大阪社保協通信

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1265号 2023.4.12

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大阪社会保障推進協議会

  

誰も知らないまま進む改悪〜介護保険料公費軽減切り下げ・保険料負担増狙う〜3月29日中央社保協厚生労働省交渉で明らかに

★もう一つの負担増―介護保険料負担見直し

 2024年度介護保険見直しは、利用者負担2割の対象拡大など「負担増」が焦点になっています。その中で、もう一つの「高齢者負担増」−介護保険料負担の見直しがほとんど知らされないまま決められようとしています。

 次期介護保険見直し(改悪)は、@軽度者(要介護1,2)の生活援助サービス等の総合事業化、Aケアマネジメント有料化、B2割負担拡大などが狙われましたが、昨年12月20日の厚生労働省の審議会(社会保障審議会介護保険部会)で取りまとめられた「意見書」では、@、Aは第10期介護保険事業計画(2027年度〜29年度)までに結論を得ると先送りにされ、Bは「今年夏までに結論」とされ、「負担増」が焦点になっています。

 介護サービス利用者負担増とともに、高齢者の介護保険料負担増も狙われています。3月29日に中央社保協が行った厚生労働省交渉を通じてその危険性が明らかになりました。

★公費による低所所得者の介護保険料軽減

 介護保険制度では、市町村ごとに介護サービスに必要な費用の23%(第8期)を高齢者の介護保険料として負担させる仕組みです。

高齢者の介護保険料(第1号介護保険料)は、国の定める基準に従い市町村が条例で決めます。介護保険開始時(第1期)は基準月額の全国平均は2,911円でしたが、現在(第8期)では2倍以上の約6,014円となっています。

 介護保険料はこの「基準額」をもとに所得段階別に区分して決めます。現在の国の基準(標準段階)は

第1段階(非課税世帯で本人の年金収入等80万円以下)基準額×0.5

第2段階(非課税世帯で本人の年金収入等30万円超120万円以下)基準額×0.75

第3段階(非課税世帯で本人の年金収入等120万円超)基準額×0.75

第4段階(課税世帯で本人非課税・年金収入等80万円以下)基準額×0.9

第5段階(課税世帯で本人非課税・年金収入等80万円超)基準額×1.0

第6段階(本人課税で合計所得120万円未満)基準額×1.2

第7段階(本人課税で合計所得120万円以上210万円未満)基準額×1.3

第8段階(本人課税で合計所得210万円以上320万円未満)基準額×1.5

第9段階(本人が課税で合計所得320万円以上)基準額×1.7

となっており、9段階の所得段階別定額制です。制度開始時は5段階でしたが、不公平との批判の中で2006年度から6段階、2015年度から9段階になりました。

 介護保険料は基準額(第5段階)を0.5〜0.9倍に軽減した非課税層(第1〜第4段階)の保険料減少分を本人課税層(第6〜第9段階)を1.2から1.7倍に割り増して補うため、低所得者軽減には公費は一切使われない「高齢者間の互助」の仕組みです。

 国標準の第1〜3段階の非課税世帯の人は基準額の0.5〜0.75に軽減されていますが、基準額そのものがが当初の2倍以上になっているので低所得者の負担は極めて大きくなっています。低所得者に負担が重く、高所得者は合計所得320万円以上はどんなに所得があっても基準額の1.7倍しか負担しなくてもよいという不公平な仕組みです。このため、自治体ではさらに段階を増やし半数以上の市町村が10段階以上となっています。

 5%であった消費税が、社会保障・税一体改革の下で8%を経て2019年10月に10%に引き上げられました。その際に介護保険料は消費税増税分を財源に、第1段階〜第3段階を公費を投入して低所得者(非課税世帯)を軽減しました。

  第1段階  基準額×0.5  ⇒ 0.3

  第2段階  基準額×0.75 ⇒ 0.5

  第3段階  基準額×0.75 ⇒ 0.7

 2022年度は公費1572億円(うち国費786億円)が投入されています。それまで、国が「やらない」としていた「公費による保険料軽減」が消費税増税を契機に初めて実施されたのです。

★次期改定で狙われる介護保険料負担の見直しとは

 2024年度の次期介護保険制度改定では、この公費による保険料軽減の見直し(削減)とその分の保険料負担の増加が狙われています。

 もともと、次期改定の検討項目に「保険料負担見直し」は入っていませんでしたが、昨年(2022年)10月31日の厚労省の審議会(社会保障審議会介護保険部会)で突然「高所得者の第1号保険料負担の在り方」が検討項目に入ったのです。この時は「公費」問題は論点になく、「被保険者の負担能力に応じた保険料設定」だけが強調されていました。

同年11月7日の財務省の審議会(財政制度等審議会税制制度等分科会)では「低所得者の負担軽減に要する公費の過度な増加を防ぐため、負担能力に応じた負担の考え方に沿って、高所得の被保険者の負担による再分配を強化すべき」と明記され11月29日には「建議」に盛り込まれました。

 介護保険部会では、12月20日にまとめられた「意見書」では、

「低所得者軽減に充当されている公費と保険料の多段階化の役割分担等について、次期計画に向けた保険者の準備期間等を確保するため、早急に結論を得ることが適当である。」と明記されたのです。

 厚生労働省からは「被保険者の負担能力に応じた保険料設定」だけが説明され、「公費負担」問題は説明がなく、各委員からも意見も出されず議論されないままこっそりと「公費と保険料の多段階化の役割分担」見直しが意見書に書き込まれました。

★厚生労働省、公費削減を否定せず

 3月29日に中央社保協が行った厚生労働省交渉では、冒頭で

1.現在公費により行われている低所得者の保険料軽減割合拡大について後退させないこと

 を求めました。

 厚生労働省老健局の担当者は、「社会保障税一体改革による消費税財源を活用し、政令で、0.2、0.25、0・05と規定されており、これに従い市町村で条例で定めることになっている」「保険料の段階数、乗率含めた検討を行い 夏までに結論を得ることになっているので、介護保険部会で丁寧な検討をしたい」

との回答を行いました。

 社保協側が、「公費による軽減割合を下げないと言えるか」と質問すると、厚労省老健局担当者は「これから検討するところであり下げないとは言えない」と返答しました。

★課税層の負担引上げも否定せず

次に要求した

2.住民税課税者の保険料割合について、合計所得320万円未満については現行より引き上げないこと」

 について、厚労省老健局担当者は

「国が定める標準の6,7,8段階について、引き上げませんと言いにくい。介護保険部会で夏までに検討を行っていくので、新たに乗率が上がる人たちの生活等の事情は介護保険部会で意見を聞いて検討したい」

 との回答でした。

 社保協側が、「『高所得者』とは、第9段階(合計所得320万円以上)を指すのか」と質問しましたが、厚労省老健局担当者は「現時点では言えない」と返答しました。

 このやりとりを通じて明らかになったことは

第1に、公費による低所得者軽減(0.25〜0.05)が引き下がられる可能性があること、第2に、公費減少分を補う「高所得者の負担」は、合計所得額120万円未満の層(国基準第6段階)も含めて引き上げられる可能性があることです。

そして、この「公費による低所得者保険料軽減」の見直しは政令(介護保険法施行令)改正で可能なため、国会の法改正なしに閣議決定だけで変更されます。高齢者はおろか自治体関係者にも知らせないまま、勝手に改悪されことになります。

­★市町村では大幅な負担増になる可能性

もし、「公費による低所得者軽減」の引き下げが実施された場合、多くの市町村では広範な課税層の保険料負担の引き上げが避けられなくなります。

それは、市町村の半数以上にあたる820市町村が国基準の9段階を超える10段階以上の所得段階設定を行い、最上位の段階の乗率は、国基準を超える乗率としているところは823市町村に及ぶからです。

これらの市町村ではすでに「高所得者」に対し、国基準の1.7を超える乗率の保険料負担(例えば東京都港区では17段階・合計所得金額5000万円以上は5.1倍)を課しています。このため、国基準の最高位(合計所得金額320万円以上)の乗率が引上げられてもこれらの市町村は、すでに高い乗率を課しているため引下げの余地が少ないため、公費が削減ざれた分を補うことが困難です。そのため、@低所得者軽減の率を引き下げる か A課税層全体(合計所得120万円未満の含む)の乗率を引き上げる ことになります

高齢化の進行で介護給付費増による保険料基準額の引上げに加え、公費削減による保険料負担の引上げが加わり、高齢者にとってはさらに大きな負担増をもたらすか可能性があります。

★早急に知らせ、中止を求める運動を

 政府・厚生労働省は、審議会委員にもろくに説明しないまま、この改悪を「見直し意見書」に明記することによって規定路線にし、具体的な段階数、乗率、低所得者軽減に充当されている公費と保険料の多段階化の役割分担等について夏までに「結論を得る」としています。自治体関係者にもまったくこの動きは伝わっていません。

 早急にこの改悪の狙いを知らせ、中止を求める運動を起こすことが必要です。

 具体的には

 @この問題を分かりやすく解説し、知らせること(この問題は、介護保険財政と保険料の仕組みが複雑なため多くの人にはわかりにくい)

 A社会保障審議会介護保険部会委員に対し、「公費による低所得者軽減割合を引き下げるな」の要請を行う

 B各市町村に対し、「公費による低所得者軽減割合を引き下げ」に反対するよう要求する

 などの行動を取り組むことが必要です。

 介護サービス利用者負担2割の対象拡大中止を求める運動と合わせて早急に具体化することが求められています。                (2023年3月31日 大阪社保協介護保険対策委員長・ 日下部雅喜)

 

大阪府統一国保料の高さが際立つことが全国大都市国保料調査から判明〜大阪府内各市町村は「統一」を踏みとどまるべきである

中央社保協が全国の社保協に呼びかけて作成した「全国大都市国保料調査」で「大阪府統一保険料」および大阪府内の政令市・中核市の保険料が際立って高いことが判明しました(別紙一覧参照)

なぜ「大阪府統一国保料」は高くなるのか、その理由について考えてみました。

【大阪府統一国保料が高くなる要因】

○市町村単位国保の場合は直近の医療費動向等により次年度保険料賦課を行うが、都道府県単位の納付金計算は前々年度実績で計算するためと実際の医療費との誤差が大きいのではないか。特に大阪府の場合は大きい規模となるのでその誤差が莫大なのではないか。

○納付金は100%納付する義務があるので現行収納率を大幅に上回る計算をして統一保険料率(大阪の場合は統一保険料率)を賦課することとなるため保険料は高くなるため統一保険料率に合わせると必ず国保会計は黒字となる。

○しかし、統一国保料の場合その黒字を次年度繰越できず市町村ごとの基金に積み上げるしかなく、この基金は大阪府全体の納付金計算の時に組み入れることができないため、納付金そのものを小さくすることができない。

大阪の国保料詳細データ↓

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