詰まっていない。
市町村がしっかり判断すべき という意見もあるが、施設が判断するという作り付けなので 入所指針を改正して、実施していただくことになるが、制度的にはバラバラになる可能性があると思っている。
技術的助言として勘案事項は示すが、省令になるかガイドライン になるかはわからない。
4 総合事業
(1)サービスの類型について
@
サービス類型については市町村が基準を定めることになっているが、「緩和した基準によるサービス」については、指定事業者の中に混乱を招く恐れがあるとして、まったく設けずに「現行基準相当サービス」のみの指定とすることはできるか
回答)@現行相当サービスは、経過措置によるみなし指定はにより、総合事業実施後もこれまでと同じように実施できる。A訪問型サービスA、通所型サービスAは、事業者指定によることができるほか、委託事業としても実施できることを考えている。B訪問型サービスBとD訪問型サービスDは、住民団体の自主的活動を損なわない程度の一定の補助により実施することを想定している。
今回のサービスの類型として、示している類型は典型例であり、すべて設けなければいけないということではない。したがって、「A緩和した基準サービス」だけを設けない、ということは制度的には可能である。
ただし、予防給付の見直しは、多様なニーズに応えるサービスの創出や元気な高齢者の社会参加促進という支え手に回っていう目的もあるので、出来るだけ多様な類型を多く設定していただきたいと考えている。経過措置期間を活用しながら事業設計していただきたい。
A
訪問型サービスの「短時間サービス」については、現行の指定事業者による20分以下のサービスを想定しているのか
回答)短時間サービスの類型は、現行の指定事業者を担い手とするサービスを想定している。予防給付の訪問介護・通所介護は現行は月単位の包括報酬になっている。総合事業では同じように月単位も可能だが、一回いくらという報酬設定を市町村がしても構わないとガイドラインには書いた。短時間のサービスも可能ということ類型化でお示しした。これも必ずしもなければいけないということではない。
B
訪問型サービスA及びBの「一定の研修受講者」とあるが、どの程度の研修を想定しているのか
回答)訪問サービス B型は、生活上の困りごとを住民の支え合いの担い手になっていただくための研修である。ガイドラインの36ページに参考例を示している。サービスA型は、ガイドライン103ページに「一定の研修受講者」と記載しているが、多数質問が寄せられているので今後文書でお示しする予定。訪問サービスA型が、身体介護を基本的に含まず、調理や掃除、買物代行等の生活援助サービスを行うことになっているので、サービスを提供する上での基本的理解や高齢者の理解などの一定の研修を考えている。
イメージとしては、住民の支え合いの研修プラス旧訪問介護員研修3級課程(50時間程度)を目安とする研修を各事業者が職員向け研修として行っていただくことを検討している。
C訪問型サービスDについて
・「介護予防・生活支援サービスと一体的に行われる移動支援や移送前後の生活支援」とされているが、移送支援のみ単独で利用することは想定しているか
・
基準等は「訪問型サービスBに準じる」とされているが、「住民主体サービス」で車両の運行なども含めたサービスを想定しているのか
回答) 車両の運行、移送本体は現行の福祉有償運送を使っていただき、移送前後の支援を想定している。例えばデイサービスについては送迎がセットだが、今後の多様なサービスの「通いの場」は基本的には歩ける範囲での通いを想定している。しかし、中には歩くことを支援する必要がある方もいるので、そうした方の送迎の移動支援や、現行の通院等乗降介助を単品で利用したいというニーズをこちらで対応するというイメージである。
D通所型サービスA及びBについては、送迎についてはどのように位置付けているか
回答)歩いて通える地域での実施を想定しているが、送迎が必要な方はサービスDを合わせて活用していただくになる。
(2)ケアマネジメントについて
@
介護予防ケアマネジメントについて、ケアマネジメントB(簡略化型)の単価について、具体的にどのような額を想定しているか
回答)ケアメネジメントもサービスの多様化の濃淡に応じてA〜Cに分類した(ガイドライン66頁)。現行相当サービスは現行と同じような「ケアマネジメントA」。サービスB型利用(住民主体の支援)につなげていく場合は、初回のみでモニタリングは行わない「ケアマネジメントC」で対応する。ある程度自己管理できる方を想定している。
サービス A型またはサービスB型を利用して、ケアマネジメントCまで簡素化できない多様なサービスについては、一定簡素化した「ケアマネジメントB」で対応と考えている。
総合事業の対象者は、現行の要支援者であるので、すべて地域包括支援センターがケアマネジメントを担当する。一定の範囲で居宅介護支援事業者に委託できるが、できるだけ、予防促進のため、地域包括支援センターが関与することが望ましいと考えている。
質問については、「ケアマネジメントB」は、ガイドライン72頁記載のとおり基本報酬からサービス担当者会議分とモニタリング分を差し引くとあるが、それが具体的にいくらかは、7月28日の課長会議では、適宜市町村が設定していただくという考え方をお示しした。
A訪問型サービス等内容ごとに対応するケアマネジメントは下表のようなものと考えてよいか
訪問型サービスや通所型サービスの内容ごとの実施方法
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類型 |
提供主体等 |
サービス基準 |
サービス提供者 |
ケアマネジメント |
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現行相当サービス |
@現行の介護予防訪問介護等に相当するサービス |
指定事業者 |
現行基準と同様 |
有資格者等の雇用者労働者 |
ケアマネジメントA (原則的な介護予防マネジメントプロセス) アセスメント、プラン原案作成、担当者会議、説明同意、交付、モニタリング(給付管理) |
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訪問型・通所型サービスA |
A緩和した基準による生活支援、ミニデイサービス |
指定事業者 /委託 |
@無資格者可 A設備基準緩和 B個別サービス計画なしも可 C衛生・守秘・事故対応など |
主に雇用労働者 通所型は+ボランティア |
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ケアマネジメントB (簡略化した介護予防マネジメントプロセス) アセスメント、プラン原案作成、説明同意、交付、モニタリング(適宜) |
||||||
訪問型・通所型サービスB |
Bボランティアなどによる生活支援、通いの場 |
住民団体補助 |
@人員基準なし A設備基準なし B個別サービス計画なし C衛生・守秘・事故対応など |
ボランティア主体 |
ケアマネジメントC (初回のみの介護予防ケアマネジメントプロセス) アセスメント・結果案作成・説明同意、サービス提供者へ送付 ※モニタリングはなし |
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訪問型・通所型サービスC |
C保健師やリハビリテーション専門職等が行う短期集中予防サービス(従来の2次予防事業に相当) |
直接実施 /委託 |
内容に応じた独自の基準 |
保健医療の専門職(市町村) |
ケアマネジメントA (原則的な介護予防マネジメントプロセス) アセスメント、プラン原案作成、担当者会議、説明同意、交付、モニタリング |
回答) 概ねこの整理で構わないと考える。補足をさせていただければ、@訪問型・通所型サービスAは「無資格者可」
ではあるが、一定の研修を受けていただくということ AケアマネジメントBの欄はサービス担当者会議も適宜省略して構わないということ BケアマネジメントCは、モニタリングは基本的にないが、状態の変化を見逃さない仕組みを一緒にやっていただきたい。突然の利用中止で連絡が取れないなどの場合は地域包括支援センターに連絡をとる態勢を作っていただきたい。そうした取り組みとセットでケアマネジメントCをやっていただくということ である。 |
(3)利用手続きについて
市町村窓口において、非専門職が「基本チェックリスト」を実施し、「判断」「振り分け」を行うことは不適切として、市町村窓口で基本チェックリストを一切取り扱わず、現行どおり要介護認定受付を行い、基本チェックリストは地域包括支援センターで一元的に行うことは差し支えないか
回答)ガイドライン55頁に記載しているとおり。
チェックリスト を 市町村でやらなくていいかという質問だが、市町村窓口でちょっとした困りごとをの相談の場合は、
その場でチェックリストで対応可能であるし、総合事業を利用しながら要介護認定申請も可能である。厚労省としては、窓口でチェックリストやらないというのはサービス利用者の利便を損なうので市町村窓口でもやっていただきたいと思う。
(4)事業単価について
@
現行基準相当サービスの事業支給費単価について、市町村が独自に現行より高い単価を設定することは法的に制約があるか
回答)今後、省令・告示に現行相当サービスについては現行予防給付の単価とするように位置付ける予定であるので、法令に抵触するという関係になると考えている。
A
住民主体サービスについて、「運営費のための事業経費を補助」とあるが、従事者(サービス提供者)の人件費等は含むと想定しているか
回答)団体の自主的活動を損なわない程度の補助を考えている。ボランティアの人件費は団体の年会費や一回あたりの利用料で賄っていただく。間接的な経費(直接ボランティアの経費でなく調整役の人件費等)を補助することを想定している。
(5)利用者負担について
@
現行基準相当サービスの利用者負担について、市町村の判断により、1割負担とせず、負担割合を引き下げて設定することは法的に制約があるか
回答)今後、省令・告示に現行相当サービスについては「1割負担、一定の所得者は2割負担」とするように位置付ける予定であるので、法令に抵触するという関係になると考えている。
A
住民主体サービスの利用者負担について、有償ボランティアによるサービス利用の場合も「有償額」の1割負担とし、9割を市町村が負担する方式を行っても差支えはないか
回答)基本的にサービスB型については、団体の年会費や一回あたりの利用者負担を基本としているので、一律に1割負担とすることは考えていない。1割負担とするサービスは、現行基準相当サービスとA型サービスのみを想定している。
(6)住民主体サービス整備について
生活支援サービスコーディネーターの処遇(身分、所属、資格、労働条件、職務等)について、厚労省が現時点で想定する典型例を示されたい
回答)ガイドライン43ページに代表例を示している。 地域づくりは千差万別なので、一律の当てはめは考えていない。今後も参考となる事例をフォローして行きたい。例えば、地域包括支援センターが活躍している例、行政と住民が協働しながら進めている事例、社協が担っている事例、地域の有力なNPOなどが活躍している事例など、こういったパターンがあるのではないかということで、示している。
(7)上限管理について
市町村の総合事業が「上限」を超え、厚労省が「認める」特殊事情にも該当しないとされた場合の財政負担は最終的にどうなるのか。また、その場合、何らかの制裁措置はあるのか
回答)地域支援事業は、市町村の実情に応じた取り組み可能であるが、現行の上限額は介護給付費見込み額の3%、さらに事業ごとで「介護予防事業」、「包括的支援事業・任意事業」それぞれ給付見込み額の2%を上限とされている。現行でも上限を超えた場合は一般会計か1号被保険者保険料を財源として事業を行うとしている。
今後、どうなるかという質問だが、上限額は122頁に計算式を示している。これを超えた場合、一律に、市町村の持ち出しか、といえば、個別の事情で対応する。事前の判断で上限を超える場合は、一定の事情を勘案して認める。事後についても一定の事情を勘案して認める。とくに施行時は、少し緩やかな範囲で不測の事態に対応する。
5 介護保険料
新法142条の規定により、低所得者保険料軽減の財源を公費(一般財源)で補てんする仕組みが新たに導入されたが、これを超える繰り入れを市町村が行うことについて法的な制約はあるか。また制裁措置等は想定しているか
回答) 今回の制度改正において、公費を投入して低所得者の保険料軽減を行うことになり、保険料軽減に要する費用を特別会計に繰り入れることにはなる。これは、消費税引き上げによる財源の確保を踏まえ、国、都道府県、市町村がそれぞれ負担を行うとするものである。このため、制度化された以外の保険料減免を行う場合は、被保険者間の公平性の確保、健全な介護保険財政の運営等、財政規律の保持の観点から、従前から申し上げているとおり、保険料減免分に対する一般財源の投入については、適当ではないと考えるため、引き続き、いわゆる「3原則」の遵守に関し、各保険者において適切に対応していただきたいと考えている。ただし、ご質問の「法的な制約」や「制裁措置」があるものではない。
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