大阪社保協FAX通信   1095号 2015.2.26

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212日、国保基盤強化協議会で都道府県単位化

了承〜3月初旬にも「持続可能な医療制度を構築するための国民健康保険法等の一部改正案(仮称)」として上程

国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議が212日開かれ、地方三団体は以下の厚生労働省が示した「議論の取りまとめ」を了承しました。これにより、3月上旬にも「持続可能な医療制度を構築するための国民健康保険法等の一部改正案(仮称)」に国保改革関連が盛り込まれ、国会に上程される公算となりました。以下、「とりまとめ」全文を掲載します。(下線は寺内が引きました)

 

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国民健康保険の見直しについて(議論のとりまとめ)

平成27 2 12

国民健康保険制度の基盤強化に関する

国と地方の協議(国保基盤強化協議会) 

 

国民皆保険を支える重要な基盤である国民健康保険制度の安定的な運営が可能となるよう、厚生労働省は、以下の方針に基づき、必要な予算の確保、本年通常国会への所要の法案の提出等の対応を行う。

 

1.公費拡充等による財政基盤の強化

 

○ 国保に対し、平成26 年度に実施した低所得者向けの保険料軽減措置の拡充(約500 億円)に加え、毎年約3,400 億円の財政支援の拡充等を実施することにより財政基盤を更に強化する。これに伴い、被保険者の保険料負担の軽減やその伸びの抑制が可能となる。

 

○ 具体的な公費拡充策としては、

平成27 年度から、低所得者対策の強化として、保険者支援制度の拡充(約1,700 億円)を実施する。

・これに加えて、更なる国費の投入を平成27 年度から行い、平成29 年度以降は、毎年約1,700 億円を投入し、以下のような施策を実施する。

@-1 国の国保財政に対する責任を高める観点からの財政調整機能の強化

※ 高額医療費共同事業の国庫負担については、その一部を国の財政調整交付金から振り替える予算上の措置を行っているが、本事業への直接の財源手当を増加することにより、国の財政調整交付金を実質的に増額する

@-2 国民皆保険の基礎としての役割を果たしている国保において、自治体の責めによらない要因により医療費が高くなっていること等への財政支援の強化

※ 例えば、精神疾患に係る医療費が高いことへの財政支援、子どもの被保険者が多い自治体への財政支援非自発的失業者に係る保険料軽減額への財政支援等(@:700 億円〜800 億円規模)

A 医療費の適正化に向けた取組み等、保険者としての努力を行う自治体に対し、適正かつ客観的な指標(例えば、後発医薬品使用割合、前期高齢者一人当たり医療費、保険料収納率等を検討)に基づく財政支援を創設「保険者努力支援制度」の創設。700 億円〜800 億円規模

B 予期しない給付増や保険料収納不足といった財政リスクの分散・軽減のため、モラルハザードを防ぐための一定のルールを設定した上で、都道府県及び市町村に対し貸付・交付を行う財政安定化基金を都道府県に創設2,000 億円規模)

※ 財政安定化基金の創設を全額国費で行う。

※ 財政安定化基金のうち交付分への補填措置については都道府県が適正規模を判断して決定し、国・都道府県・市町村(保険料。按分の在り方については引き続き検討)で1/3ずつ補填する

※ 基金創設の完了後に生ずる国費の使途は、国保への他の財政支援策に充てることを基本とする。

C 著しく高額な医療費に対する国の責任を強化する観点からの超高額医療費共同事業への財政支援の拡充(数十億円規模)

 

○ あわせて、医療費の適正化に向けた取組や保険料の収納対策の推進、被保険者資格の適用の適正化、保険料の賦課限度額の引上げ等事業運営の改善等を一層推進し、財政基盤の強化を図る。

 

2.運営の在り方の見直し(保険者機能の強化)

 

○ 平成30 年度から、都道府県が、当該都道府県内の市町村とともに国保の運営を担うこととする。その上で、都道府県が国保の財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等の国保運営について中心的な役割を担うこととし、制度の安定化を図る。

都道府県は、都道府県内の統一的な国保の運営方針を定め、市町村が担う事務の効率化や標準化、共同処理・広域化の取組、医療費の適正化に向けた取組、保険料の納付状況の改善のための取組等を推進する。

国保の運営に関する重要事項を審議する場として、都道府県に、被保険者代表、保険医又は保険薬剤師代表、公益代表、被用者保険代表が参加する国保運営協議会を設置する。

 

○ 市町村は、地域住民との身近な関係の中、被保険者の実情を把握した上で、保険料の賦課・徴収、個々の事情に応じた資格管理・保険給付の決定、保健事業(レセプト・健診情報を活用したデータ分析に基づくデータヘルス事業等)、地域包括ケアシステム構築のための医療介護連携等、地域におけるきめ細かい事業を行う。

 

○ 都道府県は、国保の財政運営の責任主体として、市町村における保険料収納へのインセンティブを確保する等の観点から、都道府県内の国保の医療給付費等の見込みを立て、市町村ごとの分賦金(仮称)の額を決定する。

また、将来的な保険料負担の平準化を進めるため、都道府県は、標準的な保険料算定方式や市町村規模別の収納率目標等、市町村が保険料率を定める際に参考となる事項についての標準を設定するとともに、当該標準等に基づいて市町村ごとの標準保険料率を示すこととする (標準的な住民負担の見える化)

加えて、全国統一ルールで算出した場合の、都道府県単位での標準的な保険料率を示すこととする。

市町村は、都道府県の示す標準保険料率等を参考に、それぞれの保険料算定方式や予定収納率に基づき、保険料率を定め、保険料を被保険者に賦課し、徴収するとともに、都道府県に分賦金(仮称)を納める

都道府県は、保険給付に要した費用を市町村に対して確実に支払うとともに、市町村が行った保険給付の点検を行うなど、適正な給付を推進する。また、都道府県内の複数の市町村に関わるような医療機関による大規模な不正請求事案において、不正利得の回収にイニシアティブを発揮する等、市町村の事務負担の軽減を図る。

※ 市町村の事務負担の軽減を図るため、医療機関に支払いを行う審査支払機関に対し、都道府県が市町村を経由せず、直接支払いを行う仕組みを検討する。

 

○ 都道府県は、市町村ごとの分賦金の額を決定するに当たり、市町村の医療費適正化機能が積極的に発揮されるよう市町村ごとの医療費水準(年齢構成の差異を調整し、複数年の平均値を用いたもの)を反映するとともに、負担能力に応じた負担とする観点から、市町村ごとの所得水準を反映する。

なお、現在、全国レベルで市町村間の所得水準を調整している国の普通調整交付金については、都道府県間の所得水準を調整する役割を担うよう適切に見直す

また、市町村の特別の事情に応じて交付される財政調整交付金のうち、今後も市町村の財政を直接的に支援すべきものについては、改革後も同様の役割を果たすよう、取り扱う。

保険料率については、市町村ごとに設定することを基本としつつ、地域の実情に応じて、二次医療圏ごと、都道府県ごとに保険料率を一本化することも可能な仕組みとする。

なお、今回の改革により被保険者の保険料の保険料水準が急激に変化することのないよう、必要な配慮を行う。

 

3.改革により期待される効果

 

○ 今回の改革において、公費拡充等による財政基盤の強化を行うことにより、被保険者の保険料負担の軽減やその伸びの抑制が図られるとともに、上述の運営の在り方の見直しを行うことにより、以下のような効果が期待される。

 

@ 国保の財政運営責任が市町村から都道府県に移行することにより、人工透析等の高額医療費の発生などの多様なリスクが都道府県全体で分散され、急激な保険料上昇が起きにくくなる。

また、地域医療構想を含む医療計画の策定者である都道府県が国保の財政運営にも責任を有する仕組みとすることにより、都道府県が住民負担の面から地域医療の提供体制の姿を考えていくこととなり、これまで以上に良質な医療の効率的な提供に資することとなる。

さらに、被保険者が同一都道府県内に転居した場合、高額療養費の多数回該当に係る該当回数を引継ぐこととするなど、被保険者の負担の軽減を図る。

A 都道府県が、財政安定化基金も活用しつつ、給付に必要な費用を、全額、市町村に交付することにより、予期しない医療費の増加による財源不足・決算補填等目的の一般会計繰入の必要性が解消することにつながり、保険給付費の確実な支払いが確保される。

B 厚生労働省が社会保障・税番号制度の導入も踏まえつつ主導的に構築する標準システムの活用や、都道府県が都道府県内の統一的な国保の運営方針を定めること等により、市町村の事務遂行の効率化・コスト削減、標準化が図られるとともに、それにより事務の共同処理や広域化が図られやすくなる。

 

こうした改革により、小規模な保険者の多い従来の国保について、その運営の安定化を図り、全国の自治体において、今後も国保のサービスを確保し、国民皆保険を堅持する。

 

4.今後、更に検討を進めるべき事項

 

○ 厚生労働省は、上記1.〜3.を踏まえた新たな制度の円滑な実施・運営に向け、制度や運用の詳細について、引き続き地方と十分協議しながら検討し、順次、具体化を図ることとする。

 

○ また、高齢化の進展等に伴い今後も医療費の伸びが見込まれる中、国保制度を所管する厚生労働省は、持続可能な国保制度の堅持に最終的な責任を有している。国民皆保険を支える国保の安定化を図ることはきわめて重要な課題であり、その在り方については、不断の検証を行うことが重要である。そして、その際には、地方からは子どもに係る均等割保険料の軽減措置の導入や地方単独事業に係る国庫負担調整措置の見直しといった提案も行われていることも踏まえ、そうした地方からの提案についても、現行制度の趣旨や国保財政に与える影響等を考慮しながら、引き続き議論していくこととする。

 

○ 今回の改革後においても、医療費の伸びの要因や適正化に向けた取組の状況、都道府県と市町村との新たな役割分担の下での運営の状況を検証しつつ、更なる取組を一層推進するとともに、医療保険制度間の公平に留意しつつ、国保制度の安定的な運営が持続するよう、都道府県と市町村との役割分担の在り方も含め、国保制度全般について必要な検討を進め、当該検討結果に基づき、所要の措置を講じることとする。

 

○ その際、国保の在り方については地方団体の意見を十分に伺いながら検討を進める必要があることから、今後も、厚生労働省と地方との間で、国保基盤強化協議会等において真摯に議論を行うこととする。

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★厚生労働省は3400億円投入で保険料11万円引き下げられるというが 本当か?

「とりまとめ」では以下のように財政投入をすると書かれています。

 

@   27年度から消費税増収分を活用して約1700億円(負担割合は国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を投入。低所得者を多く抱える保険者に重点的に配分。被保険者一人当たり年0.5万円の財政効果があるとする。

A   後期高齢者支援金総報酬制導入により浮く国庫負担2400億円のうち1700億円を29年度から投入。

 

@    Aは3400億円となり、現在の全国での一般会計法定外繰り入れとほぼ同額となり、1人当たり1万円の財政効果となる、つまり、1万円保険料が引き下がるとしています。しかし、これは市町村が現行の一般会計法定外繰り入れをそのまま続けるという前提が必要で、やめてしまえば、ひき下がることはありません。

 

★Aの1700億円は無条件で交付するわけではない

 「とりまとめ」をよく読むと、@の1700億円は低所得者対策として投入されますが、Aの1700億円はそうではないということがわかります。ではどのようにするのでしょうか。

 

B   27年度にまず200億円の国費を投入して都道府県に設置する財政安定化基金の造成を開始する。同基金は29年度までに2000億円まで積み増しし、30年度から活用できるようにする。この基金は都道府県や市町村に交付または貸付をする。都道府県が市町村に支払う保険給付を分賦金で賄えない場合は都道府県が、収納できた保険料では都道府県に収める分賦金に足りない場合は市町村が同基金を活用できる。造成は全額国費で賄うが、交付により目減りした場合は地方にも負担を求め国、都道府県、市町村で1/3ずつ負担する。

 

C   調整交付金の増額による財政調整機能の強化

D   自治体の責めによらない要因による医療費増・負担への対応

 

新たに創設される財政安定化基金は、立ち上げについては全額国費で2000億円が積み上げられますが、その後については国・都道府県・市町村負担が111となります。また、交付と貸付としていますが、どういう場合に交付になるのかは不明、貸付であれば、償還が必要となりますので保険料引上げの要因となります。

30年度からはC+Dに700800億円投入。具体的にはDは、精神疾患の医療費、子どもの被保険者数、非自発的失業の保険料軽減などに着目し増額される特別調整交付金での配慮の検討としています。

 

E   保険者努力支援制度の創設

さらに30年度からEに700800億円投入。具体的には、医療費適正化等に努力する保険者への支援として、後発医薬品の使用割合や全高齢者の一人当たり医療費、保険料収納率など客観的な指標に基づき財政支援。さらに特定健診・保健指導の実施率に基づく後期高齢者支援金の加算・減算に代わるインセンティブとしての活用も想定されており、この投入はまさに「医療費削減」「収納率向上」のためのアメであり、被保険者の保険料引き下げに寄与するとはとても考えられません。

 

★都道府県と市町村の役割分担・・・市町村業務はいまと全く変わらず

 

都道府県と市町村の役割分担は以下となります。なお、大阪の場合は大阪府単位もしくは二次医療圏ごとのでの統一保険料設定の動きに注意する必要があります。

 

≪都道府県≫

□「国保運営方針」を策定し、市町村実務の効率化標準化、広域化や医療費適正化にむけた取り組みを推進

□医療給付費見込み、所得を加味した分賦金を決定

□市町村が決定した保険給付の支払い、保険給付の点検

□保険料の標準化を進める仕組みとして、標準的な保険料算定方式や市町村規模別の収納目標など市町村が保険料率を決定するときに参考となる標準を設定し、それに基づき市町村ごとの標準保険料率、全国統一ルールで算出される都道府県単位の標準的な保険料率しめす。

□保険料率は市町村で設定する枠組みを基本とするが、地域の実情に応じて二次医療圏単位や都道府県単位での保険料率を統一することも可能とする

□新たに国保特別会計を設置

□国保運営の重要事項を審議するために国保運営協議会を設置

 

≪市町村≫

□標準保険料率などを参考にそれぞれの実情に応じて保険料算定方式などを選択して保険料率を決定し、保険料の賦課・徴収を行う

□資格管理や保険給付の決定、保健事業、地域包括ケアシステム構築のための医療介護連携など地域のきめ細かな事業を行う

□資格管理や保険給付に関しては窓口業務にとどまらず、証明書の交付や現物給付の支給決定といった処分性を有する行為も引き続き市町村が責任主体となる方向

□国保特別会計や積立金基金は存続

 

27年度からの@1700億円は大阪の市町村にはどう配分されるのか?

114日付で厚生労働省から「平成27年度国民健康保険への保険者等の予算編成にあたっての留意事項について」という通知が出ています。ネット上では確認できないので、219日付で大阪府に開示請求をしました。2週間で開示されますので、@の1700億円がどう国保特別会計予算に反映するのかなどについても大阪府から説明を受けますのでお知らせしたいと思います。

 

大阪社保協2015年度総会に参加を!!

★日  時      201537日(土)午後1時開場/2時開会/530分閉会

  ★場        大阪府保険医協会M&Dホール5階 

  ★資料代      無料  なお、当日資料配布希望の団体は当日12時までに120セット会場にお持ちいただき袋詰め作業にもご協力ください。昼食も用意いたします。

  ★当日の総会での発言については「発言通告制」になります。全体討論は1人5分で15人程度を予定しています。発言の準備をお願いいたします。