大阪社保協FAX通信 第1018号 2012.9.18
「介護保険料引き下げのための一般会計繰入を禁じる法令上の規定はないし罰則もない」〜9月14日厚生労働省レクで言明。
大阪社保協では、9月14日の午前中、介護保険料問題について厚生労働省からレクチャーを受けました。対応したのは、厚生労働省老健局介護保険計画課企画法令係長高橋彰氏です。要旨を以下記載します。
1. 一般会計繰り入れ問題について
@各市町村の介護保険特別会計に一般会計から法定分以外の繰り入れを禁じる法令上の根拠があるのか。あればお示しいただきたい。 |
法124条で 市町村は一般会計分は12.5%と規定されている。他3条、施行令で特別会計が定められている。その他介護保険の趣旨は法1条〜5条に規定している。
問)制度の趣旨から「慎んでください」という説明はあったが、こちらが聞きたいのは、法定分以上の繰り入れ禁じる法令上の根拠はあるのか、ということである。この点はどうか。
答)禁じる法令上の規定はない。12.5%は一般会計から負担してください、保険料は特別会計でやってください、その間をとくに融通するようなことは法律では予定していない。ただ、それをやったからと言ってそれを禁じる規定はあるか、というとそれはない、ということである。なお、法令上保険料の規定は補助金、交付金等の収入を差し引いた必要額となっており、一般会計は12.5%となっているので、法律上、そういった繰り入れは予定されていない。したがって禁じる規定がない以上、罰則・制裁はない。自治体おいては一般会計繰り入れが常態化すると先ほど申し上げた問題が生じることは十分ご認識ください、ということである。
A一般会計からの繰り入れ問題についての、介護保険制度実施準備期を含め、これまで自治体(都道府県・市町村)に対する周知はどのように行われたのか、その時期及び周知方法についてお示しいただきたい(通知、事務連絡、会議資料及び口頭説明等)。 |
平成12年11月30日に「平成12年11月24日付け事務連絡(保険料の単独減免を行ったことにより生じた保険料の収納不足額に対する財政安定化基金の運営について)の考え方について」で書かせていただいている。これはその後更新せず今も内容は変わっていない。その後も国と県等との意見交換の場その他でその趣旨は申し上げている。
問)平成12年11月30日の事務連絡以外はないのか。
答)3原則というとこの事務連絡である。
問)これもあくまで、「単独減免3原則」なのか
答)内容は単独減免にかかわるものである
Bその周知の法的性格について明らかにされたい。 |
法令で書かれていることを改めて説明したものである。
問)周知の法的性格は技術的助言か
答)そのとおり。地方自治法上の技術的助言になる。
C介護保険特別会計への一般会計からの繰入問題について、これまでの国会における答弁内容について示していただきたい。 |
平成12年頃制度ができた当時に、森総理から「介護保険は国民みんなで支え合いましょうという趣旨。減免分を一般財源から投入するということ制度の趣旨と必ずしも合致しません。保険料負担の意義や必要について自治体に引き続き周知し、理解を図っていく」との答弁をしている。当時の津島厚生労働大臣から「趣旨からいって適当ではないし、減免分を一般財源から投入することは慎まなければならないと思っている」という答弁している。
平成14年3月頃、共産党の井上議員からの質問をいただき、「法律上の義務かどうか」という質問については、当時の局長から「法律上の義務ではございません」と答弁し、大臣からは「一般財源からの投入は慎んでいただきたい」という趣旨の答弁をしている。記録ではこれが最後であるが、その後も考え方は変わっていない。
D全国の市町村の中で、法定分を超えて一般会計からの繰り入れを行っている自治体数及びその金額等についてお示しいただきたい。 |
自治体数は全国で12自治体が繰り入れていると聞いている。金額は把握していない。これは保険料単独減免に伴うものである。
問)単独減免以外に一般会計繰り入れはあるのか。
答)それは把握していない
問)過去に厚労省の方で、保険料水準を低くしておいて不足した分をあとから繰り入れる方法を言った人があるが、そういうやり方をやっているところはないのか
答)それは理屈上、あるかもしれない。保険料を低くしておいて足りなくなった分を基金でなく一般会計から補うことは、やっているかもわからないが把握していない。
E市町村が独自の判断として、一般会計から保険料軽減のための繰り入れを行った場合に、厚生労働省としてどのような対処をするのか。制裁措置など不利益を伴う措置を講じることはあるのか。 |
国として制裁は予定していない。ただし、国としては一般会計からの繰り入れは常態化すると財政を圧迫するし、他の福祉施策にも支障を来す可能性もあることは十分認識していただきたいことは折に触れ申し上げている。
2. 保険料単独減免3原則について
@厚生労働省が会議等で説明しているいわゆる「3原則」について、それぞれの法令上の根拠を明らかにされたい。 |
全額免除は、介護保険はみんなで支えるという法1条〜5条の制度の趣旨から適切でないと言える。一律減免は、負担能力が本当にないのかどうか見極めないと不公平であり、制度の趣旨から適切でないと言えるものである。
A「3原則」を守らず単独減免を行っている自治体に対し、厚生労働省としてどのような対処をしているのか。制裁措置など不利益を伴う措置を講じたことはあるのか。 |
国として制裁措置はない。それを理由に補助金が止まるというようなことはあるかも・・・
3. 大阪府福祉部長通知(平成23年12月16日付け高介第2064号)について
@「3原則」について、これまで厚生労働省は、「単独減免」に関する原則として説明され、各事業計画の保険料設定に関する原則としては説明していない。今回、大阪府の電話照会に対し、どのように回答したのか。また、単独減免に関する原則から介護保険料設定に関する原則へと「格上げ」したのはいつからか。 |
格上げでなく、言い方が違うだけで同じ話をしているという認識。例えば、保険料を500円減免するために一般会計から入れるということと、保険料を500円下げるために入れることと同じだということをお話している。電話照会への回答については厳密には確認できないが、基本的にはこのように回答していると思う。
問)大阪府の通知で引用している「単独減免」も「一般会計から繰り入れて保険料を下げる」のも同じというのは、次元が違うのではないか
答)減免という言葉をつかうかどうかの違いではないか
問)一般会計繰り入れはするべきでない ということは同じかもしれないが、個別の減免と保険料設定の問題が同じというのは乱暴にではないか。
答)3原則のみにもとめるのは厳密ではないかも知れない、しかし、法の趣旨の源流に遡っていけば同じ「不適切です」という回答にはなると思う。3原則だけに根拠を求めるのは論理の飛躍があるかも知れない。
(部長通知というのはすごいなと思う。このメモは見せられていないですし…)
問)各期の保険料設定にあたって、一般会計繰り入れを行うべきでないという通知は出されていないのではないか
答)通知等であるかどうかというのは別にして、保険料設定の基準は政令(施行令38条3項)等で定められていて、当然その算定の基準では一般会計から入れるということになっていない。
問)算定基準では「その他収入」があるのではないか。国保ではこれを根拠に繰り入れている。
答)「その他収入」ある。ギチギチ言うと…
問)保険料設定にあたっての通知・事務連絡では、あえて「一般会計から繰り入れないように」というような記載がないではないか
答)それはそうかもしれない
A厚生労働省は、大阪府に対し「公費半分、保険料半分で設計された介護保険制度では、制度的に決まっているもの以外に一般財源を投入することについて国民の理解を得られにくい」と回答したとされている。国自身が第4期介護保険料上昇を抑制するために一般財源を投入して行った「介護従事者処遇改善臨時特例交付金」についてはどのように整合するのか。明確な説明をされたい。 |
第4期では、処遇改善のため21年度の改定で3%上げた政策誘導的な措置による保険料上昇の激変緩和のために一般会計から入れた。保険料の自然増に対し一般会計から繰り入れることとは別のものと考えている。
問)第4期は処遇改善の3%上昇という政策誘導によるものと説明したが、第5期においても、処遇改善交付金が介護報酬化され2%上がったという経過があり、同じ政策誘導があるではないか。自治体が激変緩和のために一般会計繰り入れしても同じ理屈になるのではないか。国は一体改革で公費5割負担に加えて一般会計から1300億出そうとしている。国はやってもいいが自治体はやってはいけないということか。
答)本来、自治体の介護保険は補助を受けながらも個々独立して運営されており、その集合体として国があり、国策で処遇改善で3%報酬を上げるとか、消費税に対応するため低所得者対策が必要とかいうときに各保険者を混乱させないように国が公費を投入するものである。個々の保険者が保険料の自然増に対応するため一般会計から入れるのとは次元が違うと思う。
4. 都道府県財政安定化基金の取崩しについて
@財政安定化基金取り崩しにより、国庫納納付される予定額(約545億円)の具体的な使途について明らかにされたい。 |
法律では、国の分については、介護事業関係に使うよう努力義務があり、国に関しては、財務省の方と調整している。どうなるかは今のところ分からないが、厚生労働省としては法に規定もあるので介護事業に使いたいと考えている。今後の予算要求の中で結論の出る話であり、今のところは結論は出ていない。
問)基金取崩しは法律では、平成24年度に限るとなっているが、それを使うのも24年度ではないのか。
答)当然、今年度の補正予算だ。法律で介護保険に関する事業に使うよう努力義務があるので、厚労省としてはその立場であたる。ただ、会計上は、雑入であり金に色はついていないので、努力した結果どうなるかは分からない。
A都道府県の一般会計に返還される額についての使途について明らかにされたい。 |
最終的には都道府県が判断いただくことであるが、法律では、都道府県分も介護事業に使うよう努力義務があり、その範囲の中で適切に判断していただけると考えている。
問)例えば大阪府では、基金取崩しにより府に入る分はごく一部を地域包括ケア充実の事業に使うが、残りは大阪府の一般会計負担分12.5%(施設17.5%)の財源すると知事は言っている。これで介護保険事業に使ったことになるのか。
答)おっしゃりたいことはよくわかるが、都道府県知事の判断になる。法律では努力義務なので、それぞれの財政事情でどうなるかは分からない。
5. 低所得者の介護保険料軽減について
「社会保障・税一体改革大綱」(2012年2月17日閣議決定)において、「公費を投入することにより、65 歳以上の加入者の保険料(1号保険料)の低所得者軽減を強化する」とされているが、その検討状況及び具体的内容について明らかにされたい。 |
現在の所得段階別の設定に加えて、今後さらに低所得者への配慮の強化であるとか、負担能力に応じた設定が必要だと考えている。一体改革では、介護保険の5割公費負担とは別に、低所得者の負担軽減をするために、約1300億円ほど所要額を確保しており、その中で何らかの軽減措置をおこなっていきたい。具体的な内容については固まっていない。
問)軽減措置の実施時期はいつになるのか
答)税制抜本改革と同時実施なので2015年に同時になる
6. 介護保険の広域化について
現在大阪府において、府及び市町村によって「介護保険制度の広域化に関する課題の整理や国への制度提言」について検討されている。厚生労働省として、介護保険の広域化についての現時点での見解を明らかにされたい。また、広域化についてこれまでの検討の経過及び今後の検討予定があればお示しいただきたい。 |
現在でも広域連合の設立を認めており、地域の実情によっては広域化もありうると考えている。今後の検討予定では、全国一律の広域化といったとは考えていない。
問)大阪府において検討されているのは、従来の広域化ではなく、大阪府が保険者になり、保険料も大阪府一本にするというものである。このようなことは国としてはありうるのか。
答)法では、地域保険であり、都道府県で一本化するような考えはない。
写し
高介第2064号
平成23年12月16日
各市町村・広域連合
介護保険担当課(室)長 様
大阪府福祉部長
第5期保険料の設定について
平素は、介護保険制度の円滑な運営につきまして、格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
各保険者におかれましては、第5期保険料の設定に向けて作業を行っていただいていることと存じます。第5期の保険料につきましては、高齢化の進展等により、大阪府内の平均で5,356円(12月時点での暫定値)と、第4期に比べて約800円程度の上昇が見込まれております。また、介護報酬改定により、さらに上昇する可能性もあるところです。
このような状況の中、一部保険者から、保険料抑制のため、一般財源を繰り入れすることはできないかとの相談がありました。
第5期保険料の設定については、平成23年7月11日に開催された「第5期介護保険事業(支援)計画の策定に係る全国会議」で国の基本的な考え方が示されており、保険料の算定に当たっての一般財源の繰り入れは、いわゆる「3原則」に抵触することになります。被保険者以外の方への負担の転嫁、一般会計からの繰り入れの常態化による市町村の一般財源の圧迫等の問題が生じるものであり、「3原則」の尊守について、あらためてお願いいたします。
問い合わせ先 大阪府福祉部高齢介護室介護支援課 企画調整グループ 担当 木村、古池 電話 06-6944-2115 mailto:FuruchiE@mbox.pref.osaka.lg.jp
(参考)
【三原則に対する考え方】
照会先 厚生労働省老健局介護保険計画課企画法令係(電話)
照会日時 平成23年12月9日
照会に対する回答の内容
○
保険料単独減免のいわゆる3原則、特に、減免分の一般財源の投入による補てんが適当ではないという点は、第5期保険料の設定の際にも当てはまる。
保険料設定の際に、一般財源を投入して保険料を下げれば、減免したことと同じである。
○
保険料を決めるのは自治体の責任であるが、一般財源の投入についての問題点は次の二つがある。
@ もともと公費半分、保険料半分で制度設計された社会保険制度である。制度的 に決まっているもの以外に一般財源(税金。被保険者以外の方からも徴収しているもの)を投入することについては、国民の理解を得られにくい。
A いったん、一般財源を投入すればやめられなくなる。
○
第5期保険料設定に当たり、国の3原則は尊守すべきという考え方はかわっていない。平成23年7月に開催した全国会議でお示しした「第5保険料設定について」でも記載しているとおりである。
※平成23年7月11日 第5期介護保険事業(支援)計画の策定に係る全国会議 「第5期保険料設定について」(抜粋) 単独減免に対する考え方 保険料の単独減免については、従前から申しあげてきたとおり、 ・保険料の全額免除 ・収入のみに着目した一律減免 ・保険料減免分に対する一般財源の投入 については適当でないため、第5期を迎えるに当たっても、引き続きこのいわゆる3原則の尊守に関し、各保険者において適正に対応するよう努められたい。