大阪社保協FAX通信   1116号 2015.10.9

メールアドレス:osakasha@ poppy.ocn.ne.jp     大阪社会保障推進協議会

  http://www.osaka-syahokyo.com/index.html    TEL 06-6354-8662 Fax06-6357-0846

 

 

 

国保都道府県単位化〜大阪ではいま何が議論され、どうされようとしているのか。大阪府・市町村広域化調整会議ワーキング資料から読み解く。

大阪では、525日に「第1回大阪府・市町村国民健康保険広域化調整会議」が開催され、その下に「財政運営ワーキングチーム」と「事業運営ワーキングチーム」が作られ月一回ペースで会議が開かれています。その内容については、fax通信1110号(727日付)に掲載しています。

http://www.osaka-syahokyo.com/fax/1110.pdf

★これまでワーキングは7月・8月・9月・10月、それぞれ4回開催

 本体の調整会議資料は、大阪府ホームページに掲載されていますが、ワーキング資料は公開されていません。大阪社保協では、毎月、この2つのワーキング資料を公開請求し、毎回大阪府国保課で資料を受け取り、その都度主幹にその内容を説明していただいています。

 本日、第3回のワーキング資料が開示されましたので、これまでの内容とともにいま、大阪で何が議論されているのかについて報告します。

なお、国レベルでの協議は7月から非公開で行われており、国会議員秘書を通じての資料提供請求にも厚生労働省は応じていません。

★大阪は「統一保険料」ありきで議論が進んでいる特異な状況[i]

すでに報告しているとおり、大阪の議論は「統一保険料をめざす」としていることがまず特徴的です。

全国的には「統一保険料はあり得ない」というのが一般的で、いくつもの都道府県の担当者に問い合わせても、「それぞれの市町村の医療供給体制の差と様々な事情と歴史があり、統一保険料について市町村の合意が得られない」と口をそろえて答えているのが現状です。

それではなぜ大阪府だけが独自路線なのでしょうか?

これは2010年の橋下大阪府知事当時の大阪府と市町村の合意がいまなお生きており、「固執している」としか言いようがありません。

★都道府県単位化で市町村国保財政は大きく変わる・・別掲資料@A

大阪府は国の資料をもとに、市町村に簡単に説明できるよう図式化するのが大変上手です。

別掲資料@は現行の国保財政のイメージ、Aは都道部県単位化後の国保財政のイメージです。

現行は収入(国庫支出金、大阪府支出金、さらに前期高齢者交付金=他の被用者保険からの交付)はすべて市町村の一般会計及び国保会計へ直接入ります。

しかし、資料Aをみていただくとわかりますが、大阪府国保会計に殆どの収入が入り、市町村国保会計に直接入るのは、国からの基盤安定化の部分(政令軽減など)だけとなり、大阪府国保会計に殆どすべてが入ることとなります。

そして、大阪府国保会計と市町村国保会計の関係では、市町村は大阪府に事業費納付金を上納し、大阪府国保からくる保険給付費等交付金(医療費の支払い)を受けるだけとなります。つまり、国保のお金のほとんどが大阪府国保を通ることとなり、これが「都道府県の保険財政の運営=大阪府が財布を握る」ということです。

★「事業費納付金」の考え方・・・別掲資料B

国保会計上、市町村の仕事は大阪府が決定した「事業費納付金(納付金と略)」を徴収することだけとなります。では、納付金はどのようにして決定されるのでしょうか。

大阪府が作った資料Bをみてみましょう。

 

1.  事業費納付金のイメージ

・基本的に全国ベースでは被保険者割50:所得割50で按分します。

・大阪府の説明ですと、所得水準が低い都道府県は50より小さくなり、足らずは国調整交付金で埋められます。一方所得水準が高い都道府県は50より大きくなります。

2.  大阪府は所得水準が低いので、B県のイメージです。

3.  医療費水準の違いによる納付金のイメージ

・医療費水準の高い都道府県はB県となり、低い都道府県はC県となります。大阪府はB県のイメージです。

・高齢者が多いと医療費水準はどうしても高くなるので、国は年齢調整をしたもので医療費水準を計算する予定です。

 ↑

以上13は都道府県レベルでの納付金の考え方です。

 

以下は県内市町村の納付金按分イメージとなります。

 ↓

4.  市町村の納付金の考え方〜医療費水準の差異を考慮しない場合

・市町村間の医療費水準の格差を反映しない場合は、被保険者割の金額は同じで、所得水準が高いX市は納付金は多くなり、所得水準の低いY市は少なくなります。

・大阪府は、「大阪府内市町村の医療費格差は年齢調整をすれば1.2程度なので、医療費の格差はない」との考えを持っています。

5.  市町村の納付金の考え方〜医療費水準の差異を考慮する場合

・全国的にはこの考え方を採用するものと思われます。

・医療費格差は医療供給体制に大きく左右されます。どの都道府県も政令市、中核市、県庁所在地に国公立病院、医学部系病院等が集中しており、その近隣自治体と山間部、町村などとの差異が大きくあります。

★「標準保険料率」の考え方・・・別掲資料C

この資料は国の資料です。この資料によると

@   まず国が全国統一ルールで都道府県ごとの標準保険料率を決定

A   それをうけて大阪府内で統一保険料率(標準保険料率?)を決定

B   市町村が保険料率を決定

という3段階となります。

★大阪では何をどの順位で決定していくのか・・別掲資料D

資料Dはワーキングでの議論の優先順位です。

本日の大阪府からの説明では、「入の部分である保険料の統一の是非をとにかく最優先で決定したい、それも今年度中に」という話でした。「その上で統一するのであれば保険料の条例減免なども統一して考えなければならない」とのこと。

しかし、まだ具体的に国からのガイドラインも示されていないまま、つまり、保険料の試算もできていないもとで、「統一保険料の是非」を一番先に決定するというのはどう考えても無謀です。

★ワーキングでの意見・・・別掲資料EF

 資料EFの意見はあくまでもワーキングに出ている一部自治体の意見でしかありません。大阪社保協では大阪での議論を毎回明らかにしながら、12月もしくは1月に国保都道府県化学習会を企画します。