大阪社保協FAX通信   1130号 2016.3.17

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「高すぎる国保料」に苦しめられる被保険者の声を聞かずに大阪府と市町村は「保険料統一」「減免統一」で取りまとめるつもりか!!

2016118日に「都道府県国民健康保険運営方針策定要領(案)」と「国民健康保険における納付金及び標準保険料率の算定方法について(ガイドライン)」が初めて示されました。全国的には、このガイドライン案をうけてやっと都道府県と市町村が国保都道府県単位化にむけて協議を始めるという段階です。

※ガイドライン案は大阪社保協ホームページにアップ

http://www.osaka-syahokyo.com/16kokuken/kokuken02.pdf

http://www.osaka-syahokyo.com/16kokuken/kokuken03.pdf

http://www.osaka-syahokyo.com/16kokuken/kokuken04.pdf

 

しかし、大阪では 「持続可能な医療保険制度改革を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法」の成立(2015527日)を待たず、525日に「第一回大阪府・市町村国民健康保険広域化調整会議」をいち早く開催しました。それ以降「財政運営検討ワーキンググループ」で財政・保険料問題を、「事業運営検討ワーキンググループ」で保険料以外の保険実務などについて市町村代表とともに毎月1回ペースで検討作業をすすめており、 すでに8回目のワーキングが終り、この329日開催予定の「第3回調整会議」で方向性を決定するとしています。

昨日316日に第8回の「財政運営検討ワーキング」と「事業運営検討ワーキング」の資料開示があり、レクチャーを受けたのですが、「取りまとめ素案」のその内容が最悪ですのでいち早くお伝えするとともに、「拙速にまとめるな」の声を各地・各団体から上げていただくことを呼びかけます。

 

★取りまとめ素案概要(別紙概要版参照のこと)

@保険料率・・・・医療費水準の差が比較的小さいことを踏まえ医療費水準を加味せず統一

A市町村の保険料率・・・原則「標準保険料率」で統一

B保険料減免・軽減・・・・H30年度から原則「共通基準」で統一(激変緩和措置として当面は従前基準も可能)「共通基準」の財源は標準保険料率(事業費納付金)で賄う(激変緩和措置

かかる財源は各市町村の責任で一般会計法定外繰入・保険料率―の上乗せで対応)

C一部負担金減免・・・・H30年度から原則「共通基準」で統一(激変緩和措置として当面は従前基準も可能)「共通基準」の財源は標準保険料率(事業費納付金)で賄う(激変緩和措置にかかる財源は各市町村の責任で一般会計法定外繰入・保険料率―の上乗せで対応)

 

316日レクでの説明〜「共通基準」

昨日の大阪府によるレクチャーでは、「共通基準」については、「一時的な理由によるものを想定」とするとのことでしたので、一部負担金減免の国の基準である「特別な理由により生活が著しく困難となった場合」で、「特別の理由」は風水害、災害、事業・業務停止、失業などにより「一時的に所得が減少」した場合のみということだと考えられます。

大阪府内市町村の減免は国保50猶予年の地域での運動の歴史を背景に、@所得減少減免だけでなく多くの自治体がA低所得者減免を設定し、さらにB障害者減免、Cひとり親減免、さらにはD借金減免、E多人数世帯減免などももつ自治体もあります。こうした豊かな内容をもつ減免制度を低い「共通基準」に統一することは絶対に認めることはできません。

さらに、「共通基準」の原資を納付金、つまり保険料に求めると言うのも大きな問題があります。つまり、保険料減免のために保険料が高くなるというのは本末転倒です。現在は、条例減免の原資は「保険料」ではなく「一般会計法定外繰入」で賄う自治体が殆どです。

なお、「激減緩和措置」は6年で、傾斜的になくなっていきます。

 

 ★統一保険料の根拠〜医療費格差がないというのは机上の空論

統一保険料として計算するためには標準保険料算定時に医療費水準をいれないことが前提となります。つまり、市町村間に医療費格差がないということが前提となります。

大阪府の理屈は、「年齢調整をすると医療費水準の府内格差は1.2にならないので、殆ど医療費格差がない」です。

 

 以下のデータはいずれも第2回大阪府・市町村広域化調整会議資料です。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/5211/00203264/43_sankou_nenreihoseiimage.pdf

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/5211/00203264/44_sankou_nenreihoseigoiryouhi.pdf

 

 まず、大阪府内全域での5歳ごとの被保険者数割合を出し、そのうえで各市町村ごとの実際の被保険者割合の比較し、割合が大きくなっているところに平均割合をあてはめ、一人当医療費をかけて調整します。その結果、調整しなければ大阪府内各市町村の医療費最大格差は1.458なのだけれど、調整した結果、1.2よりも小さくなるからだというのです。

こうした年齢調整(補正)は全国的にも納付金算定の時に使われます。 

しかし、この年齢調整は、あくまでも机上の計算であり、以下の三点において「空論」だと指摘せざるを得ません。

一つ目に、1.2=1ではないということ。何を根拠に同じだとしているのか不明です。

二つ目に、そんな机上の計算をしたところで、例えば山間部に都会からの病院が移転するはずもありません。

大阪では、大阪市および北摂地域、および堺市などに医療機関が集中し、河南地域、泉南地域には医療機関が少なく、産科や小児科さえないという自治体があります。大阪府内にも医療過疎地域が厳然と存在しているのです。

三つ目に、医療費と医療内容は同一のものではないということ。医療費は診療報酬をもとに支払われますが、診療報酬は診療行為に対して支払われるもので、医療内容、及び結果について支払われるのではないのです。医療費格差と医療格差、この言葉の意味の違いにも注意する必要があります。

地域の実態とかけはなれた標準化、統一化は被保険者にとってはデメリットでしかありません。

 

224日の大阪府レクでの内容

2016224日、大阪社保協では大阪府国保課主査をお招きし、大阪社保協加盟団体や地域社保協のみなさんとともに国保都道府県単位化問題でのレクチャーを受けました。

 当日は22日の「市町村セミナー」資料と、大阪府独自資料をもとに国のガイドライン案での考え方についての説明と、現在大阪府と市町村が論議している内容についての説明が1時間にわたってありました。質疑応答も含めて、特に大阪府として以下のように考え方を述べていたのが特徴的でした。

 いずれにしても、後段の発言では、大阪府が財源を握ったことで、高圧的に市町村を指導しようとしている姿勢がみてとれます。

【大阪府レクチャー概要】

2018年度から国保の保険者は大阪府と市町村になる。国民健康保険証は「大阪府国保証」となる。

□大阪府が財政に責任をもち(大阪府には莫大な国保特別会計ができ、さらに基金ができる)、市町村は国保実務や保険料徴収をひきつづき行う。

□市町村国保特別会計には国庫支出金や前期高齢者交付金、大阪府支出金などが殆ど入らなくなる。

□大阪府は一年分の大阪府内で必要な医療費から国庫支出金や前期高齢者交付金などの収入を引いた「事業費納付金(納付)」を計算し、それを43市町村ごとに割り振り、さらに「標準保険料率」を割り出す。

□納付金と標準保険料の考え方の案は国から出されているが、大阪府は2010年当日の橋下知事と首長の申し合わせ「大阪府統一国保を目指す」にあわせ、「統一保険料率」をめざして、現在「大阪府・市町村国保広域化調整会議」および財政運営検討ワーキングキング(保険料をどうするか)と事業運営検討ワーキング(保険事務やをどうするか)で検討しており、3月末には考え方を一定まとめるつもりでいる。

2017年度中には「大阪府国民健康保険運営方針」を策定し、納付金や標準保険料の算定方式、実務や独自減免のルールを定める。

□統一保険料とは、大阪府の各市町村どこでも同じ保険料率ということ。

□大阪府が統一保険料を可能とする根拠は、「大阪府内市町村の医療費格差は最大1.2倍なので医療費格差はないから」。

□一般会計法定外繰入金は赤字という扱いなので2017年度中にやめていただきたい。

2017年度中に赤字を解消してもらわないといけない。赤字は都道府県国保にもってはいけない。

□基本的に大阪府が決めた保険料率で市町村がいくというのがいまの考え方。

□大阪府国保運営方針で決めたことは義務ではなく尊重しなければならない。

□法律上、違反することはできるが尊重していただく。

□大阪府が決めたことを市町村が変えるということはおそらくできないだろう。

□一般会計法定外繰入は国は赤字といっているので、赤字解消については大阪府が指導していかざるを得ない。

□今回の統一保険料については、大阪府が率先してやっているのではなく、もともと市町村から言い出したこと。

 

★大阪府での議論の特徴〜2010年の合意が生きているというが・・・

 全国的に東日本は「統一をめざさず」、西日本は「統一をめざしている」自治体が多いと言われていますが、その中でも大阪府は急先鋒、どこよりも早く「統一保険料」「統一国保」を目指して動き出しています。

 そして、前述した2010年の橋下知事時代にかわされた「統一国保」「統一国保料」をめざすとの合意がいまも生きているというのが特徴です。

 あらためて、2010年に何があったのか。

2010年当時、国の指示のもと、全国的に「広域化支援方針」策定の動きとなるのですが、大阪の場合、「大阪都構想」という政治的な動きと合間って「広域国保」「広域介護保険」をめざす動きがうまれます。 その当時の流れは以下でした。

 

 2010

420日 第一回広域化支援方針(仮称)研究会

513日 財政運営ワーキングチーム

518日 標準設定ワーキングチーム

527日 府知事と市町村長との意見交換会

国保の「府内統一料金」を目指すことが合意された。保険料は「下がるところもあれば上がるところもある」こと、「都道府県で財政負担をすることは考えていない」ことの2点が前提とされた。

63日  財政運営ワーキングチーム

613日 市長会健康福祉部会と町村長会環境厚生部会の合同会議

市町村長代表と副知事で構成する「国民健康保険広域化検討委員会」を作り 、市町村国保の広域化等について検討することが確認された。詳細の検討については、「大阪府広域化等支援方針(仮称)の策定に関する研究会」に委任することも同時に決定した。

615日 標準設定ワーキングチーム

7月 8日  第二回広域化支援方針(仮称)研究会

722日 大阪府知事と16市町村代表との協議

法改正を待たず、一般会計繰入無し、減免なしで大阪府統一料試算を年内に行うことが意思統一された。

825日 広域化検討委員会

99日  第三回広域化支援方針(仮称)研究会

9月28日  大阪府議会代表質問での部長答弁

大阪府議会での大橋議員(維新の会)での代表質問に対して保健福祉部長は「5月27日 の知事と市長との意見交換会、7月22日の知事と16市町村長代表との協議があったが、その後8月の広域化検討委員会で統一保険料には限界があり困難との意見が多数出され、今後とは府内保険者とともに国に法改正を要望していく」と答弁。

929日  池田市議会における倉田市長答弁

国民健康保険会計の問題でありますが、722日開催された、大阪府の知事と市町村との協議の場で、国民健康保険料を統一する方向で検討していくことで合意を見た、このような報道がありましたが、それは違います。知事はこのように提案をされました。「僕が(知事が)中心になって統一保険料つくりましょう!皆さんそれで良いんでしょう!」とそういうことをいわれたことは事実でありまして、新聞報道はその部分だけをとらえて「年内に大阪府が統一保険料を提示する」と、こういうことでありました。しかし、それは不可能です。なぜならば大阪府下43市町村の議会で保険者である市、町が議会に提示してその保険料を提示して保険料を決めていくわけですから、そんなことできるわけがありませんので「それは違いますよ」ということを知事にも申し上げたところであります。

・…中略・・・・

市町村の一般財源からの繰り入れの全廃、ということではありません。これは結果どうなるか分かりませんが、適度な繰り入れは私は必要なものと思っております。・・以下略

104日 大阪府議会での日本共産党・宮原府会議員質問に対する知事答弁

           国民健康保険料府内統一化は「現行法の枠内では非常に難しい」と答弁し、「年内の制度設計」断念を表明。同時に国に制度改正を求め、府が保険者となって国保料を統一する国保広域化をあくまで推進することを表明

 

【「20101125日「国保『広域化』反対大運動意思統一決起集会」資料より】

 

 

★完全に抜け落ちている「高すぎる保険料問題」

国のガイドライン案は「国保の構造的な問題点」として厚生労働省自らが指摘していた「保険料負担が重い」(平成24124日「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」資料)という点については一切言及していません。

標準保険料率は一般会計法定外繰入をしない前提で計算するので、現行保険料より高くなるはずです。なぜならば、仮に3400億円が財政支援として投入されたとしても、全国の市区町村による一般会計法定外繰入3900億円(2013年度)よりも少からです。

つまり、現在の一般会計法定外繰入は全額そのまま維持しないと引下げ効果はでないということになり、国民・被保険者を苦しめている「高すぎる保険料」問題は全く放置されたまま、都道府県単位化につきすすんでいくということとなるのです

 大阪府も一般会計法定が行く入れを「赤字だ」として敵視していますが、もともと国保会計の費目には一般会計法定外繰入を「その他収入」という費目として「収入」としてあげており、一方的に「赤字」とする根拠がありませんし、市町村が独自に行う予算実行に国も自治体もケチをつけることなどできません。

 

★具体的な保険料試算ができるのは今秋10月頃

一方、大阪府はいまだ一度も保険料試算をしたことがありません。

現在、都道府県と市町村の国保事務をスムーズに進めるために新たに作られる「標準的な電算処理システム」が国と国保連によって共同開発をされています。

このシステムは@国保事業費納付金等算定標準システム(仮称)A国保情報集約システム(仮称)B市町村事務処理標準システム(仮称)の3つの機能を合わせもつものです。簡易版が201610月頃に都道府県に無料配布されますので、今秋以降は納付金や標準保険料率の具体的な試算が可能となり、そこで初めて和賀自治体の保険料がどうなるのかがわかることとなります。

昨日の大阪府レクでも、試算はこのシステムが下りてからという話をしていましたので、大阪でも秋にならなければ具体的なことがわからないのです。

 

★市町村から意見が殆ど出ていない!?

大阪府によるとすでにこうした取りまとめ案も含め資料が府内市町村に渡されているようですが、現時点では市町村からの意見が殆どでていないとのことです。とりわけ、北摂豊能地域は保険料が大きく値上がることが予想され、また豊かな減免制度をもと自治体にはデメリットが大きくなります。

 

★「拙速なとりまとめをするな!!」の声をいますぐ集中を!

本日の夜に「大阪社保協2016年度第一回常任幹事会」を開催します。緊急ではありますが、大阪府の取りまとめ等に対する緊急決起集会等についても提案し、議論したいと思います。

ぜひ、以下のような意見を大至急大阪府国保課へ寄せましょう!!

 

□保険料試算もしないで「統一保険料」との結論を拙速に出すな!!

□被保険者の苦しみは「高すぎる保険料」であり、さらに高額になるような統一国保料には絶対反対する!

□統一保険料、統一減免など地域の歴史と事情を無視したとりまとめをするな!

□大阪府に医療格差がないとなぜいえるのか?統一保険料にしたら大阪市・北摂豊能地域にある医療機関が私たちの地域に移転してくるのか!!医療水準格差が歴然としてあるのに保険料が統一など絶対に納得できない!!

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大阪府福祉部国民健康保険課広域化・制度推進グループ

TEL:06-6941-0351(代表) 内線2485,2473    06-6944-7128(直通)
FAX:06-6944-6684

国保への意見メールhttps://www.shinsei.pref.osaka.lg.jp/ers/input.do?tetudukiid=2008100058

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