大阪社保協FAX通信 第1021号 2012.12.4
なぜ大阪市は法律を守らないのか〜「認定事務センター」混乱問題にみる大阪市の無責任を徹底的に追求する!!
大阪市はこの2月から、介護保険の「要介護認定」の申請→認定調査→一次判定→二次判定(審査会) →決定通知発送までの一連の業務をすべて「日本ビジネスデータプロセシングセンター」という株式会社に委託しました。
この「日本ビジネスデータプロセシングセンター」は、神戸市の認定業務を平成15年度から委託をうけてやっており、ノウハウなどはすでに持っているはずなのですが、「大阪市認定事務センター」では申請から決定までが大幅に遅れていることが大問題となっています。
大阪社保協では大阪市内キャラバンの中でも各区に参加するケアマネジャー達からこの問題が指摘されたため、キャラバン終了後早速、大阪市内全居宅介護支援事業所(983ヶ所)に直近の8月9月での「実態調査アンケート」を送ったところ、実に約4割にあたる375ヶ所から事業所が返送されてきました。
その結果の概要は以下です。
大阪市2012年8月9月申請から決定までの日数調査(大阪社保協調査 2012.10-11)
大阪市 8−9月新規申請数 |
申請から決定まで |
8−9月更新申請数 |
申請から決定まで |
これまでより時間がかかっているのは |
|||||||||||
30日以内 |
30−45日 |
45−60日 |
60日以上 |
最長日数 |
30日以内 |
30−45日 |
45−60日 |
60日以上 |
最長日数 |
調査日程調整まで |
訪問調査まで |
主治医意見書 |
その他 |
||
653 |
55 |
288 |
264 |
54 |
|
2,406 |
162 |
952 |
1,094 |
196 |
|
262 |
140 |
97 |
|
|
8% |
44% |
40% |
8% |
|
|
7% |
40% |
45% |
8% |
|
70% |
37% |
26% |
|
★申請から決定まで「30日以内」は法定義務。しかし、調査では1割もなし
介護保険では保険証があってもサービス利用はできません。要介護認定が介護保険サービス利用の入り口となります。そのために、「30日以内」に決定するというのは「法定義務」、つまり必ずしなければならないことです。その法的根拠は以下の「介護保険法27条の11.12」です。
【介護保険法 第27条-11と12】 11.第一項の申請に対する処分は、当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない。ただし、当該申請に係る被保険者の心身の状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、当該申請のあった日から三十日以内に、当該被保険者に対し、当該申請に対する処分をするためになお要する期間(次項において「処理見込期間」という。)及びその理由を通知し、これを延期することができる。 12. 第一項の申請をした日から三十日以内に当該申請に対する処分がされないとき、若しくは前項ただし書の通知がないとき、又は処理見込期間が経過した日までに当該申請に対する処分がされないときは、当該申請に係る被保険者は、市町村が当該申請を却下したものとみなすことができる。 |
しかし、大阪社保協調査では、現在もなお、法定義務どおり30日以内の決定は1割もありません。
★11月5日、要望書を提出、さらに懇談。
11月5日にはこの実態調査をもとに「要望書」を提出し、懇談もじっししました。
その内容は「Fax通信1020号」に掲載しています。
http://www.osaka-syahokyo.com/fax/1020.htm
★11月30日、「要望書」に対する回答示される〜大阪市は大阪社保協から
の指摘がなければ調査もせず対策も講じなかったのではないか。
11月30日、大阪社保協からの要望書に対する回答を得てさらに懇談しました。(「回答書」別掲)
回答および懇談を通して最大の問題点は、大阪市として「30日以内」という法定義務を守らないといけないという意識が全く希薄だということです。
そして、原因究明と分析が非常に甘いと指摘せざるを得ません。
回答では原因は「開設当初は、委託事業者の不慣れやシステムトラブルなどによって、事務処理に遅れが生じていました」としていますが、では半年以上たった今もなぜ「30日以内」が1割程度なのか。
そして、なぜ同じ業者がやっている神戸市に行き、アドバイスをもらわないのでしようか。
新たにやることは「電話を増やす」「翌朝10時郵便にする」・・・・くらいしかなく、それで大幅な縮小ができるのかははなはだ疑問です。
★利用者・高齢者・市民になぜ謝罪と説明をしないのか。
そして、回答の中で許せないことがありました。
大阪社保協は、「要望書」の中でこの半年以上の混乱への謝罪と今後の方策について事業者と利用者に対して説明せよと要求しました。
事業者に対しての説明会については、全事業所説明会の開催を要求しましたが、これについては各区毎の事業者連絡会に足を運び、そこで説明すると回答しました。
しかし、利用者に対しては何もするつもりはないというのが回答です。謝罪文も送らないし、広報にも載せないと言い切ったことに対しては、大変強い怒りを感じました。「認定が遅れる」ということで利用者・家族にどれほどの不安と迷惑と損害を与えてたのかということをまったく理解していないことに強い憤りを感じています。
★大阪市が「30日の法定義務」も果たさないのに事業者に「旨の届けを法律どおりに守れ」とはおかしいではないか!!
さらに許せないことがあります。
介護保険では、要支援は地域包括支援センター、要介護は居宅介護支援事業所がケアプランを作るのですが、このケアプランをどこがつくるかという届を提出しなければなりません。これを「旨(むね)の届」といいますが、この届を出さすにサービスを利用した場合の利用料は、要介護者だと償還払い、要支援者だと全額自己負担となってしまいます。
大阪市はこの「届」のさかのぼりを1か月しか認めません。
大阪市が30日以内で認定の決定が出してるのならこちらも何も言いませんが、決定が30日で出来ないのに、事業者には「30日」を要求するというのはどう考えても道理がとおりません。
介護保険の出発点である要介護認定で大混乱させ、法律通りにできていない大阪市に「法律守れ」などと一方的に事業者に押し付けることなど愚の骨頂です。自らの不手際でことを起こしているのだから、「30日以内に出せない決定」に対しては「特別の措置」を図るべきです。
★さらに以下の内容で「再要請書」を提出し大阪市を追及します
〔再要請書〕
@すでに同業者で実施している神戸市にアドバイスを求めること。
A各区ごとの事業者連絡会での謝罪・説明をいつまでに行うのかスケジュールを明らかにすること。
B利用者・家族・市民向けの謝罪と説明を必ず「広報」に掲載すること。
C申請は郵送のみとせず、窓口受け取りも可能とすること。
D審査会資料の事前送付のための日数短縮をすること。
E月遅れの「旨」の届出についても遡って受け付けること。
F以上を踏まえ、「改善報告書」を作成し大阪社保協に示すこと。
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認定事務センター問題に関する要望書に対する大阪市の回答
(2012.11.30)
@認定事務センターの人員体制を毎月ごとの人数を具体的に示すこと。
2月スタートなので、2ヶ月間の研修を経てとネット上での求人情報には書かれているので、2011年12月1日、2012年1月1日、2月1日、3月1日・・・とすること。
(回答)
認定事務センターの委託事業者の従事者数は、次のとおりです。
※ 障害程度区分認定業務従事者も含みます。
1月 62人研修
2月 97人研修
3月1日:102人
4月1日:112人
5月1日:124人
6月1日:135人
7月1日:135人
8月1日:138人
9月1日:119人
10月1日:128人
11月1日:127人
担当 福祉局 高齢者施策部 介護保険課 TEL:06-6972-2873
A認定事務センターで行う業務範囲が具体的にどのような流れとなりどこにどれだけの人員が配置されているのか具体的に示すこと。
(回答)
・認定事務センターの要介護認定に係る主な業務としましては、認定申請に係る郵送受付、認定調査及び主治医意見書作成の依頼・回収、介護認定審査会資料の作成送付等の事務局補助、認定結果通知書類の発送となっています。
・業務を行うにあたり、受託事業者において電話班、事務班、端末班、審査会班など業務ごとに担当者を決め、処理件数等の必要に応じてシフトを組み人員配置されています。
・平成24年11月1日現在の人員配置状況としては、127人(総括責任者1人、電話班12人、事務班30人、端末OCR班27人、審査会班34人、有資格者班10人、障がい担当13人)と報告を受けています。
担当 福祉局 高齢者施策部 介護保険課 TEL:06-6972-2873
B厚生労働省に毎月報告すべき申請から決定までの日時をなぜ今年度は一度も報告していないのか。2月以降の平均日数を月ごとに明らかにすること。
(回答)
・24年のデータが送信されていないのは、本市の認定事務センターへの移行に伴い導入されている審査会支援システムにおいて、データ抽出方法の変更等があり、また開設等にともなう業務の中でデータ送信の対応を漏らしていたものです。
・現在は、平成24年10月分までのデータを国に送信したところであり、今後は事務が遅延することのないよう努めてまいりたいと考えます。
・認定事務センター開設後の平成24年2月〜8月の認定申請から結果がでるまでの期間は、次のとおりです。
平成24年2月:35.2日、平成24年3月:41.7日、平成24年4月:44.4日、
平成24年5月:41.8日、平成24年6月:41.3日、平成24年7月:43.1日
平成24年8月:42.7日
(平成24年11月2日現在のデータ)
・また、平成24年9月の認定申請から結果が出るまでの期間は次のとおりです。
平成24年9月39.2日(平成24年11月20日現在のデータ)
担当 福祉局 高齢者施策部 介護保険課 TEL:06-6972-2873
Cその上で、このような遅滞状態となっている原因を具体的に説明すること。
(回答)
・開設当初は、委託事業者の不慣れやシステムトラブルなどによって、事務処理に遅れが生じていました。
・月毎、行程ごとの所要日数は次のとおりです。
[4月] [8月] [9月]
○受付 → 調査・意見書依頼 4.4日 3.4日 3.0日
○調査・意見書依頼 → 一次判定 26.0日 21.8日 20.8日
○一次判定 → 二次判定 14.0日 17.5日 15.4日
○合 計 44.4日 42.7日 39.2日
※4月・8月は24年11月2日現在のデータ
※9月は24年11月20日現在のデータ
・現状においては、事務処理の更なる迅速化と、調査票と主治医意見書の早期の回収が課題であると考えています。
担当 福祉局 高齢者施策部 介護保険課 TEL:06-6972-2873
D今後、どのような対策を講じるのか説明すること。
(回答)
・認定事務センターにおいては、システム端末の増設や対応要員の増員などを行い、改善を図ってきたところであり、引き続き、さらに作業工程の見直し等を進めることにより迅速な処理を図ることができるよう努めてまいります。
・主治医意見書をできるだけ早期に回収するための方策として、主治医意見書については、被保険者が医療機関へ長期間受診していないケースについて、ご本人や代行申請事業者へ速やかに受診いただくよう勧奨するとともに、全般的に提出に時間がかかっている医療機関に対しては、改めて協力・理解をいただけるよう個別に対応していきます。
・認定調査票については、書類のやりとりを少しでも速くできるよう、差出日の翌朝 10時に配達する「よく朝10時郵便」サービスを活用していきます。
担当 福祉局 高齢者施策部 介護保険課 TEL:06-6972-2873
ECとDについては、大阪市として全事業者を集めて説明会を年内に開催し謝罪も含め行なうこと。
(回答)
・認定事務センターにおいては、開設当初の委託事業者の不慣れやシステムトラブルなどもあり、被保険者や事業者に対し、事務の遅れをきたしことは申し訳ないことであると考えています。
・介護保険関係事業者の皆様に対しては、各区居宅介護支援事業所連絡会等において、状況等につきまして情報提供してまいりたいと考えております。
・また、個別に問合せのある事業者等に対しましては、個々の事情を説明しつつ、きめ細かく丁寧な対応に努めてまいります。
担当 福祉局 高齢者施策部 介護保険課 TEL:06-6972-2873
FCとDについては、市民向けには記者会見を行い説明と謝罪をし、利用者に対しては郵送で同様に説明と謝罪文を送ること。
(回答)
・認定事務センターにおいては、開設当初の委託事業者の不慣れやシステムトラブルなどもあり、被保険者や事業者に対し、事務の遅れをきたしことは申し訳ないことであると考えています。
・しかしながら、要介護認定をするまでに長い時間を要している事例には、認定調査の実施や主治医意見書の回収に時間を要したものなど様々な事情があることから、個々の利用者の事情を特定し謝罪文を送付することは困難な状況です。
・今後、認定申請に係る被保険者やご家族、事業者等からの問合せ等に対しましては、個々の事情を説明しつつ、よりきめ細かく丁寧な対応に努めてまいります。
担当 福祉局 高齢者施策部 介護保険課 TEL:06-6972-2873
申請受理日から二次判定までの所要日数割合
(2012.12.4回答)
|
30日以内割合 |
30日超過割合 |
平成24年4月 |
4.7% |
95.3% |
平成24年5月 |
5.7% |
94.3% |
平成24年6月 |
8.4% |
91.6% |
平成24年7月 |
7.7% |
92.3% |
平成24年8月 |
4.9% |
95.1% |
平成24年9月 |
10.3% |
89.7% |
※平成24年4〜8月は11月2日現在、平成24年9月は11月20日現在の集計