4月13日「緊急介護報酬学習会〜訪問介護・通所介護の問題点と利用者本位の対応を考える」に150人が参加。「利用者を二の次とした対応はあり得ない」ことを強調。(講師 日下部・介護保険対策委員寄稿)
4月13日夜、大阪社保協主催「緊急介護報酬学習会」は急な企画だったが、150人の参加者で会場はいっぱいとなった。
私のテーマは「報酬改定の問題点と 利用者本位の対応〜訪問介護・通所介護を中心に」というもので、これに居宅介護支援も加えて、95分でお話させていただいた。
★訪問介護の時間区分問題
もっとも中心に話したのは「訪問介護の時間区分問題」。
厚労省が突如打ち出し強行した「45分」の時間区分変更。その狙いは
@報酬の切り下げ
Aサービスの短時間化
B生活援助の否定への第一歩
C定期巡回サービスに重点
介護報酬上で事業者を誘導し、この4つの実現を図ることが本当の狙いであることは間違いない。
その厚労省が、2月以降は、言い方を「変化」させている。「これまでどおりの時間可能」「45分は誤解」といったトーンである。2月23日の全国課長会議資料や3月16日のQ&Aもすべてこの内容である。
とくに3月16日のQ&Aでは「この見直しにより、これまで提供されてきたサービスを利用者の意向等を踏まえずに、新たな時間区分に適合させることを強いるものであってはならず、適切なアセスメントとケアマネジメントに基づき、見直し以前に提供されていた60分程度のサービスや90分程度のサービスを45
分以上の生活援助として位置付け、見直し後も継続して提供することは可能」と「90分も可能」と明記した。
★どう見てどう対応するか。
第一は、厚労省の現場実態無視の時間短縮策が破たんしたことである。言いかえれば厚労省の論拠が崩れたこと、そして全国からの抗議と怒り、私たちの声が厚労省を追い詰めていることである。これは、時間短縮させないために「活用」できる側面でもある。
しかし、第二に、問題点として、口先だけの言い訳と責任逃れにとどまっていることである。自ら打ち出し報酬を切り下げた時間短縮策を、「事業者の誤解」のせいにするという責任逃れである。そして何よりも、報酬区分の45分は撤回も修正もされていないので、現実問題として長時間の提供が困難になっていることである。
今後の課題として重要になるのは、厚労省説明の「活用」できる部分は徹底して活用し、介護現場での時間短縮による利用者サービス削減をできるかぎりくいとめることである。
そのためには、各都道府県、自治体が、「これまでどおり時間提供できる」「利用者の意向を無視した短縮はしてはならない」との「周知徹底通知」を行うことである。
60分程度の生活援助については、これで、事実上短縮を跳ね返すことが可能であろう。
★一律に時間短縮すれば厚生労働省に「時間短縮反対」とはもはや言えない
問題は「90分程度」の扱いである。
学習会の参加者からも「これまでどおり90分可能」との話には、多くのケアマネジャー、サービス提供責任者からは「報酬が下がっているのにそんなにムリ」と言いたげな表情であった。
ここからは、国に向けての「報酬切り下げを撤回し、90分サービスが事業者の一方的負担でなく提供できるようにせよ」という「運動課題」と、90分サービスが必要な利用者のサービス時間をどうするか という「対応課題」が絡んでくる。
私の結論は、少なくとも事業所として一律に「90分はしない」ということを方針化するのはやめるべきである。これは厚労省Q&Aからも明らかである。
報酬改定を機会に利用者と今後の提供時間を相談するのは必要であろう、その場合、やはり90分程度は必要な利用者にどう対応するか。
どうしても必要な方には、90分程度提供するという「決断」があってしかるべきだと思う。個々の利用者ごとに「収支」を勘定するのでなく、事業所全体として収支が均衡すればよいのである。
こうした「利用者本位」の姿勢が根底にあってこそ、社会に対し「ホームヘルプサービスの短時間化反対」と訴え、国に対し「必要な時間提供できる介護報酬にせよ」と要求することができる。
報酬改定を受けて、先を争うように、時間短縮に走るのでなく、必要な時間は、引き続き提供する、という基本姿勢を明確にして現実に可能な対応をすること、その上で事業者経営を考えることが大切であろう。
★介護者家族、そして新聞記者として、生活援助削減問題を問う
「利用者の家族」であり「しんぶん赤旗の記者」でもある内藤真己子・しんぶん赤旗記者からの発言は、説得力があった。
遠距離介護していた母親を3月に亡くしたばかりという彼女の発言。
残された認知症の一人暮らしの父親の生活は、毎日のヘルパーの訪問で成り立っている。にもかかわらず、事業者は4月以降「これまでの60分を45分に、90分を70分に短縮する」と言ってきている。
「父親は認知症だが、ヘルパーといろいろな話をするのが社会との唯一の接点。デイはかごの鳥になるようで行きたくない、と拒否しているが、毎日来るいろいろなヘルパーと話をすることが父親の生きがいにさえなっている。時間短縮はこの貴重な貴重な時間を奪ってしまう」
彼女自身が、記者として取材してきた、厚労省の時間短縮案のエビデンスとなった研究内容のずさんさと合わせて話されたこの発言には、ケアマネジャー、サービス提供責任者も共感の拍手であった。
やはり、「利用者」である。これを二の次にして対応してはならない。
(日下部雅喜・大阪社保協介護保険対策委員)
川崎市、広島市に続き、大阪市が「平成24年度介護報酬改定による生活援助中心サービスの時間区分の見直しについて(通知)」を4月11日に発出。
大阪市が訪問介護サービス生活援助時間短縮問題で4月11日に通知を出しました。
この通知は3月27日の介護保険料に怒る一揆の会、大生連、年金者組合大阪府本部との交渉で
参加者
のみなさんが川崎市、広島市の通知を示した上で「大阪市も直ちに通知を出せ」と要求し、
大阪市がその要望にこたえたものです。通知掲載の大阪市ホームページはこちらです。
http://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000164160.html
さらに4月12日、大阪市に確認したところ、4月18日、19日、25日に開催予定の大阪府内全介護事業者を集めての「集団指導」でも口頭でこの説明がされるとのこと。「つまり、大阪市だけでなく大阪府全体の合意の通知と考えてもよいと言うことですね」との確認に対して、「そうなります」との回答を得ました。
大阪社保協としては今後、各市町村に対しても「大阪市と同様に通知を出せ」と強く要請ていきます。
大福第81号 平成24年4月11日 指定介護保険事業者管理者各位 大阪市福祉局高齢者施策部 介護保険課長 事業者指導担当課長 平成24年度介護報酬改定による生活援助中心サービスの時間区分の見直しについて(通知) 平素から本市介護保険制度の適正な運営にご協力いただきありがとうございます。 さて、平成24年4月の介護報酬改定に伴い、訪問介護サービスにおける生活援助中心の時間区分が「20分以上45分未満」と「45分以上」の2区分に見直されています。 今回の見直しは、介護報酬の評価を行う際の時間区分の変更であり、必要なサービス量に上限等を設けようとするものではありません。 そもそも介護サービスは、利用者個々の状況に応じて、介護支援専門員とサービス提供責任者による適切なアセスメント及びケアマネジメントに基づき、利用者のニーズに応じた必要な量のサービスが提供されるべきものです。 今回の「見直し」により、これまで提供されてきたサービスについて、利用者の意向等を踏まえずに、新たな時間区分に無理に適合させるようなことがあってはならず、適切なアセスメントとケアマネジメントに基づき、これまで提供されていた60分程度のサービスや90分程度のサービスを、「45分以上」の生活援助として位置付け、「見直し」後も継続して提供することが可能ですので、くれぐれもご注意ください。 また、適切なアセスメントに基づき、これまで提供されてきた介護サービス等の内容をあらためて見直した結果、介護サービスを変更する必要が生じた場合には、サービス担当者会議の開催等が必要ですので併せてご注意ください。 なお、不当にサービス提供時間の制限を設け契約することは、指導・監査の対象となりかねないところであり、さらに利用者に不正な自己負担を求めることは、基準省令違反が強く疑われるものであるので、適正な介護サービスを提供できるよう、関係法令を厳守されるよう申し添えます。 問合せ先 大阪市福祉局高齢者施策部介護保険課保険給付グループ 電話:06−6208−8033 |
23川健介保第2036号 平成24年3月12日 指定訪問介護事業所
管理者 様 川崎市健康福祉局長寿社会部介護保険課長 平成24年度介護報酬改定による生活援助時間区分の見直しについて(通知) 日頃から本市介護保険制度の適正な運営に御協力いただき、ありがとうございます。 さて、平成24年4月介護報酬改定において、生活援助中心型の所定単位数を算定する場合の時間区分の見直しが予定されています。 今回の見直しは、あくまでも介護報酬の評価を行う際の区分の変更であり、これまで保険給付の対象として提供されていたサービスについて、例えば事業所側の規定により一律に60分を超える場合には自費徴収を行うとする等の取扱いは認められません。 このようなケースは、発見次第指導・監査の対象となりますので、適切な利用料の徴収を行っていただきますよう、お願いいたします。 また、一部報道等において、生活援助の提供が45分までに制限される等の情報が見受けられますが、4月以降においても、適切なアセスメントとケアマネジメントに基づき位置付けられているサービスについては、サービスの削減を行う必要はなく、例えば60分を超える部分についても「所要時間45分以上」の区分として保険給付の対象となることを申し添えます。 (介護保険課認定給付係 担当) 電話 044−200−2687 FAX 044−200−3926 |
平成24年3月22日 各居宅介護支援事業者 代表者 様 各介護予防支援事業者 代表者 様 各訪問介護事業者 代表者 様 広島市健康福祉局高齢福祉部介護保険課長 介護報酬改定を踏まえた適切なケアプランの作成等について(通知) 日頃から、本市介護保険事業運営について、ご理解とご協力をいただきありがとうございます。 さて、訪問介護の生活援助の時間区分の見直し等に関して、利用者及び事業者から問い合わせが多く寄せられています。 ついては、下記のことについて再度ご確認いただき、適切なケアプランが作成され、利用者に対し真に必要なサービス提供がなされるよう、適切な対応をお願いします。 また、厚生労働省から発出された「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(平成24年3月16日)」においても、下記と同様の趣旨が示されております。上記Q&Aを本市ホームページに掲載しておりますので、ご確認ください。 記 1 訪問介護の生活援助について 一部の事業者が、全ての生活援助サービスを「45分未満」で提供しなければならないかのように誤解し、これまで提供されてきた60分程度のサービスを、利用者等の意向を踏まえずに、一律に45分未満のサービス提供へ変更している、との苦情を受けております。 このような、利用者等の意向を踏まえない対応は不適切であり、指導の対象となります。 別添1の全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(抜粋)において、「適切なアセスメントとケアマネジメントに基づき、現在行われている60分程度のサービスを実施することは可能である。」などと示されているとおり、適切なケアプランが作成され、利用者に対し真に必要なサービス提供がなされるよう、ご配慮ください(別添2の問9もご確認ください。)。 2 介護予防訪問介護について 介護予防訪問介護のサービス提供時間は、今回の改定において変更はありません。 これまでと同様、1回のサービス提供時間に一律に上限を設けることは不適切であり、指導の対象となります。また、サービスの必要な量や内容の変更にあたっては、介護予防支援事業者と十分な連携を図り、介護予防サービス計画との整合性を図る必要があることにご留意ください(別添2の問122もご確認ください。)。
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