大阪府は平成23年度新しい算定基準での国民健康保険府特別調整交付金を配分〜黒字、目標収納率達成市町村を評価する一方、保険料下げるための法定外繰入は不適切とマイナス評価。評価項目全体が「いのちよりカネ」の自治体行政を評価するものに。
2010年12月末、大阪府は「広域化等支援方針」を策定しました。この支援方針は国保の広域化にむけた都道府県の具体的な方針が明記されたものです。
大阪府の場合は、頓挫したものの、2010年夏に橋下知事や市町村長が「大阪府内統一保険料を算定しよう」と意思統一し動き出すなど、全国で最も広域化に熱心な自治体です。
この「大阪府広域化等支援方針」の具体化が、平成23年度からの「大阪府特別調整交付金」の配分方法の変更に見てとることができます。
★都道府県調整交付金とは
調整交付金とは、市町村ごとに違う被保険者の状況(年齢構成や所得など)を調整するために交付されるもので、平成23年度までは国の調整交付金が療養給付費の9%、都道府県調整交付金が7%です。(今年24年度からは国が7%、都道府県が9%となります。)
7%のうち6%分は決められたルールどおりに交付しなければなりませんが、1%については都道府県の裁量で交付することができる「特別調整交付金」です。
大阪府の調整交付金の総額は23年度予算で療養給付費5853億円×0.07=410億円です。
410億円の内訳は以下です。
□普通都道府県調整交付金(医療費水準および所得水準に応じて一定のルールのもとで調整し交付される)総額×6/7=351億円
□特別都道府県調整交付金(地域の実情に合わせ調整し交付する。大阪府の場合は財政の健全化と広域化の推進に活用)総額×1/7=58.5億円
★大阪府の特別調整交付金の配分の考え方〜「いのちよりカネ」を評価
大阪府は2011年11月に「府特別調整交付金の評価基準の考え方」を策定しました。(現物については、大阪社保協ホームページ→「国保広域化とたたかう」にアップしています)
考え方の概要は次ページです。
評価基準を簡単に言うと
・ 国保会計の単年度黒字を評価。
・ さらに一般会計の独自繰入は「独自減免」に対してはいいが、保険料そのものを下げるためや赤字補填は不適正で減点する。
・ とにかく収納率アップを評価し、徴収のためのさまざまな取り組みを評価。
つまり、Fax通信でこの間発信している四條畷市「徴収対策課」や摂津市「滞納整理部」のような、徴収のための部署をつくり徹底的に徴収する行政を評価するということがわかります。この間、私たちが問題にし、是正をもとめてたたかっている「いのちよりカネ」という行政を高く評価し、交付金も多く出しているのです。
表@府特別調整交付金の評価基準の考え方(概要)
大項目 |
中項目 |
点数 |
評価基準 |
|
財政健全化 (50%) |
1.収支状況(単年度) |
20 |
満点:3年黒字 次点:2年黒字 次々点:1年黒字 0点:黒字なし |
|
2.保険料算定 |
@支出(保険給付費)の見込み |
20 |
府が設定した適性予算額の範囲にあるかどうか 満点:適正 0点:不適正 |
|
A保険料率の設定) |
20 |
保険料の算定値と実際の設定値のかい離から敵制度を評価 |
||
B予定収納率の設定 |
20 |
予定収納率と前年度実績収納率のかい離から予定集能率の適正度を評価 |
||
3.一般会計繰り入れ |
@独自減免分 |
20 |
・
独自減免への繰り入れは適正 ・
独自減免見込み額の財源を一般会計ではなく保険料の算定に含めている場合も適正 満点:適正 0点:不適正 |
|
A不適正な繰り入れ |
▲10 |
「府の一般会計から国保特別会計への法定外繰り入れに関する考え方」のとおり(別掲) ▲満点:不適正 0点:不適正な繰り入れをしていない |
||
B法定・国通知による繰り入れ |
▲10 |
実施していない場合をマイナス評価 |
||
広域化の推進 (医療費適正化・収納対策含む) (40%) |
1.目標収納率(現年度)の達成度 |
40 |
大阪府国民健康保険広域化等支援方針の規模別目標収納率(現年)の達成状況を評価 |
|
2.滞納繰越分の収納率向上 |
15 |
大阪府国民健康保険広域化等支援方針の目標収納率(現年・滞納繰越分の計、全国平均)の達成状況を評価 |
||
3.滞納処分の実施 |
5 |
滞納整理機構や滞納処分の専門部署の設置または活用状況を評価 |
||
4.口座振替の実施 |
10 |
口座振替等率、口座振替率向上のための取り組み状況を評価 |
||
5.コールセンターの設置 |
5 |
コールセンター設置を評価 |
||
6.レセプト点検の充実強化 |
10 |
レセプト点検実施状況を評価 |
||
7.柔道整復療養費の適正化 |
10 |
柔道整復療養費の支給申請書の点検等の実施状況を評価 |
||
8.ジェネリックの普及促進 |
5 |
ジェネリック医薬品の普及促進の実施状況を評価 |
||
●収納率(現年分)の一定以上の低下 |
▲10 |
大阪府国民健康保険広域化等支援方針の収納率低下の限度設定によるマイナス評価 |
大阪府国民健康保険広域化等支援方針は↓
http://www.pref.osaka.jp/attach/5212/00061908/kouikikatousienhosin.doc
★平成23年度府特別調整交付金に大きな変化が生まれる
昨日大阪府から平成23年度の交付状況一覧を入手しました。大阪社保協で22年度分との比較ができるように作り替えたものが表Aです。
これを見ると、1億円以上も大きく交付が増えているのが豊中市、吹田市、茨木市などで、北摂・豊能地域は能勢町をのぞき増えていますが、それ以外はほとんどのところで交付が減っています。
表A大阪府特別調整交付金 交付状況大阪府資料をもとに大阪社保協で作成 |
||||||
|
平成22年度 |
平成23年度 |
差額 |
増減率 |
||
交付額 |
割合 |
交付額 |
割合 |
|||
大阪市 |
1,056,236,000 |
23.1% |
1,007,118,000 |
20.5% |
-49,118,000 |
-4.9% |
豊中市 |
199,175,000 |
4.3% |
310,372,000 |
6.3% |
111,197,000 |
35.8% |
池田市 |
33,737,000 |
0.7% |
77,556,000 |
1.6% |
43,819,000 |
56.5% |
豊能町 |
37,107,000 |
0.8% |
39,554,000 |
0.8% |
2,447,000 |
6.2% |
能勢町 |
12,649,000 |
0.3% |
8,676,000 |
0.2% |
-3,973,000 |
-45.8% |
箕面市 |
69,656,000 |
1.5% |
112,098,000 |
2.3% |
42,442,000 |
37.9% |
高槻市 |
191,503,000 |
4.2% |
257,987,000 |
5.3% |
66,484,000 |
25.8% |
島本町 |
22,512,000 |
0.5% |
23,899,000 |
0.5% |
1,387,000 |
5.8% |
茨木市 |
103,533,000 |
2.3% |
228,056,000 |
4.6% |
124,523,000 |
54.6% |
吹田市 |
147,443,000 |
3.2% |
324,357,000 |
6.6% |
176,914,000 |
54.5% |
摂津市 |
55,581,000 |
1.2% |
84,834,000 |
1.7% |
29,253,000 |
34.5% |
守口市 |
97,662,000 |
2.1% |
76,626,000 |
1.6% |
-21,036,000 |
-27.5% |
門真市 |
200,872,000 |
4.4% |
113,426,000 |
2.3% |
-87,446,000 |
-77.1% |
大東市 |
77,315,000 |
1.7% |
50,348,000 |
1.0% |
-26,967,000 |
-53.6% |
四条畷市 |
66,090,000 |
1.4% |
42,402,000 |
0.9% |
-23,688,000 |
-55.9% |
寝屋川市 |
140,687,000 |
3.1% |
108,674,000 |
2.2% |
-32,013,000 |
-29.5% |
枚方市 |
194,876,000 |
4.3% |
249,092,000 |
5.1% |
54,216,000 |
21.8% |
交野市 |
45,679,000 |
1.0% |
64,412,000 |
1.3% |
18,733,000 |
29.1% |
東大阪市 |
201,021,000 |
4.4% |
168,490,000 |
3.4% |
-32,531,000 |
-19.3% |
八尾市 |
148,810,000 |
3.2% |
99,776,000 |
2.0% |
-49,034,000 |
-49.1% |
柏原市 |
90,943,000 |
2.0% |
64,538,000 |
1.3% |
-26,405,000 |
-40.9% |
松原市 |
120,752,000 |
2.6% |
81,550,000 |
1.7% |
-39,202,000 |
-48.1% |
羽曳野市 |
95,286,000 |
2.1% |
94,373,000 |
1.9% |
-913,000 |
-1.0% |
藤井寺市 |
45,887,000 |
1.0% |
30,694,000 |
0.6% |
-15,193,000 |
-49.5% |
大阪狭山市 |
31,524,000 |
0.7% |
31,804,000 |
0.6% |
280,000 |
0.9% |
富田林市 |
65,265,000 |
1.4% |
49,798,000 |
1.0% |
-15,467,000 |
-31.1% |
太子町 |
2,687,000 |
0.1% |
5,166,000 |
0.1% |
2,479,000 |
48.0% |
河南町 |
12,550,000 |
0.3% |
12,790,000 |
0.3% |
240,000 |
1.9% |
千早赤阪村 |
17,122,000 |
0.4% |
10,810,000 |
0.2% |
-6,312,000 |
-58.4% |
河内長野市 |
54,533,000 |
1.2% |
87,354,000 |
1.8% |
32,821,000 |
37.6% |
堺市 |
204,795,000 |
4.5% |
454,559,000 |
9.3% |
249,764,000 |
54.9% |
和泉市 |
105,047,000 |
2.3% |
59,336,000 |
1.2% |
-45,711,000 |
-77.0% |
高石市 |
52,295,000 |
1.1% |
36,457,000 |
0.7% |
-15,838,000 |
-43.4% |
泉大津市 |
80,244,000 |
1.8% |
60,273,000 |
1.2% |
-19,971,000 |
-33.1% |
忠岡町 |
5,277,000 |
0.1% |
4,543,000 |
0.1% |
-734,000 |
-16.2% |
岸和田市 |
104,387,000 |
2.3% |
82,590,000 |
1.7% |
-21,797,000 |
-26.4% |
貝塚市 |
112,310,000 |
2.5% |
74,203,000 |
1.5% |
-38,107,000 |
-51.4% |
泉佐野市 |
95,826,000 |
2.1% |
66,063,000 |
1.3% |
-29,763,000 |
-45.1% |
田尻町 |
10,332,000 |
0.2% |
6,151,000 |
0.1% |
-4,181,000 |
-68.0% |
熊取町 |
28,965,000 |
0.6% |
43,607,000 |
0.9% |
14,642,000 |
33.6% |
泉南市 |
65,572,000 |
1.4% |
47,025,000 |
1.0% |
-18,547,000 |
-39.4% |
阪南市 |
60,378,000 |
1.3% |
39,275,000 |
0.8% |
-21,103,000 |
-53.7% |
岬町 |
18,055,000 |
0.4% |
14,408,000 |
0.3% |
-3,647,000 |
-25.3% |
合計 |
4,582,176,000 |
100.0% |
4,905,120,000 |
100.0% |
322,944,000 |
6.6% |
(大阪府)一般会計から国保特別会計への法定外繰入に関する考え方 (厚生労働省確認済) 2011.11.16 大阪府資料より転載 1.
法定外繰入れに関する考え方 (1)基本的考え方 国民健康保険制度が特別会計を設けている趣旨等に鑑みると、国保事業(直診施設運営費を除く)の運営財源は、原則として一般会計からの繰入金(法定分(地方財政措置分)を除く。)によることなく、保険料や法定負担の公費により賄われるべきである。 よって、本来保険料(税)として賦課・徴収すべき費用の一部に一般会計からの繰入金を財源として充てることは望ましくない。 (2)独自減免分(保険料(税)・一部負担金)に対する繰入れの考え方 独自減免分(保険料(税)・一部負担金)の財源について、現行の国民健康保険法施行令(以下「政令」という。)第29条の7(市町村の保険料の賦課に関する基準)等の解釈上の取り扱いは、次のア及びイのとおりである。 ただし、「保険料」及び「一部負担金」(保険税方式にあって「一部負担金のみ」)の減免については、保健制度の相互扶助の精神や他の公的医療保険との関係から、一般会計からの繰入金を充てるのではなく、保険料(税)を充てる(保険料(税))賦課総額に含める)ことを不可とまでは言えない。 ア.保険料(税)の独自減免について 現行の国民健康保険法施行令上、保険料賦課総額に「保険料」の独自減免の財源は含まれないため、「保険料」の減免については、原則として一般会計からの繰入金を財源とすべき。 ただし、「保険税」の減免については、地方税法の解釈で、件税賦課総額に含めることができるため「保険税」及び一般会計からの繰入金のいずれもの財源とすることができる。 なお、「保険料」については国民健康保険法施行令の改正により、平成25年度から旧ただし書き方式への一本化に際し、市町村により保険料激変緩和措置(独自減免)の財源を、保険料とすることができる。 これにより、平成25年度からは、保険料(税)を独自減免の財源とすることが法令上、可能となる。(「保険税」についても、同様の趣旨から地方税法の解釈の明確化が行われる予定) イ.一部負担金の独自減免について 一部負担金の独自減免については、国民健康保険法施行令及び地方税法の解釈上、保険料(税)賦課総額に含めることが出来ないため、原則として一般会計からの繰入金を財源とすべき。 〔なお、上記アの平成25年度からの政令改正に関連し、一部負担金の独自減免の財源を保険料(税)とすることができる旨の政令等の改正については未定。〕 (3)赤字解消のための繰入れの考え方 赤字解消については、国民健康保険制度が特別会計を設けている趣旨から、また、赤字の主な要因が保険料(税)を適正に賦課・徴収できていないことにあるため、原則として保険料(税)を充てるべきである。 しかし、累積赤字の解消については、多額の赤字を累積するに至った過去からの事情等もあることから、必ず保険料(税)を財源とすべきとまではいえず、一般会計からの繰入による対応も認められる。 2.
法定外繰入れ理由ごとの考え方
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上記大阪府の「一般会計から国保特別会計への法定外繰入に関する考え方」でのGHの×については、あくまで大阪府独自の考え方であり、法的な縛りは全くありません。ただ、「厚生労働省確認済」となっており、厚生労働省のお墨付きがついているのだと考えるべきでしょう。さらに言えば「国保広域化」は、このような考えのもとで「一般会計独自繰入を圧縮する」ものだと認識すべきと考えます。
今回の大阪府特別調整交付金の配分の10%分は、大阪府の考え方に沿っていなければ「不適正」とされ減額されます。
現在まだ厚生労働省に確認していませんが、今年度からの2%分の府調整交付金の半分でも特別徴収交付金になれば総額が倍になりますので、ますます市町村をしばる結果となることが非常に危惧されます。